特技:大食いを拾われた話【フランスワーホリ】
突然ですが、あなたの特技はなんですか?
もし「特技は?」と聞かれてすぐに答えられる人はどのぐらいいるのでしょうか?
今回は、そんな特技についてのお話です。
Bonjour!
ワーキングホリデーで今年の6月からフランスに来ている30歳です。
今は南仏プロヴァンスの町「サン=レミ=ド=プロヴァンス」(サンレミ)にある日本食レストランで働いています。
この町に来て1ヶ月が経ちました。
お店の従業員を除き、ここでは日本人に会うことは皆無に等しく、すれ違うのはいつもフランス人もしくは観光で訪れる欧米の人たちです。
日本人どころか、アジア人すらもマイノリティの環境のため、日本人と出会うだけで嬉しくなってしまう今日この頃です。
フランスのように物価の高い国での生活では、食事をどうするか、という問題が常にあります。
当然外食は高いため、頻繁には行けません。
日本のようにふらっと牛丼屋には行けないし、コンビニもないため、基本的には自炊をすることになります。
僕は今、日本食レストランで働いており、ここではまかないを提供されます。
基本的に週5日の勤務日は、このお店で昼ご飯も夜ご飯も食べさせてもらっています。
食事の問題をほとんど考えなくていい生活を送れているのは、とてもラッキーでした。
しかしそれゆえ、未だにこの町の他のレストランには一度も訪れたことがありません。
せっかく町の住民になったのに、まだこの町のことをよくわからないままです。
このレストランに応募をしたのは、今から3ヶ月前、リヨンの語学学校に通っていた頃です。
南仏での生活に憧れて、日本人向けの掲示板で南仏拠点の求人を片っ端から応募していました。
その中で、偶然縁を持て、短期という条件ながら採用してもらいました。
このレストランの応募に必要だったのは、日本語とフランス語の履歴書でした。
僕は日本を出発する前に、すでに両方の履歴書を作成していたため、すぐに送ることができました。
それもあってか、早いプロセスで採用に至ったため、安心感があったのを覚えています。
ところで、日本の履歴書は海外で通常使われる履歴書(レジュメ、CV)とは大きく異なる点があります。
それは、フォーマット。
海外で通常使われる履歴書は、いわゆるフリーフォーマットです。
書く内容から見栄えまで、先方の必要事項さえ含めていればあとは自分で自由に決めることが可能です。
そのため、たとえばキャリアの長いベテランは当然実績の欄を充実させますが、対して経験の少ない学生であれば資格の欄を充実させることで、自分の強みアピールすることができます。
また、色やフォントも自由に設定できるため、ある種「目立たせ合戦」のようにもなります。
デザイナーであれば自分でゼロから綺麗なフォーマットを作成するため、それ自体がポートフォリオのひとつになることもあります。
僕自身、一応デザイナーでもあるので、ネットの情報を参考にしつつ、自分なりにゼロから作成してみました。
対して、日本の履歴書は、テンプレートがすでに決められています。
職歴欄や資格欄など、大きさは柔軟に変えられるものの、基本的には白黒のモノトーンで、すでにある表に情報を記入していく形式になります。
僕も日本語版は特にこだわることなく、フォーマットをネット上でダウンロードして、Wordで作成しました。
これは、海外では、日本の文化に適応した日本人であることの一つのアピールでもあると思っています。
実際に働き始めてしばらく経った頃、オーナーから突然ぼそっと言われます。
どうやら日本語の履歴書に書いていた、「特技」の欄の内容を拾われました。
まさかそんなところを掘り下げられるとは思ってなかったので、すごくびっくりしました。
日本語の履歴書には、学歴、職歴、自己PR、志望動機といった欄がありますが、最後に小さく「趣味/特技」という欄があります。
正直、ここは欄自体を消してもいいような重要ではない箇所だと思ってます。
嘘は書いていないものの、特に深く考えていませんでした。
欄があったから埋めた。その程度のことです。
書いていたこと自体すっかり忘れていたため、突然のことにとても驚きました。
そもそも特技って結構難しいものです。「特技って何?」という疑問すら感じます。
特技は人との比較で相対的に決まるものなため、自己分析しても特技は判明せず、「自分の好きなこと」しかわかりません。
そもそも得意なことは仕事になりやすいから、すでに仕事として成立している場合も多いかと思います。
人と話すのが得意だから営業をしている、など。
仕事だったら特技とは言わないし、しかも特技の欄は趣味と同じ箇所にあるから、プライベートのことを書きたいものです。
それが仕事として成立しているなら、もはや特技って必要ないのでは?そんな意見も理解できます。
しかし、せっかく「趣味/特技」って欄がある以上、何か書いておいたほうがいいなとも思います。
そこを空欄にしておくのはなんかつまらない。
戦略どうこうより、シンプルに自分という人間に興味を持ってもらうために、趣味・特技欄は埋める必要があるのかもしれません。
僕自身、かなり悩んだ末に、「大食い」と書いた経緯があります。
最初は全く特技が思いつかず、最後は頭を捻ってやっと「大食い」と書けました。
なぜか、自分に自信がない性格からでしょうか?
