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伝統と時代の間で。
大分県西部に位置する「日田市」。
かつては幕府の直轄地「天領」として栄え、今でもその名残を多く残している。
そんな日田の中心街から車で北へ向かうこと30分。谷を川に沿ってひたすら上がったところにひっそりとあるのが「小鹿田焼の里」だ。
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小鹿田焼の里は江戸の頃から300年の歴史を持つ焼き物の里で、今も尚一子相伝でその技術が受け継がれている。代表的な技術に、「飛び鉋」や「刷毛目」などがあり、土感のある素朴で庶民的な印象の器が多い。
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小鹿田焼の源流は隣山の小石原焼と言われており、天領であった日田の人々の生活を支える器を作るべく柳瀬家、黒木家、坂本家が集まって出来上がった里である。
小鹿田皿山の土でできた器は軽くて使い回しも良く安価であることが特徴。まさに日常使いに適した器なのである。
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里内ではこの川に沿って唐臼が設置されている。
土を砕くため、小鹿田の里には大きなししおどし式の唐臼がある。川の水が流れる力だけを使って土を砕く様子とその音は、小鹿田が自然と共にある様子をありのままに伝えてくれる美しい風景である。
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小鹿田焼は1920年代にはじまった民藝運動の最中、柳宗悦氏やバーナード・リーチ氏が訪れた経緯もあり、一気に世の中に知れ渡ることとなる。小鹿田焼の飾らない美しさが世の人々を魅了した。
小鹿田焼の器は「誰が作ったか」ではなく、その器が「小鹿田焼である」ことを大切にしている。そのため、小鹿田焼の器には作家独自の印がなく「小鹿田」と記されているのみである。
以前坂本工窯を訪れた際、坂本さんにお話しいただいたこと。
小鹿田の作家は、作家として名を売ることではなく『小鹿田』として伝統を守り継いで行かなければならない。小鹿田焼は重要無形文化財として県や国が守っている。しかし、それは同時に作家たちの自由を奪う制限にもなっている。
作家たちは今、伝統と時代の間で葛藤を抱えている。
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あとがき
今回のOita Night vol.2では、
取り皿として5寸皿を使っていただきます。
長湯プランの方は、自分だけの器を選んでぜひ日常でも使ってみてください。
器は柳瀬元寿窯、黒木史人窯、坂本浩二・拓磨窯から仕入れさせていただきました。
岡山でも坂本工さんや坂本創さん、黒木昌伸さんなどの器は『くらしのギャラリー』や『frank暮らしの道具店』など購入できる場所があります。お店に行く機会があればぜひ気にしてみてくださいね。
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