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ゴッホの古靴

この絵は1886年に描かれた
「ひまわり」の連作や「星月夜」などの有名な絵が描かれる前、アルルに行く前、パリ時代に描かれた絵です

ゴッホは「人のためになりたい」と強く願う、ちょっと困った性格の持ち主で、過酷な炭鉱労働で働く人のためになろうと慈善活動をしていた時に履いていた靴がモチーフだという。

牧師になろうと神学校を受験するけれど失敗し、別の福音伝道学校で学ぶために購入した靴を(福音伝道学校もドロップアウトし)1878年の12月に勝手に(公式的な任命がなく)ベルギー南部のボリナージュの鉱山へ赴き、過酷な労働条件の中で働く労働者や病人の世話などの慈善活動していた。

ゴッホは1886年に絵を学ぶためにパリを訪れ、そこでこの絵を描いたとされる。慈善活動で歩き回った靴、自分の活動の証として描いたのではないだろうか。

荒々しく大胆な筆触だけど、皮が剥げ擦り切れた古びた靴の草臥れた状態や、過酷な状況下で使用され続けたことがしっかりと伝ってくる画面は、ゴッホのこのモチーフに対する写実的姿勢が良くわかります。しかも光の反射がその質感を表現していて、高度な技術をもっていることが分かります
この絵は、真摯に絵に向かい、人々を助けたいと願う、ひとりの画家の自画像と考えられるでしょう。

ただ、これを残しているということは、「俺って献身的に炭鉱を回ったんだぜ」と猛烈アピールしているということで(歴史の資料としてはありがたいけれど)やっぱり本人とつきあうのは疲れそう。

後世から歴史として見るならば、これは正にゴッホが炭鉱を回った軌跡であり、ゴッホのアピールポイントであることを理解しなくてはいけない。

その上でこの絵をみる。
・いいね。雰囲気でているね。
・自画像だね。
・でもアピールが重いね    という感想を持つ。

この絵の後ゴッホはアルルに向かい、ゴーギャンと同棲して、耳を切って、またパリに戻って、オーヴェル=シュル=オワーズに行って、そうして亡くなる(超絶まとめ)

この絵を見ていると、ウザいゴッホの幻影を感じつつも、真摯に絵や宗教に向き合ったゴッホを思い浮かべ、同じ時間を過ごしたいと思うような作品です。

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