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「2025年以降の株式譲渡益増税と海外移住による節税に関する注意点」

質問
2025年から富裕層の株式売却時の税率が20%から27.5%に上がる。
そこで海外居住者の所得税は15%で済むと考えるが留意点を教えて欲しい。

2025年から日本国内における株式譲渡益に対する税率が20%から27.5%に引き上げられる予定です。
この増税に伴い、税負担を軽減する目的で海外移住を検討する方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、税理士の視点から以下の点に注意が必要です。


1. 非居住者の課税関係


日本の税法上、非居住者は国内源泉所得に対してのみ課税されます。
一般的な株式譲渡益は国内源泉所得に該当しないため、非居住者が日本国内の株式を売却して得た譲渡益は、日本で課税されないのが原則です。

ただし、以下の例外があります。

• 買集めによる株式等の譲渡:同一銘柄の株式を大量に買い集め、その地位を利用して発行法人やその関係者に譲渡する場合。 

• 事業譲渡類似の株式等の譲渡:過去3年以内に発行済株式の25%以上を保有していた特殊関係株主等が、発行済株式の5%以上を譲渡する場合。

• 不動産関連法人の株式の譲渡:不動産関連法人の特殊関係株主等が、その法人の株式を一定割合以上譲渡する場合。 

これらに該当する場合、非居住者であっても日本で課税される可能性があります。

2. 国外転出時課税制度

2015年7月1日以降、1億円以上の有価証券等を保有する方が海外移住(非居住者となること)する際、出国時点でその資産を譲渡したものとみなして課税される「国外転出時課税制度」が適用されます。

このため、海外移住による節税を図る前に、この制度の適用を十分に検討する必要があります。

3. 租税条約の確認

日本と移住先国との間に租税条約が締結されている場合、株式譲渡益の課税関係が異なる可能性があります。

租税条約の内容によっては、譲渡益が移住先国で課税される場合や、日本での課税が免除される場合があります。

具体的な税務上の取り扱いは、各国の租税条約の規定によります。

4. 移住先国での課税

海外移住後、移住先国での税法に基づき、株式譲渡益が課税される可能性があります。

特に、譲渡益に対する税率や課税方法は国によって異なるため、事前に移住先国の税制を確認することが重要です。

5. その他の留意点


• 資産管理の複雑化:海外移住に伴い、資産管理や税務申告が複雑化する可能性があります。
• 為替リスク:海外での資産運用において、為替変動によるリスクが生じることがあります。

以上の点を踏まえ、海外移住による節税を検討する際は、税理士などの専門家に相談し、総合的な判断を行うことをお勧めします。

畠山謙人について

畠山謙人 / Hatayama Kento
会計士・税理士
シードスタートアップの税務顧問
スタートアップの資本政策アドバイザー

シード期のスタートアップに特化した会計士・税理士。
資本政策と財務戦略の最適化を通じて、スタートアップの成長加速を支援。創業期特有の課題に寄り添い、適切な資金調達と持続可能な成長を実現するための伴走型アドバイザーとして活動。
実務に即した会計・税務・資金調達の知見を発信しながら、スタートアップエコシステムの発展に貢献している。

畠山謙人のXアカウント

https://twitter.com/kandmybike

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