アジアカップ2023に負けちゃった話

日本代表の歩み

神ドロー

昨年5月の組み合わせ抽選会。
日本代表は第1シードとしてD組に振り分けられました。
実はアジアカップのフォーマットでは、D組1位というのは決勝トーナメントを最も有利に進められるのです。
なぜ開催国のいるA組ではなく、D組が有利になっているのか分からないのですが…

・順当にいけば、優勝候補がトーナメントの逆側に固まりそう
・準決勝まで他組の1位と当たらない
・全ての試合の休憩日数が、対戦相手と同じ or 1日長い(これが地味にデカい!)

…こういう利点がありました。

僕も抽選後、「イラク戦は決勝戦のつもりで挑まないと…」とツイートした記憶があります。
第2シードのイラクにもし不覚を取ったら、グループ2位に回る可能性が高いですから。

グループリーグ

初戦、ベトナム戦。
一時リードを許すも、逆転勝利。
戦術面での拙さは相変わらずですが、良い時間帯に逆転する日本代表の地力に、頼もしさを感じたものです。

ただ、2戦目のイラク戦。
絶対必勝の試合に100%で臨まず破れるという、まるでワールドカップのコスタリカ戦の録画のような展開でした。

前述の通り、僕は優勝を狙うなら2戦目は絶対必勝だと思っていました。
それなのに、後々の疲労を気にして、どう考えても機能しないFW布陣を採用…案の定、攻撃不全で敗れました。

3戦目、インドネシア戦には順当に勝利するも、2位で決勝トーナメントに進みます。
結果、準々決勝で優勝候補のイラン代表と当たることになります。

決勝トーナメント

1回戦、バーレーン戦。
この程度の相手なら、戦術が拙くとも、選手の個人能力で押し切れました。

準々決勝、イラン戦。
戦術の拙さを徹底的に突かれました。
選手個人の能力は、恐らく日本が上回っていましたが…チームとしては、スコア以上の完敗だったと思います。

敗因

伊東純也選手がいれば…

これ、言いたくなる気持ちは分かりますが、多分あまり関係ないです。
同じFWの三笘が一切機能していなかったことが理由です。
ビルドアップ時の各選手、特にサイドバックの立ち位置がムチャクチャで、FWまでボールが渡る気配がまるで無かったです。

ビルドアップが機能しないから、GKの鈴木は無謀なロングパスを出さざるを得ない。
イランはたやすくボールを奪取し、ロングボールをガンガン日本ゴール前に放り込んでくる。
身長で劣る日本の負けは、必然の結果だったと思います。

もちろん、伊東離脱による、他選手の精神面での動揺はあったかもしれませんが…
何より、正直「汚らわしいゴシップ誌のことなど、考えたくもない」というのが本音です。

板倉・伊藤選手を交代していれば…

板倉はケガ明けで調子が悪く、イエローカードも貰っていました。
伊藤も劣勢に引きずられ、明らかにエアバトルに怯んでいました。
確かに、ロングボールに苦戦していた彼らは交代すべきだったと思います。

他にも、おのおの攻守に効いていた久保・前田の交代など、森保さん本人も認める通り、采配ミスがイラン戦の敗因だというのは事実でしょう。

ただ、それはあくまでイラン戦の敗因であって、アジアカップの敗因だとは思えません。

つまり、板倉と伊藤のパフォーマンスが万全で、久保と前田も最後までピッチに残したとして、それは選手個人のその日のコンディションに救われた、ラッキーな勝利に過ぎないと思うのです。

要は、前述したビルドアップからディフェンスまでの一連の戦術不備が問題であり、さらに言うならビルドアップもおぼつかない状態でパスサッカーに挑んだ、見当違いの戦略がそもそもの敗因だったということです。

守田選手の指摘

以下、守田の試合後コメント抜粋です。
「どうすれば良かったのかはハッキリ分からない。考えすぎてパンクというか、もっとアドバイスとか、外からこうした方がいいとか、チームとしてこういうことを徹底しようとかが欲しい」
「結局、だれが出てるかの人次第、質次第になっている」
「チームとしてどういう動かし方をして、どこを狙っていくかというのはもっと明確にしないといけないし、そういう課題があるのに個のところで負けたというのは逃げだと思う」

