フェーズごとの法務の動き方の工夫の変化を経験して ー3年半を振り返ってー
1 1人法務時代 ー社員数十名〜ー
法人向けの新しいプロダクトがリリースされ、契約数が増えそうなタイミングで、事務所の仕事もしつつ、業務委託で1人法務を始めました(業務委託から業務時間を増やしていくスタイルは、最初はそもそも1人分の業務がないとか、お互いにカルチャーフィットの確認をしたいという場合には、有益な選択肢かと思います)。
外から会社に関わることはありましたが、インハウスとして関わることは初めてだったので、先駆者のnoteを参考にしつつ、手探りで進めていきました。
相談されやすい環境づくり
弁護士に相談、となると、重く受け止められそう
法務に相談すると、止められると思われそう
法務に相談すると、時間がかかると思われそう
というイメージがあったのと、
CFOが法務も兼任していたことで、法務チェックに時間がかかっていたようだったので、
なるべくフランクに対応(slackの絵文字も多用しつつ)
黒はとめるが、グレーはなるべく白くなるよう一緒に考えるというスタンスを全体会を含めて各所で示す
即レスで返せるものは即レスで返す(早いものだと秒、さらに早いものだと聞かれる前に)で返す(時間をかけるべきはかけて)
legalチャンネルは当初からあったものの、あえて集約せず、どのチャンネルでも対応する
ということをして、「相談されやすい環境づくり」をしていました。
また、ややこしい業務を法務で引き取ったりもしていました。
法務マターの認知
また、「これは法務に相談した方がよさそうでは?」といったメッセージを捕捉できるように「法務」や「商標」などをslackの通知ワード(上部のslack→環境設定→通知→マイキーワードで設定できます)に設定し、
いろんなチャンネルの巡回もしていました(これは、法務マターの確認のほか、事業や社員の理解にもつながりました)。
リスクベースの判断
法的判断については、判断にかける時間も含めてリスクベースで判断し、
現場が必要以上に保守的な判断になっている場合は、法務の側から、お声がけすることもしていました。
ただ、当初は、外部の法律事務所としてのアドバイスは、スタートアップのインハウスよりは保守的になりがちなこと、それぞれのリスクは提示するが、どちらがよいかを会社側に委ねがちなこともあり、チューニングには一定の時間がかかりました。
経営層へのエスカレーションを減らす
法的な判断については、基本的に法務限りで判断するようにし、
また、法的な判断以上のものが求められる業務についても、
エスカレーション後の判断傾向を肌感覚として身につけつつ、リスク判断を混ぜ込むことで、
エスカレーションをしても、判断が変わらないケースを増やし、エスカレーションの発生を極小化していきました。
採用
そんなことを試行錯誤しているうちに、社員数が増え、法務以外にも業務が広がっていき、このままでは、業務が溢れそうという見通しがついてきました。
それまで採用をしたことはなかったので、これも試行錯誤となりました。
首が締まってきているので早く採用したい気持ちと、会社にカルチャーフィットし、ワークする方を採用したい気持ちのはざまでかなり揺れることになりました。
また、なかなか採用に至らないなかで、予算と期待値がマッチしているか、どういった方がありえそうかといった、法務のマーケット状況も踏まえるべく、Linekedinでつながりのあったエージェントのお話も聞いてみました。そうして目線感を合わせながら、採用を進めていった結果、1人採用するのに1年近くかかりはしましたが、現在は、業務委託(他社のインハウス)を含む4名体制となりました。
2 メンバーの増加と社員の増加に伴う変化
任せる範囲を増やす
メンバーが増え、1人法務からチーム法務になることで、さまざまな変化が生じました。詳細は以下の記事のとおりですが、社員の増加に伴う業務量の増加に対応するため、チーム全体のキャパシティを広げるべく、任せる範囲を広げていくことが求められるようになりました。
とはいえ、二次レビューをしていて、あれこれ気になってしまったり、全部渡すと、自分のレビュー力が落ちていきそうという気持ちもあり、すぐに、大半を渡すみたいなことにはなりませんでしたが、社員増加や、新たな業務の増加に伴い、忙しくなりすぎて、結果的に段々手離れしていきました。また、その間にメンバーがフィットしていき、お任せできることも増えていきました。
法務マターの認知の方法を変える
また、社員数が増え、チャンネル数や情報量が激増したことに伴って、slackをそれまでと同レベルで巡回すると際限がなくなってしまうため、slackの通知ワードを減らしたり、巡回のレベルも減らすことになりました(それまでの相談されやすい環境づくりのなかで、ある程度法務への信用度があがって、ちゃんと相談にきてくれるはずという想定もしつつ)。
他方で、全く認識していないプロジェクトが立ち上がるということを回避するため、プロジェクトチャンネルが立ち上がると、自動的に法務が追加されるZapierを組みました。
他方で、相談漏れを防ぐために、どういうときに法務に相談するのがよいのかをテーマにした研修をやるようになりました。
相談フローを変える
それまでは、法務への相談は、法務のグループメンションをつければ、どのチャンネルでもOKというルールにしていましたが、案件増加に伴う漏れ防止や、法務内での配点のために、slackワークフローを使い、スプレッドシートと法務の鍵チャンネルに相談内容を飛ばすスタイルに切り替えました。
ただし、フローにのっていない場合、受け付けないということまではしていません(促すためのbotはZapierで組んでおり、個別に促しもしています)。また、気軽に聞くためのチャンネル(聞く必要があるかわからないし、優先度は高くない相談用)を残し、そこは、グループメンション宛で相談するスタイルとしています。
また、slackワークフローで生成したスプレッドシートに相談内容を飛ばし、担当部署と共有することで、過去相談をお互いが確認できるようなしくみ作りなども試みています。
事務的作業の自動化
また、定期的なMTGの通知や議事録やファイルの格納なども、以下の記事のとおり、slackやzapierを使って、すすめています。
slackbotを使って、「NDA雛形」と入力すると、NDA雛形のファイルへのリンクが表示されるような設定もしています。
法改正情報の動きの把握
また、法改正の動きを把握するために関連省庁のRSSを取得してslackアプリのRSSで法改正情報チャンネルに流したり、Twitter、メーリス、Inoreaderを使った各種ブログ情報の取得などを通じて、情報のキャッチアップ、関連部署へのフィードバックも行っています。
3 最後に
今後も、工数削減やフェーズの変化に応じたリスクマネジメントのために、変化をさせていく部分などもあろうかと思います。
ほかにもさまざまな工夫の仕方があるかと思いますので、情報交換いただける方は、ぜひ、コメント欄や下部のクリエイターへのお問合せからご連絡いただければと思います。