ハンドボールシューズの構造と特徴(室内用)
ハンドボールシューズに関して詳しく書かれているところがなかったので、自分なりに分析してみました。
走って、飛んで、当たって、投げてと、かなりハードなスポーツのイメージのあるハンドボール。
運動強度も高いスポーツで、それに使われる靴も相当強度がないとダメなのかな?
と思い色々調べてみました。
バレーボールシューズやバスケットボールシューズ、テニスシューズ、フットサルシューズなどを混ぜ合わせたような仕様がハンドボールシューズにはみられます。
•バレーボールのようなアッパーが軽量化された設計
•バスケットボールシューズのようなクッション性の高いミッドソールの設計
•テニスシューズのような横への動きに強い設計
•フットサルシューズのような強いグリップの設計
これら4点が混ざり合った形となっています。
もちろん全ての要素がそのまま入ったものかと言うとそうではなく、競技として妥当なラインで作ってるのかなと思います。
では行ってみましょう!
ハンドボールシューズの特徴
ハンドボールシューズの見た目の特徴や機能的な特徴
としては以下があげられます。
【特徴その1】
前足部の第5趾のMP関節付近が横に出っぱっている。
これはハンドボールシューズの1番の特徴と言っても過言ではないかと思います。
他の室内競技でこれらの特徴のシューズは他にみられません。
基本的にどのメーカーでも前足部はこれらの仕様になっていてトップスピードからのカッティング動作や横へのステップ動作を素早く行う競技ということもあり、このような構造になっています。
これがあることでステップ動作で小趾側からの地面反力を効率よく体へ伝えることができます。
内反捻挫の予防にも役立つと考えられます。
【特徴その2】
後足部に比べ前足部が広い
ミッドフットやフォアフットでの着地が多く、
前述したとおりサイドへの動きやカッティング動作が多いため、前足部の安定性を出すために前足部が広めに作られていることが考えられます。
各メーカー木型などのワイズがあるため、ワイズの大きさが見た目とイコールではなく、アウトソールの仕様で大きく作られている製品が多くみられます。
ミッドフット着地とフォアフット着地は以下の画像を参考にしてください。
真ん中の図がミッドフット着地
右側がフォアフット着地
これらの着地の状態では、足関節は構造上、関節のはまりも浅く捻挫をしやすい位置にあり、連続した動きを行うには広く安定した底面の方が怪我の予防にはつながることと、広い底面から反発を受けた方が次の動きへの力も大きく発揮できると言うメリットがあるのかなと考えます。
ハンドボールシューズのアウトソール構造の特徴
大きく分けて2つの種類に分けられます。
まぁ中間的なものも含みますが、、、
アウトソールに樹脂がないもの
アウトソールに樹脂があるもの
ハンドボールシューズに限ったことではありませんが、この2種類には大きな違いがあり、双方メリットとデメリットが存在します。
まずは
アウトソールで樹脂がないパターンのもの
樹脂がないものの特徴としては、アウトソールが全面フラット型になっています。
他には、ミッドソールの中に硬い反発材やシャンクと言った後足部を安定させるようなものが入っているものであれば良いのですが、靴の分厚さを軽減し、軽量化やフレキシブルな構造にしたいという目的としたものも多くなっています。
中にはミッドソール内に、反発材や硬いプレートが入っているものもあり、どのメーカーに入ってるかなどの明記は避けますが、外付けの硬い樹脂よりも強度は低いものの靴の剛性が保てる程度のものもあります。
樹脂なしのアウトソール全面フラット型のメリット
軽量化
薄底で素足感覚を保てる
フレキシブルで動きやすい
接地面が多く安定性が高い
樹脂なしのアウトソール全面フラット型のデメリット
靴全体が柔らかいが故、足(特に足関節、膝関節)への負担が大きくなる
薄底なのでこれも足への負担が大きくなる
耐久性に欠ける
次にアウトソールに樹脂があるもの
基本的に剛性の高い樹脂が配置されているのでアウトソールが前足部と後足部に分かれているパターンとなります。
樹脂ありのアウトソールのメリット
剛性が高い
パワーの入出力がスムーズ
足の保護機能が高い
耐久性がある
樹脂ありのアウトソールデメリット
重い
ヒールが高くなるので横の動きに不安定さが残る
