「空想やイメージを使う遊びは、記憶力や発想力を高める」

最近、教育現場で『学生の思考力を高めよう』という声が高まってきており、なんだか今までの教育は思考力を高めていなかったかのようですが、実はそうでもないんじゃないかな…と思います。

心理学においては、思考には「収束的思考」と「拡散的思考」の二種類があるとされます(これ以外の分け方もあります)

「収束的思考」はただ一つの正解を見つけようとする思考です。
それに対して、
「拡散的思考」は、なるべくたくさんの選択肢を考えようとする思考です。

これまでの、小学校から高校におけるテストは、ただ一つの正解を求めるものですから、暗記するための記憶力と、収束的思考を鍛えているのではないかと言われています。

従って、最近の教育現場での「思考力を高めよう」というときの「思考力」は収束的思考ではなく、発散的思考のことだと思われます。

ところで、最近になって、発散的思考が求められるようになったのは、

①不確実性の高い現代においては、さまざまな予想外のことが起こり得るので、いくつかの選択肢を用意しておき『プランAがだめなら、プランB、それでもだめならプランC…』と柔軟に対応できる力を養うため

②これまでの経験や知識では対処できない事態になったときに、全く新しい対応策を考えるため

③付加価値の高い商品を生み出すためのアイデアを出すため

等々、です。

そこで、そういった時代のニーズに合わせて、心理学者も、さまざまな発散的思考を測るテストを開発しました。

そういったテストでは、『なるべくたくさんいろいろ考えた方が点数が高くなる問題』、例えば、『制限時間内に、ピアノの全く新しい使い方をなるべく多く考えて答える』というような問題が出てきます。

この問いの解答例としては

①漬物石にする(ピアノの足の下に漬物桶をおいて漬物を作ると、ピアノの音の振動が伝わって美味しくなる)
②家のカギにする(玄関のナンバーキーと連動させて、正しく曲を弾かないと玄関が開かないようにする)
③びっくり箱にする(鍵盤の中の、ある一つのキーを押すとピエロが飛び出すので、みんなでドキドキしながら交代で弾いて楽しむ)
④水槽にする(透明なガラスでピアノを作り、水を入れて熱帯魚を泳がせる)

というものがあります。こういった回答を限時間内になるべくたくさん答えさせるのです。

すると、不思議なことが分かりました。

そうやって測られた『発散的思考』の点数が高い学生ほど、学校の試験のテストの点数も高かったのです(ゲッツェルス・ジャクソン現象)。

しかも、その統計学的な相関は、従来の知能テストと学力との間の相関よりも高かったそうです。

記憶力と収束的思考を測っていると思われる学校のテストの点数と、発散的思考を測っているとされるテストの点数に高い相関があるのは何故か?

発散的思考についての研究によって、発散的思考を行うには、その材料としての豊富な知識、すなわち記憶が必要であり、暗記中心の学校教育は、発散的思考、すなわち、ひらめく力を低めるどころか高めることが示されました。

また、収束的思考と発散的思考には、共通点があることも分かってきました。

例えば、収束的思考においては、複数ある正解の候補を、ただ一つの正解に絞り込むための『制約条件』をうまく使うことが大事ですが、発散的思考においても、全く制約条件のない『完全に自由な状態』よりも、いくつかの制約条件があった方が、アイデアが出やすいのです。

例えば、作曲家に対して『使える音も演奏方法や演奏者も自由自在、思うままです』といって曲を作ってもらおうとすると、考えなくてはならないことが無限に広がってしまって、うまく作れなくなります。

また、ただ一つの正解を求める学校のテストにおいても、収束的思考で解を絞り込む前に、発散的思考で、正解の可能性のある解答案をいろいろ考えなくてはなりませんから、従来の学校の試験も発散的思考が必要です。

さらに、記憶の研究によって『新しく覚えたいことは、今持っている様々な記憶(特に自分に関係の深い記憶、自分の身体や、自分がよく知っている場所の記憶、等々)と、感情を揺さぶられる具体的なイメージを使って関連付けると、覚えやすい』ということが分かってきてます。

例えば、私の名前「竹下健太」を覚えようと思ったときは、例えば『自分の家の近くに実際にある薄暗い竹林の中に入っていくと、竹の下で「健康になるんだ!」と叫びながら腕立て伏せをしている太った男がいて、すごい怖かった』というイメージをすると、もう絶対忘れません。

こういったイメージにも発散的思考が大事です。また、上記のように記憶は発散的思考の材料を提供しますので、思考力と記憶力とイメージする力は、お互いを高め合う関係だったのです。

これまでの学校教育も捨てたものではないし、少し意識を変えるだけで、現代社会で求められる力も十分つけられるんじゃないかなぁと思います。

また、上記のように、記憶と発想の両方に、イメージが関わってますので、空想やイメージを使った遊びもとても大切だと思われます。

明るく楽しく元気良く、遊んで学んで働きましょう(*^^*)


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