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「40代後半からの美容外科転職は無謀?」— 技術・体力・メンタルの壁

2月6日の朝、出張先のホテルのサウナで何気なくテレビをつけると、NHKの情報番組「あさイチ」で美容医療トラブルが特集されていました。その中で「直美(ちょくび)」の問題も取り上げられていました。

こういった報道には賛否があるかもしれませんが、信頼できる情報をしっかりとリサーチし、美容医療を慎重に選ぶ人が増えるきっかけになればいいなと思います。

さて僕自身は、「直美」とは正反対の「遅すぎる美容外科」という、かなりのマイノリティな立ち位置にいます。今回は、そんな僕が感じる40代後半での美容外科転職の難しさについて書いてみました。

1. 技術的に求められるレベルの高さと結果へのコミット

美容外科では技術力が求められるのは当然ですが、それ以上に患者の満足度に直結する結果へのコミットが重要になります。

確かに、40代後半での転職ともなれば、若いドクターよりも外科的な経験や技術を持っている可能性は高いです。特定の手術に関しては周囲を凌駕することもあるかもしれません。

しかし、美容外科は病気を治す医療とは違い、患者の理想に応える仕事です。自分の技術に自信があっても、それが必ずしも患者にとっての正解ではないこともあります。

患者が求める結果を正しくくみ取り、それを実現し、さらに納得して喜んでもらう。このプロセスが非常に重要であり、一般の外科からの転職者はここでギャップを感じることが多いと思います。

2. 体力面の問題

40代後半になれば、多くの人が体力の衰えを自覚し始めます。特に脂肪吸引は体力を要する手術であり、外科的なタフさが求められます。

僕の所属するクリニックでは、58歳のレジェンドを筆頭に50代以上の医師も数人いますが、それでもタフでなければ続きません。

また、美容外科は出張が多いです。保険診療での出張といえば学会や講演が主ですが、美容外科では分院や地方での施術があり、頻繁に移動します。移動距離にもよりますが、シンプルに疲れます。

僕自身は、出張先で仕事外の時間も全力で楽しむ工夫をしているので比較的前向きに捉えています。しかし、移動の多さや慣れない土地での生活はストレスになりやすく、家族との時間が減ることや生活リズムが崩れるなど、一般的なデメリットも多いです。これを苦痛に感じる人にとっては厳しい環境だと思います。

さらに、美容外科では病気ができないというプレッシャーがあります。休む=売上ゼロにつながるため、健康管理はシビアです。

3. そもそも指導環境があるのか

幸い、僕が所属するクリニックでは、超がつくほど丁寧な指導を受けることができています。しかし、業界全体を見れば、このような環境はむしろ例外的です。

中には「一度もやったことがない」「見たこともない」手術を、出勤初日に「はい、これやっといて」と任されるクリニックもあると聞きます。

前職の経験が活きようが活きまいが関係なく、プライドを捨てて一から教えを請う覚悟が必要です。指導医が自分より若いことも珍しくありません。

ここで「年下には教わるのはちょっと・・・」と思う人は、美容外科転職は難しいでしょう。

4. セルフブランディングの必要性

僕自身はSNSの発信が決して得意ではありませんし、今も課題です。しかし、現在はSNSでの発信がますます重要視される時代になっています。

クリニックも次第にSNSでの露出を重視するようになり、自分自身のブランディングが求められるようになっています。

たまたま聞いた話では、知人が属する準大手のクリニックでは、集客はクリニック側で全て行い、個人のSNS運用は不要と聞きましたが、正直なところ時代に合わないと感じます。

自分の価値を高め、求められる存在になることが必要だと思います。

美容外科医として名を上げるには、単に手術が上手いだけでは足りません。SNSでの発信、ブランディング、自己プロデュース力が求められます。

術者としての技術はもちろん、マーケティングの視点も必要になってきます。

まとめ

40代後半で美容外科に転職するのは、正直なところ、簡単ではありません。

技術、体力、メンタル、指導環境、セルフブランディングなど、求められる要素が多岐にわたり、かなりの覚悟が必要です。

それでも、この業界に挑戦したい人はいるでしょう。決して遅すぎるわけではありません。ただ、しっかりと準備を整え、折れない心を持ち、そして何よりも「楽しむこと」を大切にしてください。

楽しめる人にとっては、刺激的でやりがいのある仕事でもあると思います。

僕の経験がお役に立つなら、いつでもご相談ください。


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