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データクレンジングはいまのうちに。


AI化で求められる“データの準備”

「とりあえずAI化だ」「デジタル変革(DX)を急がねば」と声高に叫ばれる企業が増えているが、その一方で“データ”の整備がないがしろにされている現状がある。

AIを活用するためにデータを収集している企業は多いが、「いざ使おうとしたらバラバラなデータばかりで、分析できる状態になっていなかった」などという声をよく耳にする。

特に、時間が経てば経つほどデータが膨張し、整理しきれなくなることも珍しくない。

だからこそ、今のうちにデータや定義を整えておくことがAI化成功への近道になる。

共通言語不足が引き起こす“痛い目”

 AIプロジェクトの遅延・停滞

よくあるのは、各部門で「売上」の定義が異なるケースである。

営業部門は純粋な売上金額、経理部門は消費税を除いた売上高、マーケティング部門はキャンペーンを含めた暫定売上といった具合にバラバラな指標を持っている。

その結果、どの数字をベースにAIに学習させるか決められず、プロジェクトが進まない。

スタート時点で合意形成がされていないと、後工程で一気に手戻りが発生し、「結局どの定義が正解なの?」という泥沼にはまってしまう。

データクレンジングへの過剰な負担

データ整備を先送りにしていると、いざ「AI活用しよう」となった際に膨大なクレンジング作業が待ち受けている。

「このIDは本当に同じ顧客なのか?」「この指標は誰がどんなタイミングで入力するのか?」という確認作業が、AI開発やPoC(概念実証)のスケジュールを圧迫する。

こうした泥くさい作業は誰もが敬遠しがちであり、結果としてプロジェクトが長期化、あるいはフェードアウトしてしまう原因にもなる。

今のうちにデータを整えるべき理由

企業内のデータ量は加速度的に増える

「数か月前までは、そこまでデータが多くなかったのに、いつの間にかあふれ返っている」という話はよく聞く。

企業の業務システムやクラウドサービスから毎日吐き出されるデータは膨大であり、気づけば倍以上になっていることもある。

小さなスケールのうちに整備を進めておけば、後々の負荷を大幅に減らせるはずだ。

手戻りが後になるほど大きくなる

最初から「こういう指標で統一しよう」と決めておけばシステム連携もスムーズに進むが、後から「この数値はやはり別の算出方法にしよう」となると、関連するシステムや報告書もすべて修正しなければならない。

プロジェクトが大きくなればなるほど、修正箇所は指数的に増えてしまい、実質的なやり直しに近い手間とコストがかかってしまう。

具体的に何をすべきか

主要データ・キーワードの棚卸し

まずは「売上」「顧客ID」「在庫」など、最低限の重要項目を洗い出す。

どの部署がそれを使っていて、どんな定義で算出しているのかを可視化するだけでも、大きな第一歩となる。

データ辞書(ディクショナリ)構築の検討

次に、洗い出した主要項目を“誰が見てもわかる”ように表にまとめる。

名称、定義、計算ロジック、例外対応などをしっかり書き込むことで、担当者同士の意思疎通が格段にスムーズになる。

「後で読む人が迷わないように」くらい丁寧に書いておくほうがよい。

小規模プロジェクトからテスト導入

最初から全社統一を目指すと、あまりにも範囲が広くて挫折しがちである。

まずは特定の部門やプロジェクトで、棚卸しとデータ辞書の運用を試行し、問題点やノウハウを蓄積する。

その成功例をもとに他部門へ水平展開していけば、大きな抵抗なく全社導入できる可能性が高まる。

まとめ:今すぐ動かないと未来の自分が後悔する

「AI化やDXを推進するなら、データの準備が必要」という言葉は耳にタコができるほど聞こえてくる。

しかし、実際に“どれだけすぐに取り掛かるか”が成否を分ける分水嶺となる。

後手に回れば回るほどデータは増え続け、その整理コストは鰻登りに上がっていく。

どうせいつか取り組まなければならないなら、今やってしまうほうが断然メリットが大きいはずだ。

AI導入や大規模データ分析が目前に控えているなら、「まずは主要指標の棚卸しから」という小さな一歩を踏み出してみることを強くおすすめしたい。

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