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憧れの一足、John Moore

 こんにちわ。今回は私が10代の頃からずっと憧れ続けていた靴、"The Old Curiosity Shop"による"John Moore""HOG TOE SHOES"をついに手に入れる事が出来たのでそれを紹介したいと思います。
よく知らない方からすると「何言ってんだこいつ?」状態だと思うので一つずつ説明させて下さい!笑


HOG TOE SHOES

 まずはあれこれ細かい事は置いておいて、手に入れた靴を見てもらいたいと思います。

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かなりヘンテコな形ですね。つま先が豚鼻のような形になっているのでHOG TOE SHOES(ホグトゥシューズ)と呼ばれています。真っ直ぐ垂直に断ち切られたようなデザインが他には無いような一足だと思います。

羽根部分が凸凹していたり、タン部分はライニングの革が一回り大きく飛び出していて面白いアクセントになっています。

どちらかというとブーツタイプの方が有名かもしれません。

John Moore

 この独特な靴は1980年代に活躍した英国のシューズデザイナー、John Moore(ジョン・ムーア)氏がデザインした意外にも歴史があるものです。

ジョン・ムーアといえばChristopher Nemeth(クリストファー・ネメス)Judy Blame(ジュディ・ブレイム)らと共に"The House of Beauty and Culture" {ハウスオブビューティーアンドカルチャー (以下HOBAC) }という集団(ショップ)で活動していた事が有名で、私は御三家の内の一人といったイメージを持っています。

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The House of Beauty and Culture / Kasia Maciejowska著

彼がデザインした靴には他にも個性的なものが沢山あり、特にこのトゥストラップブーツ(コンバットブーツ)は有名なので、見た事があるという方は多いんじゃないでしょうか。

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ネット掲載画像より引用

残念ながらジョンは1989年に若くして亡くなってしまっていますが、つい最近もComme des Garcons Homme PlusとGeorge Coxとのトリプルコラボによってコンバットブーツの短靴ver.が発売されるなど、30年以上経っても色褪せない魅力に溢れるデザインを遺した素晴らしいデザイナーでした。
 
 またVivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)のコンサルタントを勤めていた事もあるそうで、ヴィヴィアンのThree Tongue Trainer(スリータントレーナー、通称:ブレイカーシューズ)がHOG TOE BOOTSにどことなく似ている気がするのはその為かなと思いました。

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ブレイカーシューズのデザインはPatric Cox(パトリック・コックス)氏との事ですが、ブレイカーシューズが登場したのは1983年秋冬の "Witches"コレクションなので、時期的にジョンも何か絡んでいてもおかしくなさそうだなと私は勝手に思っています。

 他にもHOBACは同年代に活躍した伝説的なスタイリスト、Ray Petri (レイ・ペトリ)氏が率いる"BUFFALO"(バッファロー)という集団とも関わりが深かった事も有名だと思います。

正直私もそこまで詳しいわけではないのですが、その時代の事を書き始めるとかなり長くなってしまいそうなので、それはまたの機会にしようと思います。気になる方は是非ご自身で調べてみて下さい。

The Old Curiosity Shop

 ジョン亡き後、彼の靴を後世に残すべく、ジョンの弟子だったIan Reid(イアン・リード)氏と、日本人の木村大太氏が90年代初頭にロンドンで作った店が"The Old Curiosity Shop" {ジオールドキュリオシティショップ (以下TOCS) }です。

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The Old Curiosity Shop HPより引用

この店はイギリスの小説家、Charles John Huffam Dickens(チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ)の小説 "The Old Curiosity Shop" (1840-1841) の中に登場する1567年に建てられた骨董屋の建物をそのまま使っている事でも有名でした。ショップの名前はこの小説が元ネタとなっています。

店ではジョンの靴のレプリカだけではなく、弟子イアンの靴のレプリカや、ダイタ氏のオリジナルの靴なども扱っており、HOBACファンからすると憧れの名店です。

ちなみにTOCSの二人の下で働いていた山本真太郎氏は、今は日本で"KIDS LOVE GAITE"(キッズラヴゲイト)というシューズブランドをされています。

いつかロンドンに赴いた時にはたくさん注文しようと夢見ていましたが、コロナ禍の煽りを受け、残念ながら昨年その店を閉めることになってしまったようです。私自身英国旅行をコロナのせいで延期した経緯があったので本当に残念でした。

