配列表フォーマットの移行(ST.25→ST.26)

1.概要

2022年7月1日から、配列表のフォーマットが、現行のWIPO標準ST.25からWIPO標準ST.26に全世界で一斉に変更されます。
これに伴い、2022年7月1日以降に行なう出願では、WIPO標準ST.26に準拠した配列表の添付が必須となります。
また、WIPO標準ST.26に対応した配列作成ソフトは、WIPOからの提供のみとなります(3.参照)。

2.対象となる出願

(1)通常の出願・国際出願

2022年7月1日以降に行なう特許出願および国際出願については、WIPO標準ST.26に準拠した配列表の提出が必須です。

(2)国内移行

国際出願日が2022年6月30日以前の国際出願について、2022年7月1日以降に、日本国への国内移行を行なう出願については、従前通り、WIPO標準ST.25に準拠した配列表を提出することになります。
国際出願日が2022年7月1日以降の国際出願については、WIPO標準ST.26に準拠した配列表の提出が必須です。

(3)分割出願・変更出願等

現実の出願日が、2022年7月1日以降の分割出願等については、WIPO標準ST.26に準拠した配列表の提出が必須です。
このため、2022年6月30日以前に日本国特許庁に行なった特許出願または国際出願日

(参照)
塩基配列及びアミノ酸配列の作成に関するWIPO標準ST.26への移行について(令和4年4月)
https://www.jpo.go.jp/system/patent/shutugan/bio/gene/enki_amino_wipo.html

特許庁

3.配列表作成ソフト 

ST.25形式に対応した配列表の作成ソフトは、特許庁HPに公開されていましたが、ST.26形式に対応した配列表の作成ソフトは、特許庁HPにはありません
ST.26形式に対応した配列表の作成ソフト(WIPO Sequence(安定版))は、WIPO HPに公開されています。β版から改良が行なわれ、昨年末から安定版がリリースされています。
WIPOのHPからダウンロードできる配列表作成ソフトは、安定版の2回目リリースのものです。日本語対応しているので、日本の出願人および代理人は楽ちんです。
6月に再度リリースが予定されていますので、実際にはそちらを使用して配列表を作成することになります。現在のリリース版からの変更点は現状は不明です。

各国特許庁が使用するチェッカーソフト(WIPO Sequence Validator)も公開されていますので、間違えてダウンロードしないように気をつけましょう。

・WIPO Sequence Suite
https://www.wipo.int/standards/ja/sequence/index.html

WIPO

また、4月25日にWIPO主催のツール説明会(オンライン形式)が開催されました。現在はアーカイブ配信されています。

・WIPO Webinar
Meeting code:WIPO/WEBINAR/STANDARDS/2022/6
Date and venue:April 25, 2022 Virtual (Japanese) 09:00 - 10:30 Geneva time
https://www.wipo.int/meetings/en/details.jsp?meeting_id=70210

WIPO

4.ST.25→ST.26への変換

配列表作成ソフトで、ST.25形式の配列表をインポートでき、ST.26形式で配列表を作成できるため、分割出願用の配列表についてもほぼ一括変換できそうです。
また、インポート時に、ガイドライン上の推奨事項については一括変換される仕様となっています。
ただし、ST.26形式で必須化された項目があるため、これらについては手入力が必要になる場合があります。

5.ユーザマニュアル・ガイドライン

配列表作成ソフトのユーザマニュアルは、WIPOから公表されています。

WIPO Sequence バージョン 1.1.0 ユーザーマニュアル
https://www.wipo.int/export/sites/www/standards/ja/sequence/wipo-sequence-manual-1-1-0-ja.pdf

WIPO

また、特許庁はST.26形式の配列表に関して、「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」の改訂版の意見募集を行なっています(締切り:5月21日)。

「塩基配列又はアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」改訂案に対する意見募集
https://www.jpo.go.jp/news/public/iken/220422_enki-guideline.html

特許庁

6.WIPO Q&A

WIPO標準ST.26への移行に伴い、WIPOで一般的な質問事項についてQ&Aをまとめられています。

WIPO ST.26の実装に関するよくある質問
https://www.wipo.int/standards/ja/sequence/faq.html?utm_source=WIPO+Newsletters&utm_campaign=d2f5fc03fc-DIS_STD_EN_210222&utm_medium=email&utm_term=0_bcb3de19b4-d2f5fc03fc-256900629

WIPO

7月1日以降にePCTを用いて国際事務局を受理官庁として出願する場合、7月1日以降に配列表を取り込む必要があります。

22: 国際事務局は 出願人が配列表のST.26 XMLファイル形式をアップロードできるようにするため、ePCTを更新しますか?現在はWIPO ST.25形式のみが認められています。
 
はい。ePCTは2022年7月1日以降、WIPO ST.26に準拠した(「.xml」)配列表をアップロードできるように更新されます。 2022年7月1日より、それ以前に出願された国際出願に関する配列表を出願後に提出する場合を除き、明細書の配列表部分のファイル形式のオプションに、*appと*txtが含まれなくなります。 認められる形式は*xmlのみです(*zipを添付することも可能です)。
 国際事務局は、受理官庁の電子出願ソフトウェアの変更や、出願サーバーの技術的な準備を支援しています

WIPO

WIPO標準ST.25に準拠した出願を原出願として7月1日以降に分割出願を行なう場合、分割出願時に提出する配列表が、WIPO標準ST.25およびWIPO標準ST.26のいずれに準拠するかは国毎に異なる可能性があります(日本:WIPO標準ST.26)。

31: 分割出願が行われたときに、配列表を再度提出する必要がありますか?
 
これは国内法の問題です。ただし、WIPO ST.26への効果的な移行の意図を考慮して、親出願にWIPO ST.25形式で提供される配列表がある場合、2022年7月1日以降はWIPO ST.26形式で分割出願の配列表を提出することが推奨されます。 
これは知的財産庁側でなされるべき決定です。親出願から分割出願へ配列表を「引き継ぐ」ことを出願人に許可する決定をしてもよいですし、WIPO ST.26に準拠した新しい配列表を提出するよう出願人に要求してもよいです。知的財産庁は、2021年中にWIPO ST.26実施計画を実行する際の運用を検討する必要があります。  

7.配列表に関する省令改正

特許法施行規則における配列表に関する部分の省令改正が行なわれ、配列表の提出方法について細かく規定が変更されています。

・「特許法施行規則等の一部を改正する省令案」に対する意見募集
https://www.jpo.go.jp/news/public/iken/220415_tokkyoho-shore.html

特許庁

8.変更点

・Organism、Applicant、Inventor等を事前に登録可能。
・作成後に使わなくなった配列について、Skipする機能あり。
・FASTA、RAWフォーマットをインポート可能(ST.25のProjectデータもインポート可)
・表記の変更
 ウラシル:「u」→「t」
 「Artificial Sequence」→「Synthetic Oligonucleotide」
 「Unknown」→「Unidentified」
・Feature keyを利用することで、1以上の塩基についてさらに詳細に規定可能。Feature keyはプルダウンから選択する。Feature locationについては、指定方法が決まっている。
・Feature keyに対してさらにQualifierを設定可能。
・使用環境時の言語設定はPreferncesからDefault Languageを変更する必要がある。

(更新日:2022/05/13)

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