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第三話 新たなる試練
戦いの余韻が消えぬまま、ガルドは荒い息をついて剣を収めた。
セラは戦闘の緊張を解いたように、淡々とした口調で言った。
「あなたの力は認めるわ。でも、まだ足りない。」
「足りない?」
ガルドは額の汗を拭いながら、セラを睨む。
「今の戦いは、あくまで私が手加減した状態。あなたがこの先進むなら、もっと強くならないと生き残れないわ。」
彼女は手をかざし、魔力を練り上げた。
すると、床の魔法陣が輝き始め、やがて壁際にあった扉がゆっくりと開かれる。
「この先に、次の試練があるわ。」
ガルドは扉の奥を見つめた。
その先には、漆黒の闇が広がっている。
「……試練?」
「ええ。この遺跡を抜けるためには、ただ強いだけじゃ足りない。」
セラの言葉に、ガルドは剣の柄を強く握りしめた。
何かが待っている。彼の直感がそう告げていた。
「行くしかないか。」
呟き、ガルドは一歩を踏み出した。
──新たな試練が、彼を待っていた。
扉の先は広大な地下空間だった。
天井には無数の魔法陣が刻まれており、壁には古びた石碑が並んでいる。
ガルドが足を踏み入れると、低く響く振動が空間を揺らした。
「これは……?」
ガルドが警戒して剣を構える。
次の瞬間、影が動いた。
床の隙間から、漆黒の霧が溢れ出す。
霧は形を成し、異形の魔物が姿を現した。
「……召喚獣か。」
ガルドは即座に魔物の動きを観察する。
長い腕、鋭い爪、光を吸い込むような黒い体。
「この程度なら……!」
ガルドは剣を抜き、地を蹴った。
魔物が咆哮し、爪を振るう。
ガルドは剣を振り下ろし、その一撃を受け止めた。
衝撃が腕を痺れさせる。
(こいつ、見た目以上に力が強い……!)
ガルドは即座に後退し、距離を取る。
「さて、どう料理してやるか……」
ガルドは深呼吸し、剣を構え直した。
魔物が再び襲い掛かる。
今度は速度が上がっている。
(なら、こちらも……!)
ガルドは剣に魔力を込め、斬撃を繰り出す。
魔物の爪と剣が交差し、火花が散った。
「はあああっ!」
ガルドの剣が魔物の腕を斬り裂いた。
しかし、魔物は怯まない。
傷口が瞬時に再生し、再び爪が襲い掛かる。
「再生能力か……厄介だな。」
ガルドは息を整え、次の一手を考える。
(弱点を探るしかない……)
彼は魔物の動きを観察しながら、攻撃の隙を探った。
セラはその様子を見守っていた。
「あなたなら、乗り越えられるわ。」
その言葉を背に、ガルドは更なる闘志を燃やした。
試練の扉は、まだ開かれたばかりだった。