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プロ棋士、7段、渋滞中

藤井聡太五冠の10代にして、棋聖3期防衛、通算タイトル9期獲得や里見香奈女流四冠の棋士試験受験で女性初のプロ棋士を目指すなど話題に事欠かない将棋界ですが、最近、棋戦を見ていて、やたら7段が多いことに気づき、本当にそうなのか調べてみました。

将棋連盟に公式HPに記載されている現役棋士は、2022年7月現在で170名います。四段からがプロ棋士なので、九段まで段位は6段階あります。
左側の表はそれぞれの段位ごとの人数と割合を示しています。そして、7段の棋士は50名で、その割合は約30%。ざっくり、3人に1人は7段という感じになります。やはり、多かったです。
四段になって、晴れてプロ棋士になれるのは年間4名+α。毎年、プロ棋士全体の約2%程度ですので、そんなに多くの割合の人がプロ棋士として、入会するわけではありません。また、プロ棋士には降段の規定はないですので昇段する一手です。ですので、形としては、逆ピラミッドとなるはずです。
そう思ってみてみると、四段の14人から九段の31人まで人数は増加していますが、7段だけが異常に膨らんだ形になっており、渋滞を起こしています。

この要因は昇段規定にあるのではと昇段規定を掲載しました。

昇段規定は大きく分類して、
①タイトル獲得あるいは挑戦
②竜王位でのクラス
③順位戦でのクラス
④タイトル以外での棋戦での優勝
⑤公式戦での勝ち星数
に分かれています。
比べて見てみると、七段までは条件の数は多いですが、八段は順位戦A級の10名に入るか、竜王位1組の16名に入るか、タイトルを複数獲得するか、公式戦で勝ち星を重ねていくしかありません。
順位戦の頂点であるA級にはタイトルホルダーやタイトル挑戦常連組がひしめく、狭き門です。どれが一番かと言えば、タイトルやクラスに関係ない公式戦の勝数が比較的ハードルの低い条件です。
が、しかし、棋士の年間対局数を40局(棋戦は順位戦を除き、ほぼトーナメント方式ですので、勝ち続ければ対局数は増加します)、勝率を5割だとすると、年間20勝。平均的な成績でいって、八段の昇段規定の公式戦190勝までは10年かかります。棋士同士の勝率はほぼ平均5割(ほぼとはアマや女流との対戦もあるので)。つまり、ざっくりいうと、勝率5割の棋士が半分、勝率5割以下の棋士が半分ですが、棋士の内、7段以上が約7割ですので、同位、上位者との対戦で勝率5割となるのはより困難だと言えます。

やはり、公式戦で勝ち星を積み重ねるにも長い年月を要するのではないかと思います。
そこで、右側の表ですが、現段位になるまでに要した期間を調べてみました。つまり、現九段の棋士が八段になってから、九段になるまでに要した期間をカウントしてます。
これを見ると、現八段の棋士29人のうち、八段になるまで9年以上要した棋士が21人、その割合は、約72%です。
八段以外で、9年以上かかる割合は20~40%程度ですので、突出しているのが分かります。
七段までは時速60キロではしていたのに、八段の手前で、みんなブレーキを踏まざるを得なく、時速10キロのノロノロ運転、9キロを超える渋滞を抜けると、時速が戻るといった感じでしょうか。

よって、規定の見直しをという結論に至りそうですが、七段が多いことの問題はさほどないように思います。一般の給料に当たり参加報償金(対局料ほか)は順位戦のクラスによって異なっており、段位によって違うわけではないですし、タイトル戦も予選は全棋士参加ですので、段位によって不利があるわけではありません。
唯一あるとしたら、叡王戦は段位別の予選なので、人数の多い七段は通過率が他の段位くらべて低いぐらいでしょう。

ただ、経済的に影響はないものの、肩書ですので、一つでも上の段位を目指したいところでしょう。

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