生成AI活用が通常業務が忙しくて進められていない人に向けて
緊急度が低く見える“重要タスク”を動かすために
企業のDXやAI推進を担当の方とよく打ち合わせをしていると、どうしても手を出しづらいテーマがあると相談をもらう。
それは・・・
「重要だとはわかっているが、緊急度が低いためになかなか手を付けられない」
生成AIの活用は、まさにその典型例であろう。
目の前の業務が回っている限り、後回しでも問題ないように感じてしまう。
だが、将来を見据えたとき、それが大きな機会損失になることは言うまでもない。
ここでは、「緊急度が低いからこそ後回しになりがちな生成AIの活用」を、いかにして社内で動かし、DX推進を加速させるかについて考えてみたい。
「重要だけど緊急ではない」領域をどう扱うか
時間管理のフレームワークとして有名な「コヴィーの時間管理マトリックス」では、第2領域(重要だが緊急でないタスク)の扱いが鍵とされている。
多忙な日常では、緊急対応(第1領域)や突発的な依頼(第3領域)に時間を奪われ、気づけば「重要だが緊急でない」作業が後回しになってしまう。
しかし、第2領域を意識的に拡大しなければ、成長の種を育てる機会を失うことになる。
生成AIの活用はまさにこの成長領域であり、将来的には生産性を大きく底上げし、競合優位性を高める原動力となるはずだ。
にもかかわらず、「今は大きな問題なく業務が回っているから」と先送りにするケースは少なくない。
後回しにすると学習にかかる時間がさらに確保できず、新しいツールや発想に触れるチャンスを逃し続ける悪循環に陥る。
だからこそ、まずは「後回しにしてはいけない理由」を組織内で共有し、
生成AIに投じる時間やコストの優先度を再定義する必要がある。
時間をブロックして“先に仕掛ける”
生成AIの活用を推進している担当者には、まず「ブロックタイムの設定」を強く推奨したい。
たとえば、週に一度、数時間だけでも“生成AI研究タイム”としてカレンダーにブロックしてしまうのだ。
急な打ち合わせが入りがちな部署であっても、一度先に予定を入れてしまえば、他のミーティングが入りづらくなる。
また、短期間で成果を出すスプリント方式も効果的である。1~2週間ごとに「新しいプロンプトの作り方を試す」「業務の自動化フローを組み立てる」といった小さなゴールを設定し、動き続けられる体制を作る。
すべてを一度に完成させる必要はない。
むしろ「小さな成功体験」を積み重ねるほうが、周囲を巻き込みながら少しずつプロセスを洗練させやすい。
明確なゴールとデッドラインを設定する
緊急性が低いタスクほど、期限がなければ際限なく先延ばしされる。
「今月中に、生成AIで提案資料作成のプロセスを自動化してみる」「来月の社内勉強会で生成AI活用事例を共有する」など、あえて明確な期限と目標を置くことが大切である。
さらに、その成果を共有する場や、外部に発信するチャレンジを用意するのも有効だ。「○月○日に開催される展示会の前までに、生成AIを使った新しい営業支援の仕組みをテストする」といったように、大きなイベントをマイルストーンに組み込めば、嫌でもエネルギーを集中させるきっかけになる。
自分だけで盛り上がっていても、ほかのメンバーが「どうせあとでいいんじゃない?」と思っていたら進捗は止まる。
だからこそ、ゴール設定をチームで合意し、成果を公開することで周囲の期待感や当事者意識を高める必要がある。
周囲を巻き込み、成功体験を共有する
「生成AIなんてまだ早い」「うちの業務には合わないかも」といった声を耳にすることもある。
しかし、その多くは食わず嫌いであるケースがほとんどだ。
今の業務が回っているからといって、これからも同じやり方で勝ち続けられる保証はどこにもない。
そこで、まず小さな成功事例を生み出し、こまめに共有することを心がけたい。
たとえば「生成AIによるメール文面の自動作成で、担当者の1日あたりのメール作成時間が2割削減できた」「新商品のネーミングを生成AIのブレストで行ったら、企画が一気に具体化した」など、身近なレベルで成果が見えると、人は興味を持ちやすくなる。
すると「自分も使ってみたい」というポジティブな意識が芽生え、チーム全体の動きが加速する。
習慣化と仕組み作り
生成AIのメリットは、一度覚えて終わりではなく、日常業務に組み込むことで次々と応用可能なアイデアが浮かんでくる点にある。
しかし、そのためには学習と実践を継続的に行う仕組みが必要だ。
たとえば、朝の短い時間や、週1回の社内定例で最新の生成AIツールの情報を共有するだけでも、格段に“AIのある職場の当たり前度”が変わっていく。
新しいレシピを毎週試す料理人のように、生成AIの新しいレシピ(プロンプト)を試しては学びを得る。
そうして得られたアイデアを同僚と交換しあうことで、お互いの業務改善に役立てることができる。
学習会やワークショップの定期開催もおすすめである。
負担に感じるならば、1回あたり30分〜1時間という短い時間設定にすればよい。
大事なのは「絶えず、生成AIについて話ができる場がある」という状態をつくり出すことだ。
そうした“小さな習慣”が積み重なってこそ、やがて大きな変化として目に見える成果があらわれる。
まとめ
世の中には、未来を切り拓くために欠かせないにもかかわらず、普段は「そこまで困っていないから」と先送りにされてしまう領域がある。
生成AIの活用は、それを象徴するテーマだと言ってよいだろう。
だが、これからのビジネス環境を考えれば、数年先には生成AIを使うことが“当たり前”の世界が訪れる。
そのときに慌てて追いかけるのではなく、今だからこそ一歩先に動き始めることで大きな優位性を得ることができる。
本当に重要だとわかっているなら、緊急性が低いからといって後回しにせず、意識的に時間をブロックし、小さな目標とマイルストーンを設け、チーム全体でワクワクしながら取り組む。
気づけば「AIが特別ではなく日常の一部」として機能する状態になり、組織の成長スピードそのものを底上げしてくれるはずだ。
後回しにしてしまう誘惑は常につきまとう。
だがそこをこらえ、少しずつでも前に進むことが、やがて大きな差となってあらわれる。
生成AIの可能性を活かすために、まずは一歩踏み出すことから始めてみてはいかがだろうか。
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