ヒラタケとアスパラのバター炒め
俺も今日から夏休みだ。
赴任されてからの5ヶ月は毎日が濃厚すぎて本当に大変だった。よくもまぁ立て続けにこんなに酷い目にあってきたもんだ。俺は自分の運命を呪った。
横浜に就任した2週間後、担当工程でボヤが出て、その2日後にまたボヤが出て、1週間に2回も夜中に呼び出されたり、
かと思えばその翌週に大雨が降って天井からの雨漏りで作業場が浸水したり、雨が降った週末にまた雨漏りで呼び出されたり、
週末のサックスのレッスンが始まってすぐに電話で呼び出されたり、散髪中に電話がかかってきたり、
くだらない用事で真夜中に電話してきたオペレータを電話口で怒鳴りつけたり、自分の二回りも年上のオペレータを叱りつけたり、
前任者の不祥事が立て続けに明るみに出て、逃避行に出た前任者の尻ぬぐいをしたり、
仕事のできないバカ2人にクーデターを起こされて優秀な作業者が2人も辞める羽目になったり、
挙げていけば本当にキリがない。俺はこの赴任期間が終わったら、横浜でのとんでもない日々を小説にしようと思った。いや、どちらかというと暴露本に近いか。
とにかく、ほとんど有給も取らずに5ヶ月を走り抜けてきたので、この9日間の夏休みは俺のリフレッシュのためには絶対必要なのだった。
この期間は工場も停止するので、現場から電話がかかってくることもない。本当にストレスフリーなお休みなのだ。素晴らしい。仕事のことを全く考えなくて良いんだからな。
記念すべき夏休み1日目はほとんど寝て過ごした。クーラーのきいた部屋で好きなだけ昼寝するのは本当に気持ちがいい。
あとは麦茶を作った。夏休みの水分補給といったら、ポカリでもなく、三ツ矢サイダーでもなく、グリーンダカラでもなく、麦茶しかないだろう。俺の麦茶はちゃんと湯出しで作る。
ケトルで沸騰させたお湯をティーバッグの入れた容器に注ぎ、10分したらティーバッグを取り出す。しばらく放置して粗熱を取ったら、冷蔵庫で冷やす。少し手間を割くだけで、麦茶ってのは本当に美味しくなる。ぜひやっていただきたい。
たっぷり昼寝をしたら腹が減ったので、実家から送られてきたアスパラガス5本と業務スーパーで購入した霜降りヒラタケをつかって、晩飯に簡単な炒めものを作ろうと思った。
アスパラガスは食べやすい大きさに切る。にんにくは薄くスライスしておく。俺は翌日仕事でも平気でにんにくを食べちゃうくらいにはにんにくが好きなので、4片使う。
好きなだけにんにくを食えるから連休は好きだ。どうせ明日も誰とも会わないからな。
じゃがバターを作ったときに購入した雪印の切れてるバターが余っていたので、こいつも使う。10gフライパンに乗せ、寮の共同キッチンに持っていく。
フライパンを弱火で加熱し、バターが解けたらスライスしたにんにくを入れて熱する。にんにくから泡が出始めたら、アスパラガスを中火で炒める。
アスパラガスに火が通ったら、ヒラタケを入れて強火でさっと炒め、醤油と塩コショウで味付けする。皿に盛りつけて上からブラックペッパーとバジルを振りかけたら完成だ。
ヒラタケとアスパラのバター炒め。付け合わせは実家から送られてきたきゅうりを刻んだのにカットしたトマトを添えただけの簡単なサラダと、インスタントのしじみスープ。たまに手を抜くことが、自炊を長く続けるコツだ。
俺は予てから思っていたが、きのことバターは最強の組み合わせだと思う。きのこをバターで炒めるだけで、きのこの香りがバターによって引き立てられ、最高のごちそうになるのだ。
今回の俺の方程式も完ぺきだった。アスパラガスもバターで炒めると美味いからな。しかもにんにくのパンチのきいた香りが、きのこと全く喧嘩せず調和をもたらしている。しかもこれが、まぁご飯によく合うんだな。
大満足の夕餉を終えて麦茶を飲み干し、残りの夏休みに思いをはせる。今はどこにも出かけられないが、それはそれでのんびりと体を休めることができて良いだろう。
休み明けも全力疾走できるように今のうちに力を蓄えよう。
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