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造形の面白さに惹かれることもある
映像の仕事で一番最初に覚えるのは、収まりの良さ。
簡単に言っちゃえば構図としての安定感と自分の好みとのバランスなのだが、構図ばっかり気にしていると、自分が面白いと思った物を撮り損なう事もある。
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コマーシャルで無い限り題材も構図も自由なので、まずは何を見せたいかという一番大事な事に集中し、ピント合わせと被写界深度を考え多少ルーズなサイズでもとにかく撮る、という事が大事だと考えている。
フィルム時代は(特に35ミリサイズ)トリミングをすると画質が落ちるので、フレーミングはとても重要だった。
ノートリミングで構図を決めて撮るのが当たり前で、それがプロとしての最低条件でもあったけど、即時性に欠ける事からシャッターチャンスの予測能力も問われるので、カメラマンは職人に近い職種でもあったと思う。
だが今は、中判フィルムカメラ並みの解像力を持つ35ミリフルサイズセンサーカメラもアマチュアが使える時代だから、フレーミングに自信の無い人はルーズなサイズで撮影して後でトリミングする事を勧めたいのだ。
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この手の写真、特に造形の面白さを撮る場合は、本来なら三脚を使ってちゃんと正対して露光もしっかり測って、ジックリと撮りたいもの。
だが、アップした2枚の写真は、たまたま歩いていてその造形に惹かれて手持ちで撮ったもので、瞬時にカッチリとセッティングできて撮ったものじゃない。
造形の面白さは街撮りしているとどこにでもあるので、ふっと見てカッチリと構図を決めて・・・なんてやっていると、ピンときた感動に似た感情がどんどん薄れ、面白さを感じられなくなって撮るのをやめる、なんて事にもなってしまいがち。
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それじゃ、街撮りを楽しむ意味も無いから、私はパッと撮って現像でパースの調整等も加えて補完し、見せたい形に仕上げるのがパターンになった。
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パースの調整は難しく、ちゃんと垂直・水平を出すとリアルさを失う事に繋がる。
自分にとってのリアルは自分の視界だが、広角系のレンズだと自分のイメージよりかなり違う形になりやすいので、リアルに見た光景を「見て欲しい形」に変換するのが良いと思っている。(勿論、仕事の場合はクライアントの好みに任せるが)
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造形は造形で面白い。
構図として配置するよりも、造形その物をわかりやすく見せる方が、自分が感じた面白さを伝えやすいと考える。
造形の一部を切り取ると、それが何だかわからない別の面白さもあるけど、「それはそれ」「これはこれ」という感じで、撮影に出ると何枚かは「造形その物」を撮ってしまう魅力を、感じている。