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Religion of Tomorrow要約:パート2−1
前回に引き続き、Religion of Tomorrowの要約です。パート1の内容は既に他の書籍等で馴染みがあったのですが、パート2は自分にとって新しい情報が多く、噛み砕いて要点を整理するのに予想以上に時間がかかりました。それに伴ってようやくの文章量も増えています。
読んでくれるかもしれない誰かに本の概要を伝えるためのプロセス以上に、ここまで熟読して文章をまとめるという体験そのものに価値があると感じています。これまでの変性意識状態で体験した事を思い出し、新しい枠組みによってそれらを解釈し直し、自分の経験からもう一度言葉を紡ぎ直すことで、自らの世界観が着実にアップデートされているように感じます。インテグラル理論が持つサイコアクティブな潜在能力をじわじわと味わっている感覚です。
ウィルバーの書籍を日本語で読んだことがないので、他の翻訳者さんがインテグラル理論の用語をどの日本語で表現しているのか知識がないため、一般的ではない訳になっているかもしれませんが、今の自分にしっくりする言葉ということで、先入観無しで翻訳する作業にも楽しさを感じています。
かなり濃い内容であり、専門用語も多いため、だいぶ分かりにくくなっているかもしれませんが、参考程度にお読みください。
Part Two: States and Structures of Consciousness
第二部: 意識の状態と構造
3. The Fundamental States of Consciousness
基本的な意識の状態
States and Structures
状態と構造
意識の発達には、「状態」と「構造」という二つの重要な側面があります。意識の状態が変化することで「見晴らし」が変わり、意識の構造が変化することで物事を捉える「世界観」が変わっていきます。
意識のさまざまな状態は、何万年も前からシャーマンや神秘家たちによって探究されてきました。彼らは瞑想の実践やトランス状態に没入するさまざまな技法を用い、意識の深遠な領域を体験してきたのです。
一方で、意識の構造は、それを通して世界を見る「レンズ」のようなものであり、どれだけ内省を重ねても自覚することができません。私たちは常にそのレンズを通して世界を見ているため、その存在に気づくことすら難しいのです。
もし、世界の宗教が成立した数千年前に、意識の構造についての理解があったならば、宗教の在り方は今私たちが知るものとは全く異なるものになっていたことでしょう
States of Consciousness
意識の状態
The Natural States of Consciousness
自然な意識状態
ある意識の「状態」が現れると同時に、その意識状態に対応した「領域」も立ち現れます。
この意識状態と領域は、主に以下の五段階に分類されます。
グロス(粗大):覚醒状態において、物理的領域を認識する。
サトル(微細):夢見状態において、ビジョンやエネルギーを認識する。
コーザル(原因):無形の、非常に微細な原型(アーキタイプ)を認識する。
ウィットネス(目撃者):いわゆる真の自己、純粋意識として、あらゆる現象を観察する。
ノンデュアル(非二元):純粋意識がすべてに溶け込み、すべてが在り、同時にすべてが無い状態。
このように、意識の発達は、各段階において認識する領域の変化を伴いながら進んでいきます。
Meditative States of Consciousness
瞑想的な意識状態
私たちの意識は、グロス(粗大)の状態から出発し、瞑想などの実践を通じて、サトル(微細)、コーザル(原因)、ウィットネス(目撃者)と順に意識状態の段階を経験していきます。それぞれの段階と一体化しながら次の段階へと超越し、前の段階を統合することで、意識は徐々に発達していきます。
そして最終的に、ノンデュアル(非二元)の段階に辿り着いたとき、意識はすべての段階を超越しながらも、同時にすべてを統合している状態になります。これにより、どの特定の状態とも一体化せず、しかし同時にすべてと一つであるという在り方へと至るのです。
私たちがある意識状態の段階と一体化しているとき、そこから世界をどのように見るかという「見晴らし」が生まれます。同様に、ある意識構造の段階と一体化しているとき、どのように世界を理解するかという「世界観」が形成されます。
つまり、私たちの普段の世界の捉え方は、「意識状態の重心」と「意識構造の重心」という二つの要素によって決定づけられるのです。
