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ハヤシライス

連休明けの1週間というのは本当に長く感じる。

分けても今週は定常業務以外のイレギュラー対応が多く、俺の担当の現場もてんやわんやだった。8月以降は生産が減るから暇になると上司に言われていたが、どうも逆に仕事が増えている気がしてならない。

それでもなんとか1週間乗り切り、また週末がやってきた。9日間の連休の後なので、正直な話有難みは少ないものの、それでもやっぱり休みというのは心が躍る。

昨夜仕事帰りに買った小説を一気読みし、prime videoで映画を見て、サックスのレッスンに行く。帰ってきたらまた映画を見て、昼寝をする。充実した休日だった。

そういえば今週も実家からの救援物資が届いた。トマト・ピーマン・青南蛮・トウモロコシ・きゅうりだ。

前回の救援物資(おしりふきの段ボールに入ってた奴のことだ。)の野菜はすぐに食い尽くしてしまったため、今回はその倍の量の野菜が送られてきた。とても嬉しいのだが、食べきる前に腐らせないかが心配だ。

トウモロコシは届いたその日に生のまま1本食べたが、とても甘くて美味かった。

あまり知られていないようだが、スーパーで売っているようなトウモロコシはすべて完熟しているものだ。完熟だと皮が固くなりすぎて湯掻かないと食べることができないが、完熟一歩手前で収穫したトウモロコシは生食できるのだ。

生のトウモロコシをそのまま食べれるのは、農家にのみ与えられた特権だ。

残りはラップに包んで寮の食堂の電子レンジで4分加熱し、加熱後余熱で温めて蒸かす。食堂のおじさんから「もう自分の部屋に電子レンジ買って置いた方がいいんじゃないの?」と言われたが、無視した。そんなお金はウチにはありませんからねッ!

諸々の事情で救援物資の受け取りが遅くなったため、トマトは完熟を通り越してブヨブヨになりかけていた。これでは生食に向かないため、ハヤシライスにすることにした。

もちろん市販のルーは使わない。ここまでくると頑固な奴だと思う人もいるかもしれないが、これは俺のポリシーだ。

近所のスーパーを巡って、しゃぶしゃぶ用の牛切り落とし肉1ポンド・ホワイトマッシュルーム1パック・玉ねぎ大2個・赤ワイン・トマトジュース200ml・カット野菜サラダを購入した。

先日の記事でも触れたが、寮の共同キッチンは俺以外使っていないことが判明したので、まな板と包丁を持ってきて堂々と玉ねぎを切る。2つのうち1つは千切りに、もう一つはくし切りにする。

切り方を変えるのにはわけがある。千切り玉ねぎは炒めているうちに水分が出るし、くし切り玉ねぎは完成のときの見栄えを良くするからだ。

鍋にバター10g、オリーブオイル小匙1、にんにくチューブを4cm入れ、弱火で加熱する。にんにくの良い香りがしてきたら、刻んだ玉ねぎを投入して炒める。

ある程度火が通って玉ねぎのふちが透き通ってきたら、牛切り落とし肉1ポンドを投入。俺はカレーライスを作るときは角切りのコロコロした豚肉を入れるが、ハヤシライスには必ず牛切り落とし肉を入れる。これは俺のこだわりだ。

肉の赤みがなくなったら半分に切ったマッシュルームと6個分の刻んだトマトを投入。トマトは煮込んでドロドロにしてしまうため、くし切りでも角切りでも良い。

ある程度火が通ったら、トマトジュースと赤ワインを200mlずつ入れ、コンソメキューブを3つ放り込んで煮込む。本来であればここで小麦粉を大匙1入れてとろみを出すらしいが、俺は入れない。

何故なら俺のお父さんは、小麦粉を含んだ市販のルーで作ったカレーやハヤシをご飯にかけるのが嫌いだからだ。曰く「ご飯に小麦粉をかけて食べるなんて、意味がわからん。」とのことだ。

そんなとき、お父さんにはカレーとご飯を別盛りにして提供すると食べるのだ。ご飯にかける必要がなくなるからな。

俺は父の意志を尊重し、カレーやハヤシには小麦粉は入れないことにしている。

今回はニンジンやじゃがいもが入っていないので、あまり長く煮込む必要はないが、それでも1時間くらいは煮込んだ。

途中、忘れていたローリエ1枚とオレガノ小匙1を入れる。なくても良いが、入れると風味が格段に上がるので、持っているなら入れることをオススメする。

水分が飛んでトロリとしてきたら、ソース大匙5、ケチャップ大匙4を入れる。味がまとまるまで混ぜながら煮込んだら、味見をする。少し酸味が強い気がしたので、味をまろやかにするためにはちみつを大匙1入れる。

仕上げに隠し味で醤油を少々。これで日本人好みの味になる。

あとは盛り付け。ご飯は麦シャリ。こいつは栄養価が高いだけでなく、スマホのカメラで撮影したときに画像のご飯が白飛びしないので、インスタ映えを狙うのに持って来いなのだ。軽く乾燥バジルを振ってさらに見栄えを良くする。

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ハヤシライスの完成だ。"ハッシュドビーフ"なんて洒落た呼び名もあるようだが、ハヤシライスはハヤシライスだ。付け合わせは市販のカット野菜サラダに、実家から送られたきゅうりを刻んで載せただけのサラダ。たまに手を抜くことが、自炊を長く続けるコツだ。

ハヤシライスは一口食べると口の中にトマトの酸味と牛肉の旨味が広がり、自然と笑みがこぼれる。通常はホールトマト缶かカットトマト缶を使うのだが、今回はフレッシュトマトを使ったため、新鮮な酸味が口内を刺激し、掻き込む手が止まらなくなった。

こいつは信じられないくらい美味い。俺は再び自分の才能に恐怖を覚えた。

しかし出来上がりの見栄えは、加熱されたトマトの皮が所々に丸まって浮いていたので、ちょいとイマイチだな。今度生のトマトを使うときは湯剥きしておいたほうが良いかもしれない。

これでトマトはきれいさっぱり使い切った。あとは大量にあるピーマンと青南蛮だ。こいつらはいっぺんに使い切ることはできないので、何か良い献立を考えよう。

「明日何作って食べようかな?」なんて考えられるうちは、どんなに仕事が厳しくても、俺は多分大丈夫だ。

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