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都市経営プロフェッショナルスクールグループミーティング&コーチング開始

6月より始まった都市経営プロフェッショナルスクールの公民連携事業課程では、WEB講義だけでなく、合宿形式として9月、11月、翌年3月に集中研修が実施されます。また、各集中研修に向けてグループワークも実施し、グループワークや各自の実践する事業についてコーチングを受けるオンラインゼミも実施されます。

今回は、オンライゼミで実施したグループミーティングとコーチングについて。いきなり自分自身の大きな課題と向き合うことになりました。


キックオフミーティング

初回のオンラインゼミは、キックオフミーティングとして簡単な自己紹介と今後のオンラインゼミの運営方針についてディスカッション。私が所属するCグループは、受講生が15名で、公務員と民間事業者が半々ぐらい。すでに事業を実施している人や自腹で参加する人もいて、みなさん気合は十分。今後、お互いに切磋琢磨できる素敵な関係を築いていきたいです。
 
コーチは3名で、どなたもまちづくりを牽引するトップランナーばかり。行政で実践してきた人、民間で実践してきた人、そして双方で実践してきた人という素晴らしい布陣。コーチングを業務委託したら一体いくらかかるのか想像するとゾッとするくらいの素晴らしい方たち。この恵まれた環境を生かすため、こちらも気合が入ります。
 
エグゼクティブコーチの熊 紀三夫さんからの第一声は、「みなさんの話を聞いて思うことは、インプットが圧倒的に足りない」というもの。ここでいうインプットとは、座学だけでなく「まちにダイブ」するということ。いろいろなまちを実際に歩いて回り、いろんなことに興味を持って経験を重ねていく。その経験の積み重ねが事業に生かされていくというものでした。
 
また、「みなさんが自分たちのまちをなんとかしたいなら、自分たちの人生観を出してもらいたい」とのことでした。コーチ陣は、事業実績もさることながら、国内外問わずまちで遊びつくした経験豊富な面白い人ばかり。コーチ陣とたくさん話をして、多くを学び、人間性を磨いていく訓練をしてもらいたいとのこと。実際に事業を手がけ、多くの人を巻き込みながら事業を起こしてきた人の言葉には凄みがあります。これが自分の人生観を出すということかと、早速コーチ陣の人としての魅力に当てられました。

人生の選択における外部要因の影響

2回目のオンラインゼミでは、「ライフラインチャート」に基づいて、グループメンバーの経歴と人間性を知ることを中心に行いました。

ライフラインチャート
特定非営利活動法人日本キャリア開発協会HPより
https://www.j-cda.jp/your-own-career/think-about-a-career.php

ライフラインチャートは、縦軸に満足度(充実度)、横軸に過去の年齢(時間軸)をとったグラフです。横軸は左端が0歳の時、そして右端は現在や想定する将来のある時点を置きます。その表の中に、自分の人生の満足度を表す曲線をフリーハンドで描いていくのです。満足していた時期はラインを上げて、逆に満足できていなかった時期は下げるようにして描いていきます。
フリーハンドで曲線を描く前に、人生をいくつかの時期に区切って、自分自身の経験を思い起こしておくと、よりよい振り返りになります。特にルールはありませんので、例えば、経験した主な出来事や、印象に残る人やモノ・本など、自分自身にとって印象に残ることを書き出しておくとよいでしょう。

特定非営利活動法人日本キャリア開発協会HPより
https://www.j-cda.jp/your-own-career/think-about-a-career.php

各自ライフラインチャートに基づいて発表するのですが、すかさずコーチ陣からどんな事業をやりたいのかと質問が飛びます。コーチの質問は矢継ぎ早に行われ、受講生はしどろもどろになることも。普段から自分のやりたいことについて考えをまとめておくことを習慣づけなければならないと改めて思いました。そして、受講生の発する少しの言葉から、どんどん内容を引き出して、課題を掘り下げていくコーチ陣の凄さを目の当たりにしました。
 
私のライフラインチャートとやりたい事業内容に対しては、「人生の波を見ていると外的要因に振り回されている。自分だけでできるところを見つけてやった方が、納得感が出る気がする」とコーチより指摘されました。
 
確かに、思い返せば誰かの顔色をうかがって選択したことが、自分の人生の満足度を著しく下げているということが、自分のライフラインチャートに如実に現れていました。自分自身はそう思っていなくても、客観的に見ていたコーチがそう指摘するということは、その傾向が強いのだと思います。
 
自分のこの特徴を踏まえた上で、公民連携やまちづくりに必要なコンピテンシーを意識したマインドと行動に切り替えていくには、メタ認知が必要だなと思いました。そのため、目の前のことに没頭しすぎないよう、距離をとって客観的に物事を見る習慣を身につけることをまずは目指します。
 
ただ、「自分が今やりたいと思っている事業は、本当に自分が望んだことなのだろうか。誰かに影響されただけのものではないのだろうか」と不安がよぎり、心の奥底でモヤモヤしたものが次第に大きくなるのを感じました。

面白い事業って何だろう?

