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健太しゃちょう 弾丸漫遊記 前編(ニセコ・クッチャン町編)


まんゆう
【漫遊】1.《名・ス自》気のむくままに、諸方をまわって遊ぶこと。 「諸国を―する」

 3月6日、7日。北海道を訪れた。農業で志を同じくする同志(ま、お友達かな)を求めて、旅程わずか36時間の弾丸漫遊記である。

3月6日
【LCC編】
 朝4時起床。最近は長く寝られなくなり4時起きがデイリーになっている。オレも年をとったなぁ。大学生の頃は連続48時間寝た記録も持っているのに。
 今回は人生で初めてのLCC(格安航空)利用の為、成田発である。成田は久々だよ。若干のアウェイ感がある。羽田ラブ。
 様子が分からない為に早め早めを心がける。
 眠る5歳の娘を起こさないように、足音を忍ばせる。暗いので、娘の枕元で散乱したなにかを「パキッ」と踏んで音を立てるのも毎度のことである。
 嫁さんに見送られて自車にて出発。東名高速を快走して首都圏へと向かう。

 早く出た甲斐もあり、首都高も混雑を免れてパスする。我ながら段取りの良さに関心する。 
 が、千葉に入り酒々井のあたりで俄かに車列が混み合い始める。ここではまだ不安も感じていない。
「事故渋滞やむなし。想定済みのことよ」と余裕シャクシャクである。
 ところでオイラは何時発のどの会社の便に乗るのだっけ?

 この辺りで段取りの悪さが露見し始め(早い)、本当のところ何時に成田に入れば良いのかもよく分かっていない事実に思い至る。

 「たぶん8:00くらいに入っておけばなんとかなるんじゃね?」

 ぴくりとも動かぬ車列にやや焦りを感じ、予約フォームを「ほぼ始めて確認」する。

「ほう。8:45発、ラッキースプリングか。・・・。」
時計7:00。
なんつーか。これ、間に合うの?(冷や汗)

 大破した車両を右目に、左目には別のたまさか重なった故障車を見て、交通のボトルネックをようやく通過。
「ダブルかね(苦笑)」
まあ、そういうこともあるのだな。

 平静を保ちつつ成田周辺に着。お次は駐車場探しだ。
 またこの位置関係の分かりにくいことよ!
 元々看板を一瞬で理解する能力が、私は低いのである。
 Google先生はここを右折しろと言う。
 しかしどう見ても右折可能な箇所には見えないではないか!
 仕方ない。もう一周まわるか・・・。時間やばいな。(1周15分)
 成田空港周遊2周目突入。気分はさながらル・マン耐久である。

 分からん!どこから駐車場に入れと言うのだ!Googleマップ上には、燦然と「第三駐車場」がマーキングされていと言うのに!その周囲をうろつき周り、入庫を拒み続けられる私。

 結局3周目で、およそ目立つ看板も指示もない、ひっそりとした入り口からスリリングに入庫に成功。「ウソだろ?こんな目立たないところが、正規駐車場のワケがないだろ」
 羽田のイメージを持ち込んだ私が間違っているのである。恐るべし成田空港。
 そんな呟きを反芻するヒマもなく、時間は迫るので、荷物抱えて走るのであった。

 さて。で、ラッキースプリングってどこよ?(爆)
 第三ターミナルなのは知っとるが。

 私が止めた第三駐車場は何故だか第三ターミナルとは全く逆の、第一ターミナルのほうであったこと、大型地図が無情に示してくれた。同じ「第三」、なのに。番号、とターミナル、連動してないんかーい!
 そんなワナ、仕掛けんでエエワイ。
 
 また、オレ走るのね。

 およそ500m以上1000m未満を大荷物抱えて走り、まさかの汗まみれになり、ラッキースプリングチェックインカウンターを動物的勘で探し当てる。もはや理性や知性の世界ではない。
 そして行列にならぶ。既に8:15。
 予想外の長い行列に軽い絶望感と共に身を委ね、ケータイを取り出す。
 「LCC 遅れ」で検索。明るく、現状を肯定し、私を励ましてくれる心強いメッセージを探す。
 ヒット内容は簡潔なものである。
「チェックイン時間に間に合わなかったら諦めてちょーだい。親切な対応はありませんよ。だって格安だもん」
とのこと。
ガク。ガックリ。

 イヤイヤまて。

俺は3時にはニセコに居らにゃならんのよ!

 ラッキースプリングに振り替え(もちろん有料)を依頼するが、次の便は 12:40。
 はい、間に合いませーん。ちなみにニセコまで新千歳からレンタカーで3時間はかかるのだ。セミナーは15:00から。およそ小学生でも時間に間に合わないことが理解できるだろう。

 「じゃあ他社さん、当たってみたらどうですか?ま、乗れるか保証しませんけど」

 はいはいっ、そうするよー!

 で、最後のトドメの一言要る?!と、心の中で小さく毒づきなが走ってジェットスターの列に並ぶのであった。また並ぶんかーい!

 もうこうなるとね。悪い想像するのですよ。
 セミナー参加できず、わざわざ懇親会だけ静岡から参加しにきた人として冷ややかな目で見られる、の図とか。
 もう諦めちゃって千葉で美味いもんでも食って帰るか、でも嫁さんになんて言おうか困窮する、の図とか。
 
 待て待て。あまりネガティブになるな。ほら、あるじゃないか、ジェットスター10:15の便が。まるでオイラを優しく迎えて微笑んでいるようじゃないか。

 ジェットスターのお姉さん。
 新千歳に行きたいのですか?お席取れますよ。10:15に空きがありますね。にこっ。
 微笑むお姉さんが、ここ一年で出会った1番の美人さんに見えたとさ。
 ああ、女神さま。
 またここで大枚1.7万払ったことは、嫁には絶対の秘密である。
「ねー、旦那さんさー。お金大変だったねー」なんて、軽々しくわたしの嫁にこの一件の話題を振っては、絶対にいけないのである。頼みますよ!

