AIエージェント元年の2025年にプロンプトエンジニアリングは必要か?②
今日は昨日の記事の続きとして、プロンプトエンジニアリングについて書いていこうと思う。
昨日の記事はこちらから👇
プロンプトエンジニアリングの基本構造とコツ
AIに適切な指示を出すためには、プロンプトを戦略的に設計する必要がある。
その際、重要なのは「プロンプトに何を含めるべきか」を明確にし、AIが混乱せずに意図を理解できる形を作ることだ。
これから、プロンプト設計の基本構造を整理し、さらに実践で使える具体的な手法と使い分けのコツを詳しく解説する。
プロンプト設計で意識すべき「5W1H」
プロンプトを作る際には、「5W1H」を意識することが非常に有効的である。
(人にお願い事をするときと原則は一緒だ。)
これは、Who(誰が)、What(何を)、When(いつ)、Where(どこで)、Why(なぜ)、How(どのように) の6つの要素を考慮してプロンプトを設計するという考え方だ。
これを適切に組み込むことで、AIが状況や目的をより正確に理解しやすくなる。
5W1Hを活用したプロンプト設計の例
例:新製品のマーケティング戦略をAIに提案させる場合
Who(誰が):ターゲット顧客層は誰か?(例:「20代の学生」)
What(何を):AIに何をしてほしいのか?(例:「マーケティング施策を提案」)
When(いつ):施策を実施するタイミングは?(例:「新学期の前」)
Where(どこで):施策の対象地域や場所は?(例:「全国展開」または「特定エリア」)
Why(なぜ):なぜその施策が必要なのか?(例:「ブランド認知度を高めるため」)
How(どのように):どの形式で出力してほしいか?(例:「箇条書きで具体的に」)
プロンプト例
「新製品Xのターゲットは20代の大学生です。この顧客層を対象に、新学期直前に実施するSNSマーケティング施策を3案提案してください。それぞれの案について、施策内容、期待効果、具体的な実行方法を箇条書きでまとめてください。」
ChatGPTに聞いてみた結果はこちら👇
5W1Hを意識することで、プロンプトが包括的かつ具体的になり、AIが内容を理解してより具体的なアウトプットを出してくれるようになる。
プロンプトの手法と使い分け
プロンプトエンジニアリングにはいくつかの手法があり、目的やタスクに応じて使い分けることが重要である。
ここでは、よく使われる3つの手法「7Rプロンプト」「ゼロショットプロンプト」「フューショットプロンプト」を解説し、それぞれの適切な活用場面を示す。
1. 7Rプロンプト:包括的に指示を出す
7Rプロンプトは、プロンプト設計を効果的にするためのフレームワークで、以下の7つの要素を活用する。これにより、AIに網羅的かつ明確な指示を出すことができる。
適用場面:タスクが複雑で、正確な指示を出す必要がある場合に最適。特に業務に直結するアウトプットを求めるときに活用される。
2. ゼロショットプロンプト:シンプルな指示で幅広い回答を得る
ゼロショットプロンプトとは、AIに事前の情報や例を与えず、単純にタスクを依頼する手法である。
この方法はシンプルでスピーディだが、曖昧な指示だと結果も曖昧になる可能性がある。
適用場面:大まかなアイデアを収集したいときや、タスクの全体像を把握する場合に向いている。
プロンプト例:
「今後のAI業界のトレンドについて教えてください。」
メリット:シンプルで手間がかからない。幅広い視点の回答が得られる。
デメリット:回答が抽象的で、具体性に欠けることが多い。
3. フューショットプロンプト:例を示して具体性を高める
フューショットプロンプトは、AIに事前の例やサンプルを与えてタスクを依頼する手法である。
この方法では、AIが与えられた文脈やパターンを参考にするため、精度の高い結果が得られる。
適用場面:高度な専門性が求められる場合や、AIに特定のパターンを模倣させたいときに有効。
プロンプト例:
「以下の例を参考に、新たな提案を3つ挙げてください:
