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第六話 遺跡に潜む影
短剣を手にしたガルドは、その微かな光を見つめながら、刃の感触を確かめた。
「確かに、ただの短剣じゃなさそうだな。」
セラが静かに微笑む。
「魔法が込められているわ。この遺跡に残されたものなら、何かしらの意味があるはずよ。」
ガルドは短剣を鞘に納め、周囲を見渡した。先ほどの宝箱があった祭壇の周りには、古びた石板が並んでいる。
「この石板……何かの記録か?」
ガルドが石板の表面をなぞると、淡く文字が浮かび上がった。
セラが興味深そうに近づき、それを読もうとする。
「これは古代語ね。少し解読できるわ……。」
彼女の指が文字を追い、ゆっくりと意味を紡ぎ出す。
「『闇に触れる者、目覚めし時、封印は解かれん』……?」
ガルドは眉をひそめた。
「封印が解かれる? まさか、さっきの短剣が関係してるのか?」
セラは短剣を見つめ、微かに頷く。
「可能性はあるわ。でも、今は確かめようがない……。」
その時、奥の通路からかすかな気配を感じた。
「……誰かいるのか?」
ガルドは剣を構え、慎重に歩を進める。
セラも警戒しながら、魔力を練り始めた。
薄暗い通路の先、何かが蠢いている。
「気をつけて……ただの遺跡ではないわ。」
ガルドは静かに頷き、闇の中へと足を踏み入れた。
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通路を進むにつれ、周囲の温度が下がっていくのを感じた。
石壁に刻まれた文様が、かすかに光を放ち始める。
「これは……魔法の結界か?」
ガルドが呟くと、セラが壁を軽く叩いた。
「ええ、おそらくこの先に何かが封じられているのね。」
その言葉の直後、空間が揺らぎ、黒い霧が溢れ出した。
「くるぞ!」
ガルドは剣を構え、セラは即座に魔法陣を展開する。
霧の中から現れたのは、鎧をまとった骸骨のような影だった。
「アンデッドか……!」
剣を振り下ろすと、骸骨の甲冑が火花を散らしながら弾かれる。
「硬い……ただの骸骨じゃないな。」
セラが魔法を放つが、骸骨は素早く動き回り、攻撃をかわす。
「これは厄介ね……!」
ガルドは息を整え、一瞬の隙を狙う。
「だったら……どうだ!」
彼は短剣を抜き、魔力を込めて一気に突き刺した。
瞬間、短剣が淡く輝き、骸骨の体を貫いた。
「……効いたか?」
骸骨はしばらく動きを止めたが、次の瞬間、体が崩れ落ちた。
「やった……?」
セラが息をつきながら呟く。
ガルドは短剣を見つめ、その力を確信した。
「この短剣、やはり特別な力を持っているな。」
「ええ……でも、まだ終わりじゃない。」
セラが通路の奥を指さす。
「もっと先があるわ。」
ガルドは剣を握り直し、再び歩き始めた。
次なる試練が、彼らを待っていた。