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日本の季節
自分でも驚いたのだが、日本に帰ってきて一番「そう、これが恋しかったんだよ〜」と感じたのは寿司でも治安でもなく、"夏"だった。
ロンドンには季節がない。北半球にあるから正確にはあるんだけれども、季節の境目がはっきりしない。感覚的には、寒く暗い冬が2-3ヶ月、ものすごく短くて快適な夏が2-3週間で、冬でも夏でもないよくわからない時期が残り、という感じだ。夏は30度を超えることが珍しく、日本のように真夏日が続くことはない。
日本に帰ってきて、四季の変化やそれに伴う草花や動物、昆虫などのライフサイクルに改めて気付かされ、どこにでもあるものではないんだな、とそのありがたさを感じた。
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Photo by Pete Alexopoulos on Unsplash
さらに加えて気がついたのが、季節は便宜上四つに分かれているだけで、刻々と変化している、という事実だ。
日本には二十四節気という概念がある。元々は中国の戦国時代に発明されたものだが、その名の通り一年を24の季節に分ける考え方だ。
確か小学生のころだったと思うが、クラスで二十四節気を覚えてみようコンテストが開かれた。こういうのに熱心になってしまうタチであった僕は一生懸命に覚え、クラスで一番に誦じたのだった。今ではもう24すべてを空で言うことはできないが、そのエピソードはよく覚えている。
365日を24で割ると一つの季節はだいたい15日。約2週間で次の季節に移り変わることになる。よく観察するとこれは驚くほどよく当てはまっていて、およそ2週間で気候や風景がちょうど体のセンサーが感知できるくらいの変化を見せる。
今の季節がたった2週間しか続かないと思うと、それがどれだけ暑くて大変なものであっても、やけにありがたく感じるのだ。
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一瞬一瞬を大切に生きる、というのは古代インドから伝わる(?)、人生を豊かにする上で普遍的なアドバイスの一つだと個人的には思うが、今の一瞬は次の一瞬と大きく変わらないのでその大切さがなかなか感じにくい。今日明日でも気付けるほどの変化はないかもしれない。
二十四節気の考え方に沿って、この2週間の景色・気温・匂いは来年までもう来ない、人生を通してもせいぜい100回、と考えることで、人生の儚さ・今の大切さを忘れずに生きる手助けになるかもしれない。