金沢は小京都ではない?
金沢は、2008年に京都の名を冠するために加盟が必要な、「全国京都会議」から退会していた。
「全国京都会議」では、以下の3つのうち一つ以上当てはまる事を基準に、加盟を認めている。
①京都に似た自然景観、町並み、たたずまいがある
②京都と歴史的なつながりがある
③伝統的な産業、芸能がある
勿論、金沢=小京都というイメージは強く、私自身もそのイメージを確認したいと思っていたのだが、そんな情報だけは知っていたので、どんな変化があったかを見るためには、ちゃんと時間をかけて訪れたいと考えていた。
そして・・・
その思いは、生活環境の変化によってウィークデイに自由な時間が取りやすくなってやっと、実現できたワケだ。
街並みを歩いてみると、確かに小京都なイメージは残っている。
だけど、そもそも町の造りが明らかに違うし、建物も京都の街並みを知っている自分から見たら、細かい所でかなり違う事がわかった。
京都の街並みでよく見る「犬矢来」が見当たらない。
いや家を囲う柵の「駒寄せ」だって無い。
あ・・「うだつ」も無いか。
だけど格子はあるし、「大戸・くぐり戸」がある家もあるね。
雪が降る地域ならではの建築様式なのだろう。
考えてみれば「犬矢来」や「駒寄せ」は雪かきの邪魔になるし、あの敷地の角に置く「いけず石」だって余計なトラブルを生みそうだ。
そんなどうでも良い感想を持ちつつ、「重要伝統的建造物群保存地区」に分類されている「茶屋町」を散策したみた。
江戸時代からの町並みが残っている「茶屋町」は、既に廃業している住民からの反対で「伝統的建造物群保存地区」の指定ができず、1980年代に大きな茶屋が相次いで売りに出る事態となって、金沢経済同友会が動いて老舗料亭等が取得して保存される事になったと聞く。
最初に訪れたのは2001年に国の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定された「東山ひがし茶屋町地区」。
京都風ではあるが、この町並みを保全するために道路を石畳化し、融雪装置を導入、ガス灯の新設、無電柱化を行政が行い、住民としても住みやすい環境に進化している。
昔からガス灯があったと感じる自然さはあっても、江戸時代に西洋式ガス灯があったはずも無く、横浜在住故に違和感を感じないだけで、伝統的な町並みにどうなのか?って思わなくも無い。
ただこのガス灯、茶屋町付近の遊歩道にも設置されていて、金沢のブランド化の中で統一感を出すイメージがあったのでは?と邪推したりもした。
伝統的な町並みを保存する事は、観光資源として大きな意味を持つ。
円安のおかげでインバウンドが増えているが、彼らの目的にある「日本らしさ」を味わうにはこんな光景が大事になる、のは「言わずもがな」ではある。
小京都なイメージを感じるのは、着物レンタルで和服を楽しむ観光客が多くいること。そしてそんなカップルは、インバウンドのモデルにされたりもする。
「重要伝統的建造物群保存地区」にある建築物の多くは、宿屋、飲食店、和菓子屋、酒屋など様々だが、「加賀鳶」で知られる「福光屋」の直営ショップ兼バー「福光屋ひがし」があって、思わず飛び込んでしまった。
北陸と言えば、やっぱり日本酒。
美味しい水と米、冬の厳しい寒さも相まって能登杜氏が腕を振るう酒屋は多く、有名なところで言えば「天狗舞」「手取川」「白菊」「宗玄」あたりになるだろう。
福光屋は「黒帯」という酒が好きで知った酒屋だが、その古酒が美味かったが中々横浜では見つからず、スーパーでは当たり前にあった「加賀鳶」が福光屋の物だと知って、何故「黒帯」が無い・・と文句を良いそうになったっけ。
京都とは違うと感じるものは、色。
朱、鼠色、焦げ茶、生成りの板、白い漆喰・・・
そして、暖簾や門前に飾る草花も個性がよく出ている。
今回は、15−35と50、70−200の3本セットに35ミリのマクロを加えて写真を撮った。さすがに大三元とEF50mmではレベル差があるけど、その割りに善戦していると再確認。
汎用のレンズでも単焦点だとかなり良い写真が撮れるのが、キヤノンのあざとさと言うべきか。
横浜中華街もそうだけど、ここまでキッチリと作られていると、一種のテーマパークに来ているような気分にさせられる。
でもそれは、今の時代の観光の形なのだろう。
そして、その形を目一杯楽しむ方が利口、という時代なのだろう。
それにしても、初めて訪れる場所は撮ってて面白い。
非日常な世界を見ているのだから当たり前だけど、小京都の名称を捨てて目指す国際都市金沢としての歩みは、様々な場所で様々な姿で見つけられた。
でも、そこに住む地域住民向けの昔ながら店舗も魅力的。
インバウンドが古い独特な姿に惹かれるのだろうけど、カメラを持って入ってくる観光客にNoを出すプレートが、オーバーツーリズム問題を浮き彫りにしていた。
今回の宿は駅前のホテルだが、茶屋町にある宿屋を選ぶ道もあったな・・と思う。
そして、そこにある飲食店には金沢ならではのモノがあるわけで、利便性に負ける自分を叱りたくもなった。
ただ、観光客用の店も多くあって、知らないとコストパフォーマンスが悪化する事は容易に想像できる。
だからまぁ、今回は街の風景を切り取りつつ非日常を楽しむ事で、満足です。