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第八話 封印の崩壊
石像兵の巨体が震え、遺跡全体に重い振動が響いた。
「まだ動くのか……!」
ガルドは短剣を握り直し、素早く後方へ飛び退る。先ほどの一撃で確かにダメージを与えたはずだが、石像兵は完全には崩れなかった。
セラが鋭く息を吸い込み、魔力を練り上げる。
「ガルド、少し時間を稼いで!」
「了解!」
ガルドは低く構え、一気に距離を詰めた。石像兵の斧が振り下ろされる直前、彼はわずかに身を捻り、ギリギリでかわす。
斧が地面に激突し、石の床が砕ける。
「くそっ……!」
ガルドは剣を振るい、石像兵の腕に斬りかかる。しかし、その表面はまるで鋼のように硬く、剣が弾かれた。
(普通に攻撃しても通じねぇ……なら、核を狙うしかない!)
ガルドは目を凝らし、石像兵の胸部に刻まれた魔法陣を確認する。
「ここか……!」
短剣を逆手に持ち、狙いを定める。しかし、その瞬間、石像兵の目が鈍く光った。
「……ッ!」
強烈な衝撃波が放たれ、ガルドの体が宙を舞った。
「ガルド!」
セラが叫ぶ。
ガルドはすぐに体勢を整え、地面に着地する。しかし、衝撃で腕に痺れが走る。
「ちっ……厄介な防御機構を持ってやがるな。」
だが、ここで立ち止まっている暇はない。
「セラ、準備はできたか!」
「あと少し……!」
セラの足元に魔法陣が広がり、紫色の光が脈動する。彼女は両手をかざし、魔力を一点に集中させていた。
「いいわ、できた!」
「よし、やるぞ!」
ガルドは一気に駆け出し、石像兵の懐へ飛び込んだ。
「これで終わりだ!」
彼が短剣を振りかざした瞬間、セラの魔法が炸裂した。
「雷槍(サンダーランス)!」
強烈な雷撃が石像兵の胸部に直撃する。
ガルドはその一瞬の隙を突き、短剣を深く突き立てた。
刹那、遺跡全体が激しく揺れた。
石像兵の体に亀裂が走り、内部から光が漏れ出す。
「うおおおっ……!」
ガルドは全力で短剣を押し込み、最後の一撃を加えた。
石像兵が低く唸るような音を発し、ついに崩れ落ちた。
「……終わったか?」
粉塵の中、ガルドは荒い息をつきながら剣を納めた。
セラもまた、魔力の余波に肩で息をしている。
「ええ……でも、何か変よ。」
セラが遺跡の奥を指さした。
そこには、新たに開かれた通路があった。
「……やっぱり、ここはただの遺跡じゃないな。」
ガルドは短剣を確認しながら、静かに呟いた。
「この奥に、何が待っているのかしら。」
「行くしかねぇな。」
ガルドとセラは互いに頷き、開かれた通路の奥へと歩を進めた。
遺跡の封印は崩れ、新たな試練が彼らを待っていた。