価格の高騰
アウトソールのデザインについて
樹脂があるものとないものでアウトソールのデザインが基本的に変わってきます。
多方面の動きのことを考えると樹脂がない方が靴の自由度が高くスムーズには見えますが、樹脂のある方でも各ウェッジの部分が丸みを帯びており、方向転換や体重が乗りやすいところなどには工夫がなされています。
樹脂ありのものはアウトソールが
グリップを効果的に発揮させるため
デザインが各箇所によって変わっています。
この右の図のデザインでは切り返し動作が多くなる靴のヘリ側が比較的細かい吸盤のようなデザインになっています。
かかとや小趾の外側で接地してもグリップが効きやすいようになっていますね。
前後のストップ時は、MP関節など足の底で止まることが多いので横線の入ったデザインになっておりストップもしやすい構造になっています。
他にもいろんなデザインのものもありますが、ここではこのデザインのものだけ説明させてもらいました。
あとは、前足部と後足部で機能性の違いを出すため
前後でデザインが異なるものも多くみられます。
樹脂無しのものは、全体的にフラットな感じで同じようなデザインでの仕様になっていることが多いです。
関節部で曲がりやすくするためや汗などで滑らないように屈曲溝が基本的にはデザインや機能面としてあしらわれてます。
靴の剛性について
①靴の真ん中から曲がるシューズ
軽量化を図るために①の写真のようなものは
剛性が低くなることでアウトソールのグリップが強いと
足への負荷がかなり高くなります!
さらには、これらの剛性が低く足底が薄い仕様のシューズを着用し、靴下のグリップが強いものの場合はさらに注意が必要になってきます。
靴としての保護的なサポート部位が少ないので足の機能がしっかりしていないと疲労や怪我につながることが多いです。
フットサルなどでもこれらのシューズが好まれて履かれることも多いですが、やはり足への負担が大きくなるので大きい怪我をしたことがある選手や足の機能が低い選手はしっかりとトレーニングをした上で履くようにしましょう。
②MP関節からしか曲がらないシューズ
MP関節からしか曲がらないことで
靴の剛性も高くなるので、足を保護し、本来の足の機能性をサポートすることができます。
一般的に良いといわれる靴の大切なポイントになるのはこの辺りです。
疲労度は①にようなシューズに比べ少ないく、耐久性も高くなります。
左側のシューズはアウトソールが樹脂なしのもののように見えますが、ミッドソール内がbounceというadidasのフォームで分厚くサポートされていて、前足部にいくにつれて薄くなることでこのようなMP関節から曲がる仕様となっています。
右側のシューズは下の写真のようにフラットなアウトソールなんですが、ミッドソール内に硬い素材が入っていて後足部が安定する仕組みになっています。
さらに面白いのは、前足部にみえる丸い窓です。
ここには吸収して反発しやすい素材が内蔵されており、ミッドフットやフォアフットでの着地の力をさらに伝えやすい構造になっています。
アッパーの仕様(外側)
次にアッパー(足の甲側)の仕様についてです。
これも各メーカーいろんな形があり工夫をしています。
赤い丸のついてる前足部アッパーがメッシュ素材やニットアッパー、同一素材で補強などがない場合、アウトソールのグリップの強さとのギャップが大きくなることで、体重が外側に流れやすく、靴がヘタることでブレなりやすくなります!
もちろん股関節の外側から膝周りの外側、腓骨筋などの下腿の外側の筋肉に負担がかかりやすくなってきます。
軽量化を目的や価格でこのようになっているが、靴の耐久性も下がることが多いです。
グリップの強度が高い場合、足関節や膝関節への影響も出やすくなってきます。
足の構造上、体重を乗せると潰れて外側に広がる傾向があります。
3-5趾までで9ミリほど横に広がります。
なので外側の構造は柔らかく足の状態に対応しやすいような設計にはなっていますが、アウトソールのグリップ力や、合成皮革や合成繊維などの素材との硬さのギャップによって破れやすい傾向にあります。
この写真のように、張力が発生して破れやすくなります。
何でもかんでも柔らかければ良いってものでもなく、その逆も然りです。
以下の写真のようにうまくバランスをとった保護をしているものもあります!