しかしブランドが無くなる訳ではなく、"Quilp"(クイルプ)という森下正雄氏がされているブランドを介して、東京や大阪で受注会を行っている事を知りました。クイルプの靴はTOCSの協力の元、Tricker's(トリッカーズ)によって製作されているのでその繋がりだと思われます。

ブランドの名前は小説 "The Old Curiosity Shop" に登場する、Quilp Daniel(クウィルプ・ダニエル)という悪人の名前が元ネタのようなので、何か私の知らないところでHOBACやTOCSとの深い繋がりがあるのかもしれません。

私は休日前夜に偶然インスタグラムでその受注会について知り、会期中で行ける日がその日だけだったので迷う事なく伺う事にしました。

受注会 "Curious Shoes Shop"

 受注会が開催されていた場所は裏原宿にあるQuilpさんの東京ギャラリー。普段からこの辺りは歩き慣れていましたが、ただ歩いているだけだと気づかずに通り過ぎてしまうような、ビルの脇にある僅かな隙間が入口のようです。この時点でどこか異世界というか、非日常的な空間に迷い込んだ感じがしてドキドキと胸が高鳴りました。

階段を上がってギャラリーの中に入ると目の前には憧れ続けていた靴の数々がズラッと並んでいました。所謂One-Off品(一点物)や履き込まれて味が出た私物なども展示されており、やっとちゃんとした受注会に来れた事が嬉しかったです。

以前にも別のショップが企画するTOCSの受注会と銘打ったイベントに足を運んだことはあるのですが、サンプルが数点あるのみの小規模なものでイメージがつかず、結局注文出来なかったことがあります。

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白、ヘリンボーン生地はQuilp 別注品。

興奮を抑えつつお話を伺うと、今回は革の素材と色、ハトメの色を選ぶパターンオーダーを受け付けているとの事。工場生産では再現しづらかった微妙なニュアンスを出す為にハンドメイド生産にこだわる一方、新しい試みとして日本の職人や日本の皮革を利用する事で料金も安く抑えられるという事でした。

私はかなり優柔不断なので悩みに悩みに悩みに悩んで、最初の一足は堅実に黒革のHOGにする事に決めました。最後までやや起毛感とシボ感のある山羊革と悩みましたが、普段の服装や、手持ちの靴、そして二足目、三足目の事を考えて、馬革の炭黒を選択しました。逆にハトメは悩む事なくアンティークゴールド一択。

サイズ感が一番心配だったのですが、その場にUK-Nのサンプルがあったので履かせて頂き、歩行時にもう少しつま先に余裕が欲しいな、という事でUK-N+1を注文しました。つま先が断ち切れてはいますが、なんだかんだでいつも履く靴と同じくらいのサイズ感でよかったみたいです。

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革の種類は牛、馬、山羊の三種、全部で約20色ほどでした。

 また会場ではQuilpさんの新作の服や、TOCS x Quilp by Tricker'sの靴などもあってそちらもかなり気になったのですが、他にもお客さんがいらっしゃったのと、優柔不断で少し長居してしまっていたので、あまりご迷惑がかからないようにお土産としてTOCSとQuilpさんの缶バッヂを購入して帰宅しました。

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終わりに

 ここまで大雑把にですがジョン・ムーア氏に関する周辺事情を書いてきました。記事の中では次々と色々な人やブランド名がたくさん登場するので読みづらいところがあったかもしれません。
ただその事はジョンが亡くなってからも、その魂とでもいうべき何かかが人々を魅了し、影響を与え、脈々と繋がり続けているというのを確認させてくれるのではないしょうか。

大人の事情で色々と複雑な関係もある事を知っているとどうしても心境は難しくなってしまいがちですが、この靴を前にして思うのはやっぱりHOBACはかっこいいなという純粋な気持ちでした。

次はBump Toe Shoesのレプリカを手に入れられたらと思います!

※記載事項に誤りがある際にはコメントでお教えいただけると幸いです。








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