最悪、造反者として冷遇されるかもしれませんが(そうなったら日本代表には失望しますが)、それだけのリスクを取った魂の諌言であり、個人的には彼のコメントが敗因のすべてと言っても過言ではないと思いました。

僕は個人的に、現場に戦術構築を委ねる「ボトムアップ戦略」が大嫌いなのですが…
もしボトムアップ戦略を採るなら、せめてプレイヤー側が現場で迷った時には、マネジメント側が的確にヒントを提示しなければなりません。
それをせずに、指揮官が決裁者ぶって座っているだけなら、それは丸投げ、責任転嫁。リーダーの怠慢だと思います。

守田のコメント記事を見れば、選手側もボトムアップ方式に限界と苦痛を感じていたことが明らかに分かります。
この点、ぜひとも改善してほしいです。

冨安選手の指摘

冨安も興味深いコメントを残しています。
「良くない時の日本というか、ちょっと良くない時間帯にシンプルにボールを失うとか、ちょっと淡白なプレーになってしまった」
「もっともっと戦わないといけない。その熱量のところは、僕も含めて、今日の試合の後半は特に感じることができなかったと思います」

後出しジャンケンですが、僕は今回のアジアカップ、開幕前から嫌な予感がしていました。
今回のアジアカップは砂漠地帯のカタール開催ということもあり、変則的に冬開催となったのですが、冨安や久保など欧州リーグ所属の選手たちが、チーム合流後にこぞって苦言を呈していたのです。
「1~2月は所属クラブでも重要な時期。夏開催が望ましい」と。

それ自体は完全に正当な提言で、100%支持しますし、アジアサッカー連盟は状況を改善すべきだと思います。
なので、すごく言い方が難しいのですが…

たとえば南米選手権が変な時期に開催されたとして、アルゼンチン代表の選手たちがチーム合流後に「後ろ髪を引かれる」的なコメントをしている姿が想像できないのです。
2022年のワールドカップで示したように、彼らは億万長者になってなお代表戦を絶対視し、命を懸けるような選手たちです。
つまり、「日本代表の選手たちの中では、アジアカップの重要度って相対的に最優先なんだろうけど、決して絶対的ではないんだろうな」というか。

今回、イランやイラクの選手たちの目は、一昨年のアルゼンチンのようでした。
日本打倒に命を懸け、勝利を喜ぶ様子はまるで優勝チームのそれだったと思います。

日本代表の選手たちも、コーチも、監督も、僕らの国のために全力で戦ってくれたことは疑うべくもなく、彼らには感謝しかありませんが…
だからこそ、今回のアジアカップで改めて、世界トップ(つまりイランやイラク、アルゼンチン)との圧倒的な精神の差を感じました。
それは平均身長190cmに及ぶオランダ代表や、100mを10秒前後で駆け抜けるナイジェリア代表とのフィジカル差よりも如何ともしがたい、途方もない壁だったと思います。

森保監督を解任すべきか?

盛んに森保解任論が叫ばれていますが、個人的には「そんなんどっちでもいいな〜」が本音です。

確かに、森保さんは毎度「私の○○が敗因です」というコメントを残しつつ、その○○の改善にもまるで手を付けず、一方で引責辞任もしておらず。
それが本人の中でどう理由付けされているのかは正直よく分かりません。

また、彼は過去の国際大会で、1度も事前に掲げた目標を達成していません
アジアカップ2019:目標・優勝⇒結果・準優勝
オリンピック2020:目標・メダル⇒結果・4位
ワールドカップ2022:目標・ベスト8⇒結果・ベスト16
アジアカップ2023:目標・優勝⇒結果・ベスト8

…ゆえに、解任もアリだとは思います。

ただ、解決すべき課題はやはり「ボトムアップの限界に気付き、戦術(特にビルドアップ戦術)をトップダウンで提示できる人材をコーチ陣に組み込むこと」だと思いますし、それを特に森保さんが担うべき理由もありません。
なので、森保さんを解任しようがしまいが、根本的には一緒だと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?