僕は人から「大食い」と言われることがしばしばあります。
フードファイターだの、フードモンスターだの、ビッグイーターだの、いろんな言い方がありますが。
とはいえ、あまり自分では認識してなくて、本当に?って疑問は今でもあります。
たとえば、アメリカで活躍する小林尊のような競技者には遥かに及びません。
参考になる記録も乏しく、「ラーメン二郎によく行ってた」くらいのエピソードしかありません。
たしかに高校生の頃は山盛りのご飯をおかわりするくらいは食べてました。
しかし、今ではもうそんなにたくさん食べるということ自体していません。
強いて言うなら、日本で定食屋に行ったら必ずご飯を大盛りにしていたし、ラーメン屋でも大盛りや替え玉をするし、一般の人よりは食べる方なのかなぁって思うくらいです。
僕は意識してたくさん食べているわけではありません。
残さず食べたいという気持ちとか、その時の状況が影響していると思います。
ただ、ひとつ言えるのは、僕はストレスが溜まると食事量が極端に増える性格だということ。
精神的に不安定になると、食べることで気持ちを落ち着かせようとしがちです。
主食からお菓子からなんでも食べてしまいます。
それはひとつの大食いの証かもしれません。
フランスに来てからの生活は、不安なことだらけでした。
どうしよう。慣れない地での生活や困りごとに疲弊していました。
そんな頃、僕はバゲットやパスタをたくさん食べていました。
それも自分としては、少しでも心の穴を埋めたい意志から自然とやってしまう行為です。
食事量に大きな波がある僕ですが、幸運にも体型がまったく変化しません。
体は昔から痩せ型で、今まで体重を気にしながら生活したことがありません。
よく「痩せの大食い」なんて言われるし、「胃下垂なの?」みたいに聞かれることもあります。(胃下垂かどうかは知らない)
加えて、どれだけ食べても、翌日の朝にはすでに正常に戻っていることがほとんどです。
自慢になってしまうから、自分から言わないようにしていました。
けれど、大食いの話になると、必ずこの体型の話も関わってくるし、それゆえたくさん食べているという事実が際立っているのかもしれません。
僕が働いているレストランのオーナーは、経営者の顔を持ちつつも、本当の姿は現役のフランス料理のシェフです。
長いこと料理に関する仕事を続けてきたという側面を持っているからかはわからないけど、大食いって言うところに目をつけられて、かつそれを面白がってくれました。
自分としては棚からぼたもちのような出来事でした。
先日、休みの日に急遽連絡をもらい、たくさん食べる会を開いてもらいました。
他のお店でたまたま廃棄になりそうな食材があったため、僕に全部食べさせてくれました。
時間にお店に行くと、すでにオーナーがおり、そこからわんこそばのようにどんどん食べ物が出てきます。同時にお酒も注がれます。
出てきたのは日本食。お寿司にカツ丼にてんこ盛りでした。
どれも美味しく、どんどんと食べていきました。
食べても無くならない。無理はしないようにしていたものの、美味しくて箸が進みます。
お酒も飲んでいたのでだんだん酔いも回ってきます。
結局、3時間くらいでしょうか。なかなか限界に近いくらいまで食べました。
オーナーは大満足。とても喜んでいました。
僕自身もこんな贅沢に酔いしれるように、幸せな気分になっていました。
今振り返っても特別な体験をさせてもらいました。
その後も、郊外にある中華系のビュッフェに連れて行ってもらったり、お家でのご飯会に誘ってもらってステーキを山ほど食べさせてもらったり。
本当に頭が上がらないくらい楽しい体験をさせてもらいました。
おかげさまで毎回お腹いっぱいです。
オーナー曰く、大食いの人が食べるところを見ているのがとても好き、とのこと。
それゆえ、僕にいろいろと誘ってくれるみたいでした。
理由はすこし変ではあるものの、誘ってくれ、このような特別な体験をさせてくれるのは、本当にありがたい限りです。
「特技:大食い」だけでここまで広がるなんて。
最初はびっくりしたけど、実際書いて良かったって思います。
もしかしたら、時間が経てばバレていた事実かもしれないけれど。
僕はかつてフィリピンで就職したことがあるため、日本と海外の履歴書の違いはかねてより感じていた部分です。
正直、デザインの仕事をしているのもあって、自由にフォーマットを決められる海外の履歴書の方が書きやすいと思っています。
けれど、日本語の履歴書にたまたまあった「特技」という欄を、たまたま「大食い」と書いたことで面白がってもらえました。
本当に偶然だけど、日本語の履歴書のフォーマットに従って書いて良かったと思っています。
趣味とか特技とか。
履歴書は真面目に書かなければならないものではあるけど、相手はどの部分で自分に興味を持ってもらえるかわかりません。
そうなると、やはり何かしらは書いた方がいいよな、なんて思います。
今回は、そんなことに気づいたよって話でした。
ちなみにステーキは大好きだけど、噛みごたえがありすぎてあまりたくさんは食べれませんでした。新しい発見!
これからもこの田舎町での生活は続きます。
↓ワーホリのきっかけなどはこちらに書いてます。
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