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第七話 目覚める遺跡
暗い通路を進むガルドとセラの足音が、静寂の中で響いていた。
「この先、何かあるな。」
ガルドは剣を握りしめ、壁に刻まれた古びた文字を睨む。
セラがその文字を指でなぞると、かすかに光が滲んだ。
「この遺跡……やはりただの古代遺跡じゃない。何かを封じているのかもしれないわ。」
「それが、俺たちに関係あるのか?」
セラは首を振った。
「わからない。でも、この短剣を持ってから妙な気配を感じる。」
ガルドが腰に収めた短剣を見つめる。
その刃がわずかに脈動しているように思えた。
「妙な話だな。」
その時、地面が微かに揺れた。
「……何だ?」
ガルドが即座に身構え、セラも魔力を練り上げる。
先ほどまで静まり返っていた遺跡が、まるで呼吸をするかのように空気を震わせた。
壁のレリーフが淡く光り始め、足元の石板が僅かに浮かび上がる。
「この遺跡……目覚めようとしている?」
セラの言葉に、ガルドは険しい表情を浮かべる。
「もしそうなら、何かが出てくる可能性が高いな。」
ガルドが剣を構えた直後、足元の床が音を立てて崩れた。
「くっ……!」
二人は反射的に飛び退いたが、崩れた先からは黒い霧が立ち昇っていた。
霧の中から、鈍い金属音とともに巨大な影が現れる。
「これは……!」
そこに立っていたのは、一体の巨大な石像兵だった。
その体は魔法陣が刻まれた石で構成され、手には巨大な斧を握っている。
「古代の守護者……?」
セラが驚きの声を漏らす。
「どうやら、歓迎されていないみたいだな。」
ガルドはすぐさま斬りかかるが、石像兵は鈍重な動きながらも、鋭い反応で斧を振るい、ガルドの剣を受け止めた。
「ちっ……こいつ、ただの置物じゃねぇぞ!」
ガルドは力を込めて押し返そうとするが、石像兵の膂力は想像以上だった。
「ガルド、下がって!」
セラが魔法陣を描き、雷撃を放つ。
閃光が走り、石像兵の表面にヒビが入る。
「効いたか?」
だが、石像兵は微かに揺れただけで、再び斧を振り上げた。
「まだ足りない……!」
ガルドは短剣を抜き、魔力を込める。
短剣が淡く光り、その輝きが石像兵の魔法陣と共鳴するかのように脈動する。
「こいつの核を狙うしかねぇ!」
ガルドは再び飛び込み、石像兵の胸部に向かって短剣を突き刺した。
瞬間、強烈な光が遺跡全体を包み込んだ。
石像兵が震え、その動きが徐々に鈍くなっていく。
「やった……?」
セラが息を整えながら呟く。
だが、その直後、遺跡全体に低い唸り声のような音が響いた。
「まだ終わりじゃないみたいね……。」
ガルドは短剣を握り直し、再び構える。
遺跡の封印は、今まさに解き放たれようとしていた。