ぼくの好きなボブ・ディランのくよくよ10曲
ぼくにとって生きていて都度回遊し戻ってくる場所として、ボブ・ディランというミュージシャンがいまして。
昨年来日公演をした際にその敬愛具合をnoteに書いたのですが、今回は自分なりの角度で好きな10曲をリストアップしてみようと思います。
世を切る初期のプロテストソングもいいのですが、やはりその「くよくよ」を綺麗に描く姿勢が好きなもんで、その辺が中心になると思います。
また、ディランがつくる独特のメロディセンスも最高です。
https://note.com/kentiefunk/n/n00ae137a0a8a
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1.Key West (Philosopher Pirate) (2020年)
現在最新スタジオアルバムRough and Rowdy Waysのクロージングナンバー。
この世ではないムードのサウンドから何かをかんじる、アメリカ最南端の島キーウェスト、それは楽園か天国なのかもしれない。
現在から過去を振り返りつつ、先をみている様な歌詞も素晴らしい。
2.Idiot Wind (1976年)
名作Blood on the Tracksから。怒りかそれとも叫びか、冷静ながらも激しい歌の素晴らしさ、ツインドラムと印象的なオルガンが心にグッときてたまらない。
歌詞を見ると何かへの苛立ちを読み取れるけど、相変わらず難解。
けれども
「愚かな風が君が歯を動かす度に吹きつける 君は愚か者さ まだ息の仕方を知ってるだけでも奇跡さ」
というサビは強烈だが最後のサビでは「僕らは愚か者」と同情を歌う。
3.Tight Connection to My Heart(1985年)
六本木あたりで東京ロケをしたMVがバブリーで最高にナウいナンバー。
倍賞美津子さんに助演賞あげてください、すごくいいです。ディランの踊りも似合ってなくてとても良いです!
なんだかYMOを感じるシンセサイザーサウンドと80年代的な録音やサウンドとボブ・ディランの食い合わせたまらんのです。
60年代からやってきたミュージシャン不遇の時代。
歌の内容は別れた恋人を「誰か俺の恋人を見たかい?」をくよくよ歌っております。
4.Don't Think Twice, It's All Right(1963年)
くよくよ代表作にして「くよくよするなよ」という邦題も掲げられた名曲。
恋人のスーズさんがイタリア留学で別れることになったディランさん、強がりながらくよくよ歌います。
全てがくよくよしている、そしてここからキャリアを通じてしばらくくよくよし続けるんです。
5.One Too Many Mornings(1964年)
映像はのちのThe Bandと回った1966年のUKツアーから。
スタジオバージョンは弾き語りですが、このツアーでのバンドアレンジのロック感は最高です。
なんと言ってもこの曲もくよくよしております。
「きみの立場なら君が正しい ぼくの立場ならぼくは正しい」
3番のこの歌詞につきます。
6.Most Likely You Go Your Way (And I'll Go Mine)(1966年)
1966年のBlond On Blondに収録されている曲ですが、2023年にリリースされたShadow Kingdomというスタジオライブ盤でのテイクが良いのです。
なんか「我が道を行くぜ!」な感じですが、フラれたから強がっているところにくよくよを感じて良いのです。
7.Sara(1976年)
ローリング・サンダー・レビューという長期に渡るツアーに出た1975、6年のディラン、ツアー前に録音した「Desire」のクロージングナンバーです。
なぜかKISSを意識して白塗りをしたりしてるところがかっこいいのですが、歌っている内容は離婚しそうな当時の奥さんサラさんへ「捨てないで、行かないで」と歌っております。離婚しちゃうんですが。
スカーレット・リヴェラのバイオリンや、ジギー・スターダストの時期のデヴィッド・ボウイでギターを弾いていたミック・ロンソンのフィールが素晴らしいですね。
8.It's All Over Now, Baby Blue(1965年)
別れの歌です。二人の関係が終わって「もう終わり」と歌いその後の相手のパートナーも出てきて毒づくタイプのくよくよ。
やっぱりスーズさんのことを歌っているのでしょうか?
映像は、ニューポート・フォークフェスティバルでの映像。
この日エレクトリックギターを抱えロックバンドスタイルでこのフォークフェスに参加したディラン、3曲演奏したところでブーイングを受け演奏終了。ディランのロック転向という歴史の瞬間だったのだが当時のフォークファンには受け入れられなかった。アコースティック・ギターに持ち替えこの歌を歌うディランは過去を終わらせる様に「It's All Over Now」と歌う。
9.Like A Rolling Stone(1965年)
最大の代表曲にしてロックを一歩文学や芸術へ押し進めた曲であるこの曲。
「あんた、偉そうにしてるけど、いつか痛い目にあうぜ、どんな気持ちか解るのかよ、家がなかったりその辺に転がってる石みたいになるってことはよ!」と怒ってるわけです。
なんですが、このころイーディ・セジウィックさんという裕福なモデルさんと付き合っていたディラン。
二人の仲がいい時期は「Just Like A Woman」なんて名曲も誕生していますが、多分ディラン、フラれたんじゃないでしょうか?じゃなきゃこんなに悪く言うか?って思います。
これも66年のUKツアーのライブ映像です。ぼくにはSex Pistolsなんかと同じトゲと力を感じます。
10.Visions Of Johanna (1966年)
これぞ最強のくよくよソングです。文学的であり詩的である歌詞は難解だけど深読みすることで見えてくるその情けなさとぐずぐず具合最強です。流石ノーベル文学賞。ノーベルくよくよ賞もあげてください。
スーズさんにフラれてからイーディさんとも付き合ったりしていたのですが、同じフォークシンガーであるジョーン・バエズさんのことを歌っているっぽいです。ジョーンさんは、ディランの曲も歌っているのですが、ディランのフォークシンガーとしても先輩で、ミューズの様な存在だったんじゃないかと。
それでこの曲のジョアンナってジョーン・バエズのことじゃない?って話です。
「どんな時もだれといてもジョアンナの視点がある」って「何しててもジョーンのことが頭から離れられん!」って歌っとる。
ジョアンナってジョーンでありヨハネで、使徒ヨハネはイエスの左にいたりしてそれが歌詞にかかっていたり、深読みはいくらでもできるけど、自分ことと聖書を組み合わせたりしながら、くよくよしている名作です。
くよくよ視点の10曲でした。
ディランですからそれが全てではないのですが、この視点で聴いてみると違った印象に音楽が聴こえるかもしれませんよ!