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観ていると感情がグルングルンする映画WAVES

毎年年始にその年のの公開映画のラインナップを調べてどんな映画が公開されるのかワクワクするのが毎年の正月休みの楽しみになっている。その中でもA24スタジオの作品というだけで期待感が上がり、予告編だけでもとてもきれいな印象である映画のWAVESが7月に待ちに待った公開。

期待をしてしまうスタジオA24作品

今年楽しみにしていたミッドサマーや思春期の気持ちを思い出させるエイスグレードなど面白い作品を出している今すごい好きなスタジオA24だからこそ期待が大きかった。

音楽のプレイリストを軸としてストーリーを作っていったらしく、感情移入がしやすい映画なのかな程度の気持ちで観に行った。でも観ているとそんな映画でなくてその登場人物の中に入っていってしまいそうな感情が動いて止まらない映画だった。

色と音が頭じゃなくて感情に訴える映像

詳細なストーリーはぜひ観てもらいたいと思うのだけど、色と音の使い方がすごい。なにがすごいかって、各シーンでの色が心の様子を表していると感じる。そしてそのシーンで流れるプレイリストの音楽の歌詞とメロディーがシンクロすることで頭でわかるのではなく、感じるような気持ちになる。例えば兄にタイラーのシーンでは、赤と青を使ってスクリーンを覆うとき、タイラーの心の不安が現れているようで苦しくなる。海でアレクシアと抱き合うシーンでも赤色の爪が海の青に生えていてきれいなんだけど1つの赤い色がその後のストーリーへの少しの不安を表している色なんじゃないかと思う。(その後のアレクシアのドレスも赤だった)

画面の画角も変わり感情移入しやすくなる

映画を観ているといつの間にか映像の画角が変わっているシーンがある。生活がうまくいっているシーンは通常の広い画角なんだけど、登場人物の気持ちが不安になってくると狭い画角になっている。音と色の表現も相まって周りが見えなくなっている(冷静になれなくなっている)ような気がして観ている人も一緒に不安にさせる。一緒にフォーカスもきつくなりアップで映している登場人物の周りはほぼボケて見えない。確かに自分も悩んでいると周りが見えなくなって人の意見もあまり聞くことができない。そんな人の気持ちを没入体験として味わうことができる表現方法だ。

家族のストーリー、そして映画体験はこういうことなんじゃないか

色や音、映像としての表現が素晴らしくただそれだけでもすごい映画なのだが、ストーリーも相まって没入体験ができる。「兄妹」「父と息子」「父と娘」「父と母」それぞれにストーリーがあり家族という1つのコミュニティを中心にそれぞれの1人の個人としての気持ちをストーリーで語っている。

最後の妹のエミリーが最後の自転車乗りながら手を離すシーンがある。自分も手を離して乗った時の気持ちになった。手を離して運転するには、最初はスピードをつける必要あるし力いるけど、スピードに乗ったら空飛べそうに軽くなる。手を広げて自転車で駆けるあのシーンは彼女自身がいろいろななにかから開放されたんだろう。

この映画は没入感がある。タイラーのシーンではひたすら不安になるしエミリーのシーンでも兄弟を救えない後悔も感じる。自分自身に重ねやすく没入できる映画だ。

少し前にアトロクでWAVESについての特集があった。解説では主に音楽の使い方について話があったが、気になったのは監督自身の体験がベースになった映画ということだ。今年のアカデミー賞でポン・ジュノ監督がスコセッシ監督の言葉を引用して体験に勝るストーリーはないというような事を言っていた。そうであれば体験を映画を通じて経験できるということを改めて認識できた。

音楽の演出方法はちろん、ある曲はいくつかのシーンで流れるのだが、歌詞がどの登場人物で使われるかによって受け取る意味合いが変わるように設計しているらしい。ぜひ映画を見終わったらプレイリストを聞いてもう一回映画を観たい。そんな映画体験ができる素晴らしい映画だった。


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