3回目のオンラインゼミでは、9月の集中研修での発表に向けて、各自個人事業をプレゼン形成で説明。コーチ陣からフィードバックをいただきます。
 
私が発表した事業は、空き家をリノベーションした賃貸戸建住宅の家賃収益によって、将来的に必要となる解体費用と地域内の特定空家等の解体費用を捻出するというもの。また、除却後の土地を売却したり、新たに賃貸物件を建設したりすることによって、地域内の不動産投資を活発化させるという狙いもあります。そして、この取り組みを行政の計画に位置付けることによって、行政からの補助金に頼らず、民間主導で空き家対策を実施することで持続可能なものにする。これは、前職で実証実験を行なった際に検討したものがベースとなっています。

オンラインゼミで発表した資料の一部
(後にこれが私の黒歴史の一つであり、「墓標」案件になると思いましたので、自分への戒めとしてここに掲載しておきます。)

現状では、将来的にどうやって空き家を解体するのかという資金計画がない人たちに対しても、空き家を活用することを行政が推進してしまい、物件の安さに惹かれた移住者などに空き家が一時的に活用されても、解体費用を捻出できなければ最終的には空き家が放置されてしまう。結果として、老朽化したものは法に規定された特定空家等として行政が公金で対応しなくてはならなくなるため、そこを民間事業としてなんとかできないかというのが事業の狙いです。そのため、空き家を活用するにしても、居住者が所有者でない賃貸物件の方が、将来的に必要な解体費用を家賃で捻出することができると考えました。
 
また、南知多町では、空き家バンクを利用して移住を希望する人からの申し込みが年間20件以上(※)ある一方で、移住希望者のニーズの高い賃貸可能な空き家の供給量が不足しています。アパートなどの賃貸不動産についても、ここ10年で1棟しか建設されておらず供給が不足しているため、就職や結婚を機に親もとを離れる人たちが町内で物件を探しても選択肢が限られ、結果として他の自治体へ転出している実態もあります。これらをふまえて賃貸物件のニーズは高いと考え、事業化の可能性があると判断しました。

※第7次南知多町総合計画 第4期アクションプラン(案) P.14
  空き家バンク相談件数より

https://www.town.minamichita.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/004/349/r6006-akusyonpuran.pdf

事業内容を発表後、資金計画も多少検討済みであったため、集合研修で発表する事業計画としてはある程度できているとコーチからフィードバックを受けました。しかし、以下のように続きます。
 
「今回この住宅政策をやって、将来的にはここのエリアをこういう風に変えていきたいとか。今やろうとしていることっていうのは、結局自らがそこに投資をして地域全体が良くなることによって、その投資したものがもっと効果を発揮するみたいなところが出てこないと、ちょっと面白くないなっていう話なんだよね。」
 
「あと、この空き家対策モデル案ってのが悲しいのは、すごくネガティブな話を解決するために自分が一肌脱ぎますみたいな話だから、それは人生を賭けるにはもったいないなと思って。」
 
「ネガティブな要素でやるんじゃなくて、もっと明るい未来に向けてのストーリーのためにこの一軒家をやりますっていう。手段はストーリーが変われば違う武器になるから、もう少し明るい未来に向けての手段の方がいいなと思いました。」
 
「役人の頭を捨ててください。役所っぽいよね、すごくね。」
 
コーチの言葉が頭の中で何度も繰り返します。面白くない…。そう、面白くないのです。ふと、前職で空き家対策担当を務めていた時に、老朽化した空き家がいつ崩れてもおかしくない中で怯えながら過ごしていた日々が思い出されました。この事業は、自分自身のネガティブな感情から生み出されたものであることに、今ようやく気がつきました。頭の中が、公務員であった時の責任感にいまだに囚われている…。
 
しかし、コーチのフィードバックに対して、自分の口から出た言葉は、「役場ができないなら自分でやるという想いがベースにあった」と、言い訳じみたものでした。この後に及んでまだ自分の考えを正当化しようと固執している感じがして、我ながら情けない限りです。
 
そんな私にコーチは温かい言葉をかけてくれます。
 
「そこまで請け負ってやる必要はないと思うよ。それよりイケてることをやったほうがいいよ。それでたくさん税金を払ってあげて。」
 
「面白いことをやっていたら、自ずとこのことは補完されるから。ほっといても人が集まってきて、ちゃんと資産として活用してくれる人が出てくるよ。」
 
本当に素晴らしいコーチに巡り会えたと思いました。稚拙な内容であったとしても、今できることを必死になってアウトプットしていれば、一緒に考えてくれて、こちらの想いにしっかりと答えてくれる。改めて都市経営プロフェッショナルスクールの良さを感じました。
 
コーチ陣が南知多町の現状から感じとった事業のポイントは、海岸沿いの高額の不動産取引、海岸沿いの公共施設との公民連携の可能性、都市近郊型のオーガニック農業と飲食業のポテンシャル。これらを組み合わせて、高付加価値な生活を求める人たちに、新たなライフスタイルを提案するというもの。そこに加わる面白い人たちが必ずいるはずなので、一緒にやるメンバーをもう少し幅を広げる必要があるとのこと。
 
また、現状の空き家をリノベーションするプランでやるなら、住宅と商売がセットになったような、古民家を使った新しいライフスタイルを提案した方が面白いとアドバイスしていただきました。
 
確かに、すごく面白いし、地域で稼ぐという点でも明るい未来が広がることがイメージできる。ほんの少しの情報を手がかりにドンドン深掘りをして事業戦略の仮説を瞬時に作り上げるのを目の当たりにしたので、コーチの凄さを実感するとともに、聞き惚れていました。
 
ただ、それと同時に少し心がざわつきました。
 
「あれ?今面白いと思ったのは自分の本心なのか?また誰かの顔色をうかがっているのではないか?」
 
心の奥底でモヤモヤしたものがドンドン大きくなっていきます。コーチのアドバイスを面白いと思ったことと、空き家対策をなんとかしたいと思ったことの、どちらが自分の本心なのだろうか?
 
自分の価値観が大きく揺さぶられたことで、事業に着手する前に、自分自身と真剣に向き合うことになりました。

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