全体にニットアッパーのものや、部分的にメッシュ構造など様々な仕様があるが青い破れてるシューズの写真のようにメッシュ構造だと、摩擦や横移動の反復などで破れてきてきやすい。
通気性と軽量化という部分では欠かせないが、強度は劣ります。
強度を保つために人工皮革や合成繊維で補強しているものもあるが、補強が強ければ足を圧迫し痛みが出ることがあるので小趾側の補強の程度には注意が必要となってきます。
アッパーの仕様(内側)
内側は外側に比べ、圧倒的に負荷が高くなるので、サドル(黄色い矢印)といわれる足の履き口をフィットさせたりするための補強が各社見られます。
もちろんメーカーロゴもその役割を担っている上に、靴の補強としても機能を持っています。
これらのサポートするためのデザインを行うことで履き心地を上げることはもちろんだが、横ブレの軽減や紐を強く縛れるようにする目的もあります!
靴によっては内側も外側もアッパーのデザインが均等なものもありますし、全く異なるものもあります!
ただのデザインだけでなく、履いた時の動きをどのように補助し、動きを作るかなどを考えられたデザインになっていることが多いです。
日本のメーカーのものは特に、教科書通りのしっかりとした構造となっているものが多いように感じます。
靴の機能として
押さえておきたい重要箇所
(内側)
内側縦アーチに添うように合成繊維で加工されています。
内側アーチラインの負荷による足の回内(内側にねじれていく)を制御しやすい仕様になっていて、靴のへたりを予防し、さらには足部の回内とかかと周囲の横ブレをなくすために、ヒールカップ以外にサドル部分が強固に保持されています。(緑の矢印)
MP関節(ピンクの矢印)のところにもサポートが入っており、靴の中で足が捻れたり横ブレしたりするのを軽減する役割を持っています。
靴の機能として
押さえておきたい重要箇所
(外側)
内側に比べ合成繊維でのサポートは少なくなっている。
MP関節(ピンクのライン)までは樹脂入りミッドソールでしっかりとサポートされていてアッパーのメーカーロゴで横への動きのブレを抑える作用を補っています。
メッシュ構造で足への負担は少なく自由度を確保した仕様で止めるところはしっかりと止まっています。
足の形とシューズの形
他のスポーツシューズと違い比較的足の指には優しい設計になってるものも多いけど、やっぱりその中でも足の形とラストの形が存在する。
自分の足の形と靴の形をみてシューズを合わせることでよりフィット性が上がりパフォーマンス向上が期待できます。
左側のスクエア型の方はつま先の幅が比較的大きい作りになっている設計のものを選ぶと良いでしょう。
線が2本引いてますが、同じ長さになってるのがわかると思います。
母趾側から小趾側までがなだらかな作りになっているものが良いでしょう。
真ん中のエジプト型の方は母趾が1番長い傾向にあるので小趾に向かっての傾斜はやや急にはなりますが、つま先が広く設計されてるものを選びましょう。
2本の線はやや小趾側が狭いので短めになっています。
右側のギリシャ型は、第2趾や第3趾が比較的長い方が多く、真ん中に頂点がくるような設計の靴を選ぶと良いでしょう!
真ん中時点で横へはほぼ均等な傾斜で作られていることが多いので線は一本にしています。
自分の足の形と靴の形を一度じっくりみてみてはどうでしょうか?
特徴のまとめ
1:第五足趾の外側に捻挫予防と外に重心が流れにくいウェッジ構造がある。
2:メッシュ・人口樹脂を使い軽量化を図りながらも運動強度に耐えれるアッパー構造が使われている。
3:ヒールカップは硬すぎず、柔らかすぎず強度が異なものが存在する(ポジションや運動強度によって分ける必要がある)
4:グリップが強いものが多いので足に不安がある方は靴の剛性の高いものを選択した方が良い。
5:アウトソールは全面がフラット構造になっているものからねじれ剛性を意識した仕様まである。
ポジションやプレースタイル、動きに合わせて選択することをお勧めします。
6:ミッドソールが比較的分厚く設計されている。
特に後足部~中足部が分厚くサイドへ反り上げ足をサポートしているメーカーもある。
ハンドボールシューズには各メーカーさまざまな工夫がなされているがどれが良いというのはポジションや身体の動きの状態、足の状態などを加味して選択していく必要があるなと思います。
強度の高いスポーツが故に、下半身にかかる負荷は大きくなるため特に育成年代では靴の仕様を気にして選ぶことをお勧めします。
ちなみに女性アスリートなどでは、関節構造も緩くなることも月に一回は必ずあるので、関節への負担も考慮して、サイズやプレースタイルなども踏まえて選ぶ必要があるでしょう!
是非、参考に来てみてください!