No.23 登場人物① 高井息吹 編

いぶちゃんと初めて出会ったのはライブハウスであったように記憶している。

当時リリースされていた「Yoru Wo Koeru」「世界の秘密」を聴いて
なにやら凄い子がいる、と思い、知っていた。
バンドaireziasでイベントライブを敢行するにあたって
特に面識もないくせに、ほぼダメ元で出演オファーをしたのではなかったか。

前のことなので定かでないがまあ大筋そんなところだったように思う。

今でも何処の馬の骨ともわからない集団であるところのaireziasは
当時もっともっと何の動物の端っこだかわからない存在だっただろう。

にも関わらず出演を快諾してくれた。
そうして我々は出会うことができたのだったと思う。

過去のこととはいえその日のいぶちゃんの弾き語りが素晴らしかったことはよく覚えている。
音源を聞いて想像していた以上に「ピアノと私」の世界を持っている。
ピアノが本当に好きで、まるで指や内臓のように操るのだな、と思った。

それからお互いに時折、ライブ出演をオファーし合うようになり
最近で言えば一緒にキャンプに行くような仲になった。

いぶちゃんとaireziasのライブセッションで記録の残っているものがある。

「きらきら星をセッションしよう」とだけ決めて、あとはアドリブでなんとかしようと思っていたのだけれど
お客さんに小物楽器を配り、音を鳴らし始めると…
あとは聴いての通り。ミラクルなセッションになったのである。

リハーサルでも試しに一度セッションして見たものの
全然テンションが上がらず、ポンコツなセッションとなった。
やや不安なムードが漂ったものの、いぶちゃんが
「こういうのはテンションですから」とケロッと言ってのけたのを見て
なにがしかの安心感を得た。そして結果がこうだったのである。

今作"No.23”では、「07.科学の木」でコーラスをお願いした。
コーラスといっても楽器の向こうに埋もれているようなものを想定していたので
ぱっと聴いてさっとわかるようなものではないかもしれない。

おそらく科学や論理のつじつまのあった世界に、魔法少女を登場させたかった。
彼女のことを一度でも見たことがある人ならわかるだろう。ああ、多分あれは魔女だろう、と。
ピアノを操り歌う姿はほとんど現代の魔法のようだし
お酒を飲んで道を歩くとすぐどこかに行ってしまいそうな危うさもある。
目を離した隙に両手で羽ばたいていたり、実際にどこかへ行ってしまったりもする。

大変贅沢な使い方をさせていただいてしまった。
でも、魔法少女の気配は間違いなく必要だったと感じている。

楽曲後半のコーラスでは「音程もフレーズも気にしなくて良いので、とにかく思いついたように歌ってくれ」とお願いした。
こんなのは無茶振りに近い。でも、彼女は、音楽と対峙した時に、そういうことができる人間である。
とにかくアドリブでなんども歌ってもらい、声の震えや、不可思議な音程、素敵なエラーとでもいうべきか
そういったテイクを福永の方で選別させていただいた。

「07.科学の木」のwith〜に、「高井息吹」の名は入っていない。
これは彼女らしい要請があってのことだ。

曲名に「高井息吹」の名が入っていると、ファンの方が高井息吹のいつもの歌声が聴けるものと思って再生してしまう。
その際に今回のような参加の仕方だと、お目当の歌声に出会えないのが申し訳ない、というものだ。

その上で、楽曲の趣旨や今回の歌声が示唆すべき点は大いに理解を示してくれて
だから安直に「音量を大きくしろ」「存在感を出してくれ」という要請はせずにいてくれた。
あくまで楽曲と福永のイメージを第一に捉えてくれたというわけだ。

いぶちゃんらしい気遣いだと感じた。

____________________

2021.06.23リリース
福永健人1st EP「No.23」
「07.科学の木」にコーラスで参加してくれた、高井息吹氏の紹介でした。

本物の魔法のようなコーラスをありがとう！

「No.23」特設ページはこちら

No.23 特設ページ

【関連記事】
No.23 登場人物② moegi 編
No.23 登場人物③ 渡辺啓太郎 編
No.23 登場人物④ yuma yamaguchiさん 編
No.23 登場人物⑤ konore / 今給黎明子 / 西脇一弘さん / 鈴木慶一さん 編
No.23 登場人物⑥ APOLLO SOUNDS（阿部さん）/垂水佳菜さん/畠山地平さん/吉岡渉さん 編

「No.23」セルフライナーノーツ（全曲解説、制作エピソードなど）

---

以下は、路上ライブで言うところの「ギターケース」のつもり。
気に入った方は「購入する」ボタンで投げ銭をよろしくお願いいたします。
頂いた¥100は、音楽活動・音楽探求に大切に使わせていただきます。