本当にやりたいことってなんだろう?〜事業が迷子になりました〜
都市経営プロフェッショナルスクールのオンラインゼミをとおして思い知った自分自身の大きな問題。自分は外的要因に影響されやすいことと、自分が考えていた事業が面白くないこと。
9月の集中研修に向けて、事業内容をブラッシュアップしなければならないのに、この二つの問題についてモヤモヤした想いが立ちはだかります。一体どうやって、向き合っていくのか…。
とはいえ、期限は迫っているので作業を進めなければなりません。
実証実験のメンバーとの再会と自分の中の違和感
3回目のオンライゼミで、自分の事業が面白くないという致命的な指摘を受けた翌日、今回の事業内容のベースになった前職での実証実験でお世話になった方々に会いにいきました。うつ病で引きこもっていたので、1年ぶりの再会です。
実証実験のメンバーにうつ病で急遽退職してしまったことを謝罪しつつ、お互いの近況を報告し合います。みなさん相変わらず人間的にも素晴らしい方々なので、社会貢献のために、実験の成果を駆使してさまざまな活動をされています。
そして、実証実験を行なった技術については、事業化に向けてさらに進展しており、新たに社員を迎えるなど体制も強化して、全国各地で試験施工を実施しているとのこと。
また、実証実験で試験施工した空き家も今後活用していく予定があるとのことでした。私が連絡を取らなかった間に、状況が大きく変わっていましたので、会話の節々に相手との距離を感じてしまいます。
そんな中、自分が考えている事業内容を切り出します。今回の面談の目的は、自分が検討している事業に協力してもらえるかどうか打診するつもりでしたが、昨日の指摘が頭から離れずモヤモヤしている状態でのプレゼンなので、なかなか気持ちが入りません。
相手のほうに目を向けると不信そうな顔をしています。そして、「これは事業投資の案件ですか?」と質問されます。
「そうです」と答えようとした時に、ある考えが頭によぎり、とっさに口をつぐんでしまいました。
この時に、私が退職したことで追加の実証実験ができなかったことや、試験施工後の空き家の対応を押しつける形になってしまったことに対する罪悪感が自分の中にあることに気づきました。そして、そのことが自分の事業内容に影響していることに気づいて、我に帰りました。
そして、一呼吸置いてから、「いいえ。将来的にこの技術が商用利用できる際に活用させていただきたいです」と回答してしまいました。その後は、この技術の実用化に向けた今後の流れを共有して、お互いにまたの再会を楽しみにしながら、笑顔で別れました。
まだ公務員の時の考えに支配されている…
実証実験のメンバーとの会話の中で、自分自身が罪悪感に囚われていたことに気づいたことで、空き家対策に対する見方も変わってきました。
「これって本当にやりたいことなの?」
思い返せば、前職で空き家対策を必死になって取り組んでいたのも、公務員としての義務感によるものだったのかもしれません。
倒壊寸前の空き家の隣で怯えながら暮らす人、生活すらままならない状態で倒壊寸前の空き家の対応を求められる人、空き家の相続をめぐって親族がバラバラになってしまった人など、空き家のせいで不幸になった人たちと日々接する中で、行政としてできることがあまりに限られている現実に義憤を感じながらも、結局は何もできない自分自身の無力さをいつも責めていたのだと思います。
「こんなネガティブな想いがベースの事業を誰が面白いと思ってくれるのだろうか?」
「そもそも自分自身が面白がっていない事業に誰が協力してくれるのだろうか?」
そんなことを考えながら、せっかく名古屋方面に来ていたので、ランチも兼ねて、その足で春日井市勝川にある「ままま勝川」と「TANEYA」に行ってきました。
どちらも木下斉さんが関わった事業で、平日にも関わらずお客さんも多くいて、素敵な空間が広がっていました。
「地域を活性化させる面白い事業ってこういうことなんだろうな…」
そう思いながら、「TANEYA」にある「カフェ百時」で食べたチーズケーキとコーヒーは、やたらとうまかったです。
発表資料は作ったけれども…
さて、自分自身のやりたいことが迷子になってしまいましたが、時間は待ってくれません。コーチからのアドバイスにもとづき、現状の事業内容を商用利用できるプランに方向転換します。事業のイメージは、先日訪れた「TANEYA」です。
ここでふと疑問が湧きます。商用利用とするならば別に空き家を改修しなくても、既存の空き店舗などを活用すればいいのでは?そうすれば、ベースが整っているので初期投資を抑えることができる。
特に南知多町では一部を除いて公共下水道を整備していないため、合併処理浄化槽を設置することになるのですが、空き家を住宅以外の用途に変更すると処理対象人員が大きくなり、浄化槽の規格も大きくなってしまうため、設置費用も維持管理費も高くなってしまいます。
そのため、北九州市小倉魚町地区を始め、全国で実施されているリノベーションまちづくりで用いられている「現代版家守」(※1)の手法を参考にして、「家守会社」を軸にした事業内容に変更しようと考えました。
この「家守会社」が不動産オーナーと賃貸契約し、小規模なプレイヤーをテナントして集めて転貸することから始めて、徐々に集客数を増やしながら地域の消費活動を高め、そのニーズに基づいてさらに出店者を募って周辺の物件も開発するサイクルを回すことで、対象とするエリアの不動産投資を促すというイメージです。
私が事業を想定している地域にテナント募集中の空き物件があったので、まずは、家賃や条件を確認します。都市圏内の相場として、家賃の坪単価は、衰退している地域にしては若干割高感がありましたが、この地域において中心になる場所に位置しており、今後の事業の広がりも見込める物件でした。
しかし、転貸不可とのことで、家守事業としては使用できません(本当はここでやりたかった…)。やむをえず、当初の予定どおり空き家を改修したプランに切り替えます。
まず、活用を断念した空き物件を仮想の競合として、賃料を下げて絶対家賃の坪単価を決定します。そこから、地域内によくある旧耐震基準の木造二階建ての空き家を想定して、満室時家賃収入(GPI)を算定します。
後は、5年でローンの借入(Debt)を返済するとして、『ハーバード式不動産投資術』(上田真路 著)の「BOE分析」(※2)を参考にしながら、ローンの借入利率(Interest)、空室率(Vacancy)、事業運営経費(OPEX)を厳し目に設定しながらも、ローン後キャッシュフロー(CFAF)がマイナスにならないよう、総開発費(TDC)とローンの借入を試行錯誤しながら調整します。
結果として、ローンの借入比率(LTV)を80%程度としても、投資可能な自己資金(Equity)の範囲内で、浄化槽の入れ替え、水回りの改修、耐震改修がなんとかできそうな総開発費に収まったため、事業計画の体面は保つことができました。
しかし、なぜこの事業をやるのか、この事業の先にさまざまな地域課題を解決する明るい未来があるのかについて、明確に説明することができません。
また、どういったテナントに利用してもらうかも決めていないため、仮にSOHO(Small Office Home Office)事業者向けの物件として運用するなら、テナントの電気利用状況によっては、電気容量を引き上げるために追加で設備投資もしなければなりません。
何より、現状では自分の想いが全くこもっていないのです。これは完全に、手段から事業計画を組み立ててしまったことによる弊害です。自分が望む明るい未来に向けたまちづくりのビジョンと、ビジョンの実現に必要なコンテンツがないのです。
「このまま発表するのか…」
自分がどうしたいのか、もんもんと悩んでいるうちに、あっという間に集合研修の日を迎えることになりました。