事例A:〇〇業界のSNSキャンペーン案
事例B:〇〇業界でのターゲット別施策」
メリット:AIが文脈を理解しやすいため、具体的かつ質の高い回答が得られる。
デメリット:例を準備する手間がかかる。
プロンプトを目的に応じて使い分ける
これらの手法は、それぞれ目的やタスクに応じて使い分けることが重要である。
幅広いアイデアを集めたい:ゼロショットプロンプト
詳細かつ正確な指示が必要:7Rプロンプト
特定の形式や専門的なアウトプットを求める:フューショットプロンプト
プロンプトの選択が、AIの性能を引き出すための最初の一歩である。
最初はざっくりとゼロショットプロンプトで広げて聞いていきながら徐々にフューショットプロンプトや7Rプロンプトを駆使しして自分の欲しい回答を作り上げていくことが僕の使い方だ。
プロンプトエンジニアリングの必要性
ここからは、AIエージェントが登場してもプロンプトエンジニアリングは必要なのか、という点について掘り下げていきたい。
結論から言うと、僕は「プロンプトエンジニアリングは必要だ」と考えている。
AIエージェントが発展した世界をイメージすると、確かにAIに大まかな指示を投げるだけで、かなりの部分を自動でやってくれそうだ。
しかし、ざっくりとしたタスクはこなせるかもしれない一方で、細部まで踏み込んだアウトプットを期待する場合や、どうしても精度や形式を厳密にコントロールしたい場面では、まだまだ「人間の介在」が必要とされるだろう。
AIエージェントが得意なことと苦手なこと
AIエージェントは、その学習済みのモデルや参照データセットに基づいて、最もらしいアウトプットを確率的に提示してくれる。
この「最もらしい」という部分が曲者で、エージェントが扱う情報のソースが偏っていたり、過去に学習したデータの範囲を超えた問いかけだったりすると、精度の低い回答や誤った推測が混ざるリスクがある。
さらに、人間が持つ独自の意図や文脈を100%汲み取ることは、やはりまだ難しい。
たとえば、
企業独自のガイドラインがある
特定フォーマットでのアウトプットが求められる
コンテキストの微妙なニュアンスを理解してほしい
といった要望がある場合、AIエージェントだけではそこに対応しきれない可能性がある。(AIエージェントに追加学習させれば解決できるかもしれないが、とはいえそのためだけに学習コストをかけるか?と言う問題もある。)
こうしたとき、明確な指示(プロンプトエンジニアリング)を与えて、細部をチューニングしていくことが必要になってくる。
AIエージェントと共存するために
AIエージェントはこれからますます高度化していくだろう。
だが、その機能が“魔法のように何でも自動化してくれる”わけではなく、ビジネスや社会が求める「精度」「文脈の理解度」に応じて、人間が介入して微調整をかける工程が必要になる。
特に大規模プロジェクトや重要な意思決定のサポートにおいては、適切なプロンプトを設計し、得られたアウトプットをレビュー&フィードバックして再学習させる、という一連のプロセスが欠かせない。
そのプロセスこそがプロンプトエンジニアリングの本質的な価値だと言える。
まとめ
AIエージェントが台頭しても、プロンプトエンジニアリングの重要性は変わらない。
むしろ、AIを使う場面が増えるほど、細かいニュアンスや厳密なガイドラインを反映した指示が求められるようになる。
AIを“思いどおりに動かす”ためのカギこそが、プロンプトエンジニアリングである。
これからもAIの性能は進化していくはずだが、それでも人間が伝えたい意図を的確に示し、必要な変数を細かく調整し、最終アウトプットの質を担保していくためには、プロンプトエンジニアリングのスキルが欠かせない。
「ざっくり→徐々に具体化」という使い方をするにしても、最終的にはフューショットプロンプトや7Rプロンプトなどを駆使して、“自分が本当に欲しい回答”に近づけていく。
そのプロセスこそが、これからのAI時代に必要な知識とスキルなのだと思う。