生成AIを導入してたった1年で、9,000万円相当のコスト削減をした会社があるって話
生成AIで働き方が変わる時代
生成AIは、近年DX（デジタルトランスフォーメーション）の象徴として注目を集めている。
その中でも、ビジネス領域での活用が急速に進んでおり、特に情報処理や業務効率化の分野で成果を上げている。
日本国内でも、生成AIを積極的に導入する企業が増えており、その一例としてアシスト社の取り組みが挙げられる。
同社では、生成AIを搭載したインサイトエンジン「Glean」を導入し、社員の97％が利用しているという驚くべき結果を生み出している。
この取り組みは、全社員が情報検索や業務サポートに生成AIを活用するという画期的な事例である。
生成AIを企業で導入し、組織全体で活用することで、どのような変化が生まれるのか。
具体的な取り組みについて見ていこう。
アシスト社の取り組みとその成果
アシスト社の生成AI「Glean」は、チャット機能はもちろん、社内情報を横断的に検索し、必要なデータやドキュメントを迅速に検索エンジンとしても使えるツールである。
Gleanを見るのも聞くのも初めて・・・というお客様には、「Gleanは社内版Google」と例えて説明させていただくのですが、アシストでの実際の利用実態を見ても、ドキュメントや情報を見つけ出すのに96万回使われているのは、まさに「検索エンジン」としての使われ方が王道だと言えそうです。
つまり、シンプルなチャットだけでなく、社内のデータにもアクセスできることで、社内のナレッジをフル活用できている。
そして、このツールの導入によって、社員1人あたり1日平均9回、半年間で約130万回という驚異的な利用実績を達成した。
また、社員アンケートによれば、Gleanの利用により1週間あたり平均31分の業務時間が削減されたと実感しているという。
そして、半年間での総削減時間は1.8万時間に達しており、この結果は全体の残業時間削減や労働生産性向上にも寄与していると解釈できる。
特に、積極的に活用している社員ほど、その成果が出ているのではないかと推察されている。
また、Gleanの利用と社員の業績パフォーマンスに相関がありそうかを尋ねたところ、上記のイノベーター理論でGleanをよく使っているパワフルなユーザー群は、業績評価が高く残業時間の減少傾向も高いことがわかりました。
これらの成果は、単なるツール導入に留まらず、組織全体の働き方に変化をもたらした良い事例と言える。
合わせて、業務改善を進めたことにより、どれだけのコスト削減ができたかの数字も記載されていたので見ていこう。
実際の記事より抜粋
社員の回答から、週当たりに削減できた無駄な業務時間は、全社平均で1人31分となり、8割の社員が週に15分以上削減できていることがわかります。
全社で合計すると、6ヵ月間で1.8万時間が生成AIによって削減できた時間になります。これは推定値ではなく、社員がリアルに実感している確実な成果だと力説できる数字になりました。
たとえば、全社で1人当たり週31分の時間削減をコスト換算すると、1時間当たり2.5千円とした場合、1年間では9千万円になります。アシストは1,300名の企業規模ですので、生成AIの導入利用コストを差し引いても、初年度から充分な効果がもたらされていると言えます。
導入した初年度で9,000万円相当のコスト削減という驚異的な数字であると同時に使いこなすことができれば、生成AIを導入しない理由はないだろうとわかるいい事例である。
ここまでの成果を出すために、生成AIの活用促進に向けた取り組みについて何を行なっていたのか大変興味深い。
記事の内容から推察すると、以下の2つのポイントが成功の鍵となったと考えられる。
1. イノベーターの存在と役割
生成AIの活用促進において重要な役割を果たしたのが、
いわゆる「イノベーター」である。
イノベーターとは、新しい技術に興味を持ち、積極的に試してみる層を指す。
アシスト社では、全社員の中で約33名がこのイノベーター層に該当し、
その人達の1日あたりの平均利用回数は驚異の46回に達している。
イノベーターたちは生成AI「Glean」を使いこなし、その有用性を実際の業務の中で示すことで、他の社員にも活用の具体的なユースケースを提供した可能性が高い。
また、イノベーターに刺激を受けたアーリーアダプター（イノベーターに続いて技術を取り入れる層）が新たなユースケースの創出に寄与したと考えられる。
これにより、生成AIの導入が単なるツールの導入に留まらず、組織全体での実用化に進化したと言える。
2. 社内での利用促進施策
もう一つの成功要因として、会社全体で生成AIの利用を促進するための仕掛けが挙げられる。
アシスト社では、社内でコンテストを開催し、社員間の競争と共有を活性化させた。
このようなイベントは、社員が生成AIをどのように業務に活用するかを考え、実際に試すきっかけを提供する。
また、成功事例が共有されることで、他の社員にも新しいアイデアや方法を試す動機付けとなった。
これらの施策は、社員一人ひとりが主体的に生成AIの活用方法を模索する文化を醸成したのではないだろうか。
その結果、全社員の97％が日常業務で生成AIを利用するという驚異的な成果に繋がったと言える。
まとめ
アシスト社の事例は、生成AIが業務効率化や生産性向上にとどまらず、
企業全体の働き方に変革をもたらす可能性を示している。
同社が半年で達成した成果は、1日平均9回の利用頻度や、全社員97％の活用率といった具体的な数字に裏付けられており、生成AIがビジネスの現場で機能する実証例である。
この事例が示すもう一つのポイントは、技術そのものの有用性だけでなく、それを組織に浸透させる取り組みが成功のカギであるということだ。
単にツールを導入するだけでは、ここまでの成果は得られない。
CoEの設置や現場主導の活用促進、さらには社員の主体性を引き出す仕組み作りが、成功を支える重要な要因だったと言える。
ただし、生成AIはあくまでツールであり、その効果は使う人次第で大きく変わる。
「キングダム」を読んでいる人なら、主人公・信が王騎将軍から矛を授かる場面を思い浮かべるだろう。
信は最初、その矛を使いこなすだけの筋力や技術が不足していたため、思うように力を発揮できなかった。
しかし、修行を重ねたことで筋力とスキルを身につけ、やがて矛本来の力を引き出し、戦場で圧倒的な活躍を見せるようになった。
生成AIも同様で、その機能を十分に活かすためには使い方を学び、実際に活用するスキルを磨く必要がある。
適切な教育や経験を積むことで、生成AIの真価を発揮し、最大限の成果を得ることができるのだ。
具体的には、社員一人ひとりのAIリテラシーや新しい技術を受け入れる姿勢が、生成AIの効果を最大化する鍵となる。
アシスト社の取り組みは、生成AIが適切な組織文化や活用体制の下で、
単なる効率化ツール以上の存在になり得ることを示している。
この事例は、他企業が生成AIを導入する際の重要な参考となるだろう。
未来を見据え、企業ごとに最適な活用方法を模索し続けることが、競争優位性の確立に繋がるはずである。