The Stages of Meditative States
瞑想的状態の段階
これまでの研究によると、文化や教義の違いによる表面的な違いはあるものの、さまざまな瞑想伝統において、前述の意識状態の5段階が共通して伝えられていることが明らかになっています。
瞑想などの実践は、ある程度「成長の道」を辿ってから始める人が多く、ほとんどの場合、グロス(粗大)と同一化している状態からスタートします。この段階では、思考や感情、感覚が渦巻いている状態ですが、あるがままの状態を見つめていくことで、少しずつ静けさや慈悲の心、内なる輝きを認識できるようになり、純粋意識、そして非二元の状態へと進んでいきます。
キリスト教における西洋の観想伝統でも、同様のプロセスが見られます。メタノイア(改心体験)を通して、グロス次元での浄化、サトル領域における啓示、コーザルの「不可知の雲」を認識しながらも、その意識に定着できない「魂の闇夜」(ウィットネス)、魂が非二元の神性に溶け込み、消滅するノンデュアルの境地、という段階が経験されることが知られています。
繰り返しになりますが、「目覚めの道」、そしてそれを解釈する「成長の道」において、以下の四つの方向性(ベクトル)が存在していることを強調しておきます。
ある瞬間における 「意識の状態」
通常の 「意識の状態の重心・段階」 または 「見晴らし」
ある瞬間に用いられる 「意識の構造」
通常の 「意識の構造の重心・段階」 または 「世界観」
Transcend and Include
超越と統合
意識構造の段階をチャクラの働きと照らし合わせてみると、大まかに以下のように対応しています。
第一チャクラ:生存・安定、本能的段階
第二チャクラ:感情・性、呪術的段階
第三チャクラ:意志・活力、呪術神話的段階
第四チャクラ:共感・愛、神話的段階
第五チャクラ:自己表現、論理的段階・多元的段階
第六チャクラ:洞察・直感、統合的段階・全体的段階(第二層)
第七チャクラ:自己超越、超統合的段階(第三層)
私たちは第一チャクラと同一化した状態から人生を始め、次の段階へと移行するにつれて、前のチャクラとの同一化を手放しながら、その働きを統合していきます。 たとえば、第二チャクラの働きが強くなると、第一チャクラとの同一化を手放し、第二チャクラと同一化しつつ、第一チャクラの働きを統合します。このように、意識構造の重心が移動することで、次の「世界観」へと移行しますが、以前の「意識構造」は保持され、統合されていくのです。
あるチャクラの働きが抑圧されると、「シャドウ」が形成されます。 特定の段階との同一化を手放せないと固着が生じ、依存へと発展します。逆に、ある段階が自己意識から分裂して適切に統合されない場合、解離が生じ、その働きに対して嫌悪を抱くことになります。
Subjects Becoming Objects
主体の客体化
キーガンは、発達とは「ある段階の主体が次の段階の客体になること」であると説明しています。例えば、第一チャクラと同一化している状態では、世界は第一チャクラの働きを通して捉えられるため、そのチャクラそのものを客観的に見ることはできません。 しかし、重心が第二チャクラへ移行すると、初めて第一チャクラを客体化し、客観的に認識できるようになります。そして、最終的にすべてを客体化できたとき、観測者の意識、すなわち純粋意識そのものが残るのです。
つまり、成長・発達のためには、今の自分が主体だと捉えているものを客体化していくことが鍵となります。 しかし、特定の段階のある側面を客体化できない場合、それが「シャドウ」となり、多くの場合、その働きは他者に投影されます。
この客体化のプロセスを内省だけで進めるのは難しいため、発達心理学が明らかにした各段階について学び、客体化可能な働きを理解した上で、マインドフル瞑想を用いて自らを観察し、超越し、手放し、主体を客体化していくことが重要となります。「成長の道」と「目覚めの道」を統合したこの瞑想実践を、「インテグラルマインドフルネス」と呼んでいます。
States and Vantage Points
意識状態とそこからの「見晴らし」
意識構造の発達と同様に、意識状態も超越と統合を通じて進化していきます。
私たちはグロスの意識状態と一体化した状態からスタートし、サトルの意識状態の体験を重ねることで、「自分の本質は魂である」という認識へと移行し、意識の重心がサトルへと移動します。
さらに、コーザルの意識状態の体験を重ねることで、サトルとの同一化を手放し、「原型(アーキタイプ)や時空、そしてそれを生み出している意識こそが自己である」という認識へと変化していきます。
