ルーフトップコンサート
IMAXシアターで5日間の限定上映の
The Beatles『GET BACK』-ROOFTOP CONCERT-
観て来ました。
ビートルズ最後のライブ。1969年の1月30日、ロンドンのアップル社屋上でゲリラ的に行われた、ライブレコーディング&撮影のためのライブ、"ルーフトップコンサート"。
この有名なライブの映像は今までも、映画『LET IT BE』やドキュメンタリー『ANTHOLOGY』でその一部を観ることができたものだけれど、ディズニープラスで昨年末から配信されている話題のドキュメンタリー『GET BACK』の中でついにその全てが公開された。
そしてそのルーフトップコンサートの部分がIMAXシアターでの劇場公開用に編集され、日本では2月9日〜13日の5日間、IMAXシアターで限定上映された。
そもそもドキュメンタリー『GET BACK』はコロナ禍を受けて劇場公開を中止しディズニープラスでの独占配信に切り替えた(らしい)というのに、今度はそのハイライトとなるライブ部分を劇場(IMAXシアター)で、しかもこのタイミングでたった5日間の限定公開だと?…と憤ったファンも少なくないかもしれない。でもそれよりも、あのルーフトップコンサートを、劇場で、ハイクオリティのIMAXシアターで体感できるのか!という歓喜の方が圧倒的に多かったのではないだろうか。
僕は悔しくも行けるタイミングがないかな…と思っていたけれど、急遽最終日に行けることになった。しかし近場ではもうチケットが取れず…県外まで足を延ばして観て来た。
配信中のドキュメンタリー『GET BACK』、そしてこの『GET BACK 』-THE ROOFTOP CONCERT-とは…っていう話は調べればいくらでも出てくるはずだし、どこから説明したら良いのか考えるだけで途方に暮れてしまうので、ここでは説明なんてしないけれど…。
そのルーフトップコンサートの一部や解散間際のビートルズの映像も収められているドキュメンタリー『ANTHOLOGY』が日本でテレビ放映されたのが1995年の大晦日。当時僕は16歳の高校1年で、バンドを組んでちょうど音楽を作り演奏することにのめり込みまくっていた頃で、今のようにYouTubeなんてない時代、VHSに録画して繰り返し観た。元々大好きだったビートルズの演奏シーンがとにかく強烈に印象に残っている。
どの時期のビートルズが好きか?と聴かれたら、もちろんどの時期も好きだし本当に悩むけど、やっぱり「後期」と答える。家で流れていたビートルズは『THE BEATLES(ホワイトアルバム)』、『ABBEY ROAD』、『LET IT BE』が多かったからか、聴くだけで郷愁すら覚えてしまう。
だからこそルーフトップコンサートは僕にとって特別なものなのだ。
THE BEATLES
『GET BACK』 ーTHE ROOFTOP CONCERTー
IMAXシアターで観るルーフトップコンサートの完全版。
今までなんとなく映画のワンシーンのように感じていたルーフトップコンサートだけど、それは本当にあった出来事なんだと、初めて実感できた気がした。ポールを初めて生で観て、本当に存在したんだと感動したときの感覚に近いかもしれない。
音の臨場感は素晴らしかったし、映像がとにかく綺麗で細部までよく見えた。メンバーの顔のシワまでよく見えるから表情がとても生々しいし、楽器や服装の色や質感も良くわかった。
曲を始める前にチューニングしたりフレーズを確認したりしているシーンや、何の曲だったか一発目の音をジョンが違う曲を弾いてしまい、笑ってやり直すシーンなんかには、とてもリアルを感じて胸が熱くなった。
ポールがとにかく良い表情をしていた。屋上に出て来た時は冴えない顔をしていたのに演奏が始まるや否やこんなに良い顔して、やっぱりライブは楽しいんだよなっていうのがビンビン伝わって来てこっちが嬉しくなった。
そしてこの頃のポールの音楽的センスの爆発ぶりが、表情と、歌と、立ち振る舞いに溢れ出ていた。ポールのミュージシャンとしてのすごさに圧倒された。
そして何よりバンドとしての演奏の素晴らしさも、より堪能できた。
痺れた。
これも今までは、"良いに決まっている"という思いがどこかにあったけれど、その演奏を身体で浴びて、今まで思っていた以上に、率直に単純に素晴らしい演奏に打ちのめされた。本物のビートルズだから云々ではなく、一つのバンドのライブとして、一つの音楽として最高のものだった。
後期のビートルズはレコーディングアーティストという印象がどんどん強くなっていったけれど、ビートルズはそれ以前に最高のライブバンドだった。
ライブバンドとしての素晴らしさは『Live at the BBC』を聴いてもよくわかるけれど、そのBBCは1963年、デビュー直後のライブ音源だ。そこから世界のトップアーティストとしてキャリアを重ね、各々が音楽的に成長した4人が、生で交えた演奏。音楽のうまみがギュッと詰まった、というより、そのうまみをとてつもない勢いで発散しているような演奏だった。
もしかしたら、ライブをすることなく解散に至っていてもおかしくなかったビートルズ。最後にこういう形でライブ録音を残してくれて本当に良かったとしみじみ思った。
このルーフトップコンサートの体験は、ずっと大好きだったビートルズを、もっともっと好きにさせてくれた。
上映終了後、感動に包まれながら、音が出ない程度に(恥ずかしいので)拍手をしていた。
きっとみんな同じ気持ちだったのか、場内には自然と拍手が湧き上がった。
それがまたさらに感動に追い討ちをかけた。
会場を後にし、感動の大波が去って落ち着いた頃に最初に湧き上がった感情は、感謝だった。
ビートルズに、この映像に、この体験ができたことに、感謝。
そしてビートルズを好きにさせてくれた両親への感謝。
僕はリアルタイムには程遠いけれど、それでもまだビートルズを近くに感じられる世代であることを嬉しく思う。
ビートルズは、宝物だ。
ミュージシャンの端くれとして、自分の中にビートルズの血が確かに流れていることを誇りに思ったし、これからも大切にしながらやっていこうと改めて胸に誓った。