【新千歳からの道】
 全く。ラッキースプリングの対応ももう少しなんとかならんものなのか。カインドネスのかけらもない。しかし、これが格安航空なのね。文句言うまい。嫌なら使うな、ですね。
 11時を過ぎ、小腹も空いた。
 飯と言えば、朝4時にチーズバーガー(セブンイレブン)をかじったキリなのだ。
 

新千歳に降り立てばそこは雪国。春はまだ少し先のようだ

この後はレンタカーでニセコに移動だ。レンタカー会社にも予定より遅れての到着だ。レンタカー屋をやきもきさせるのも上手くない。
 ここは一つレンタカーを借りてから、道すがら地元メシを堪能するとしようじゃないか。弾丸の旅とはいえ、食事こそ旅の醍醐味であることよ。

 レンタカー屋に着く。
 ピッカピカのブルーのフィット、HONDA社製。フルタイム4WD、スタッドレス標準装備、見た感じ新車並みの姿に気を良くする私。
 まさかノーマルとか、2WDとかだったら、おまけにFRとかだったら嫌だな、と危惧していたのだ。(そんな拷問仕様は、当然北海道ではありえないのだった)
 もうこの辺本当テキトーである。自分で予約したのだし、調べればわかると言うのにね。
 ズボラっていけませんね。反省。

 さあ、ナビをニセコに設定して出発して、軽やかに出発である。

 走行距離約100キロ。所要時間2時間半、高速でもなく、一般道の旅である。
 まさかこの時点で飯食う場所に困るとは思いませんでした。北海道ナメてました。


遥か彼方までまっすぐ伸びる道

 ドライブそのものは快調で、かつ快適であった。
 ともかく景色が気持ち良い。
 快晴とまではいかないが、薄曇り。
 とにかくね、自然の風景が本州とは違うのよね。道の作りも。並木一つも。山肌の姿も、慣れ親しんだものとはどこか趣が違う。
 対向車もなく、先行車も後続車もなく、ひたすらブルーのフィットを地平線に向けてかっ飛ばすのである。
「チョー気持ちイー!」
脳内発声のつもりであったが、知らずにリアル発声している。しかもかなりの大声。
 まあ、私も東名高速の渋滞で同じことはしないけども、はたから見たら異様なオジサンよね。
 でも、とにかく気持ち良いドライブだったのよ!

 さて、ドライブが1時間を過ぎたあたりで、懸念が現実になる。
 
 飲食店が一軒もない・・・。
 まあ、言うなれば民家もない。
 かてて加えて、そもそも人の暮らしの匂いがない。

 なんと雄大なことか、北海道よ。
 まさに大自然。
 人という存在、営みのなんとちっぽけなことか。

 イヤ、いやいや。俺はただ、腹が減ったのよ!
 ごめんなさい。下調べしなくて。こう言うものなんですね、北海道!
 本州の常識を持ち込んでごめんなさい。猛省してます。

 結局、新千歳市街を出てから倶知安(クッチャン)までの100キロの一般道。間に飯を食えそうな施設は「1軒のみ」。
その名も「きのこ王国」。


王国なのである。つまり王がいらっしゃるのだろう。どちらに鎮座召されているのか。

 なんと言うか、キノコ生産をしつつ、旅行者向けの観光レストランを兼ねている。同時にキノコ狩りもできるという、すぐれもののキングダムだ。

 そうか。
 キノコ狩りか。
 ふむふむ。
 菌床栽培ね・・・。

 まあ、なんと言うか、菌床栽培ならどこで食べても大差ないんじゃないかと、大変大人げのない意見が喉元まででかかるのですが、そこは私は大人なのです。46歳なのです。
「まこと、ありがたいことよ」
と、棒読みで呟きながらノレンを、くぐるのであった。

注文はキノコ天丼。名物キノコ汁付き。
まあ、ね。はい。
菌床キノコ特有のクセのないお味でけっこうでございました。

 

キノコオンリーはあまりにヘルシーにすぎるのではないか。むしろ体を気遣い唐揚げを追加

なんかこう、イクラやウニの頭になっていたのを切り替えるのが大変で。
 もう、仕方ないので孤独のグルメ、井之頭五郎さんに脳内でなりきり、呟きながらキノコ飯を楽しんだのでした。
「いいぞいいぞー。美味いじゃないかー。」

 でも言っとくぞ。キノコ汁だけはアツアツで出してくれ!頼むぞ!うすらぬるいキノコ汁は流石の五郎さんもダンマリだったよ!

 結論としては美味しくいただき、逆に熱すぎる天ぷら、ジューシーなキノコで口内ヤケドをしたのでした。口内上顎の皮質がペロンです。

 腹は十二分に満たされた。逆に満腹で居眠りをしないように注意しながら現地にHONDAフィットを向ける。

 おっと、ちょっとゆっくりし過ぎたか。
 Google先生によれば30分の時間余裕。
 HONDAナビは30分の遅刻を知らせてくる。
なんじゃこりゃ。どっちを信じればええねん!
 
 ともあれ一路、倶知安(クッチャン)の集会センターを目指すのであった。朝の遅刻・乗り遅れフラッシュバックに苛まれながらである。ホントに間に合うのか、オレ。
ビューン。

中編へ続く。


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