その先へ進み、純粋意識の体験を深めていくと、コーザルとの同一化すら手放し、「本来の自己は目撃者であり、『今ここ』に気づいている意識そのものである。対象として認識できるものはすべて自己ではない」という認識へと移行します。
最終的に、純粋意識は非二元そのものへと溶け込み、すべての同一化を超越しつつ、これまで通過したすべてを包含するノンデュアルの状態に到達します。この目覚めた意識状態では、あるがままにグロスやサトルの体験を味わうこともできますが、何ものにも囚われることはありません。
「意識状態」とそこからの「見晴らし」が、「どのような現象を体験するか」を決定づけ、
「意識構造」とそれに基づく「世界観」が、「現象をどのように解釈するか」を決定づけます。
これらを横軸と縦軸に配置するとWilber-Combs Latticeと呼ばれる以下の図のように視覚化することができます。
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The Gross and Subtle States of Consciousness
グロスとサトルの意識状態
The Gross (or Physical) State
グロス(物理的)状態
グロスとは、主に肉体的・物理的な現象や、それに紐づいた意識状態を指します。
すべての現象は、「主観」「客観」「間主観」「間客観」という四つの側面を持っています。これを、縦軸に「個」と「集合」、横軸に「内面」と「外面」をとって図式化したものが、インテグラル理論における四象限です。この四象限がより広く展開していくにつれ、外面はより複雑化し、内面はより自覚的になっていきます。
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インテグラル理論では、「すべては物理現象である」と捉える物質主義や、「自分の主観以外は信頼できない」とする独我論など、特定の象限のみを絶対視する「象限絶対主義」には陥らず、常に四つの側面が同時に立ち現れていることを認識しようとします。
この観点から見ると、グロスとは、「右上象限」(客観)の最も根本的な物理法則、そしてより複雑な四象限の展開を支える「右側象限」(客観・間客観)の構造を指します。さらに、それらの物理的な現象を自己と認識する「内面の働き」もまた、グロスに関連づけられた意識状態であると言うことができます。
The Subtle State
サトル状態
サトルは、物理的次元を超えたさまざまな現象を包括しており、低次サトル、中次サトル、高次サトルの三つの段階に分けて考えることができます。それぞれ、プレパーソナル(個の確立前)、パーソナル(個の確立)、トランスパーソナル(個の超越)に対応しています。
低次サトルは、生命体が持つ生存や進化のための生命エネルギー、そして内分泌系や神経系を通して肉体的に感知できる感情エネルギーや性のエネルギーを含みます。物理的な次元を超えた生命の働きのうち、個の確立以前のもの全般を指します。
中次サトルは、いわゆる心の働きです。感情や衝動、宗教的なヴィジョン、さまざまな「存在」との交流、論理的思考、多角的視点の取得などが含まれます。呪術的から多元的まで、幅広い意識構造の働きがサトルと関連しています。確立された個が体験する現象のうち、物理的なものを超えたもの全般を指します。
高次サトルは、すべての現象に対して感じる深い愛や慈悲、大自然や宇宙との一体感(ワンネス)、至福の喜び、この上ない静けさ、光の体験、予知夢、明晰夢など、個を超越した体験を指します。
すべての現象は主体との共創造によって生じますが、サトルの現象はグロスよりもその傾向が強く、夢や瞑想での体験内容やその解釈は、意識構造の重心、すなわち「世界観」に大きく左右されます。
例えば、神話的段階の世界観では、高次サトルの現象が特定の霊的存在との遭遇として解釈されることもあります。そのため、単に「サトル体験」と言うのではなく、「呪術的サトル体験」「神話的グロス体験」「多元的コーザル体験」「論理的ノンデュアル体験」など、意識構造と意識状態をセットで表現することで、より正確に体験の質を把握することができます。
肉体的な死から次の生を受けるまでの期間、いわゆる「死後の世界」もサトルの体験に含まれます。明晰夢を習得すると、夢で起こる現象を選択できるように、次の生のあり方を選択できるようになるとも言われています。さらに言えば、この死と再生のプロセスは肉体的な死の瞬間に限らず、毎瞬間起こっているものであり、瞑想などを通してその根源と現実創造の過程に自覚的になることができます。