とあるUXエンジニアの働き方
クックパッドのクリエイション開発部の村山です。
2019年11月にクックパッドに入社した2人目のUXエンジニアです。(もう一方は重田( @sagaraya )です)
今回はUXエンジニアってあまり見ることのない職種なので、自分の仕事や職種への考え方を紹介したいと思います。
はじめに
自分のことを簡単に紹介します。
一言で言えば「HCD(人間中心設計)を学んでいたエンジニア」です。
仕事はチームや会社で必要なことをやる感じでこなしてきたのでいろいろなことを経験してきました。
- フロントエンド/バックエンド/iOSアプリ
- DWH/ETLの保守運用
- ユーザインタビュー設計/実施
- 新規事業の事業責任者
- ベトナムでのオフショア拠点立ち上げ
サービスに関することを広く、網羅的に携わってきました。そのため、どんな技術で作るかとか手法で作るかとかではなく、「どんなユーザーにどんな価値を届けるか」に興味があるので、マーケッター的な考え方なのかもしれません。
「UXエンジニア」という職種への考え方
プロトタイピングする人とかデザインとエンジニアリングをつなぐ人など言われていますが、自分の場合は都合よく使っている気がします。自分の得意な領域を説明するのに「UXエンジニア」というのは伝わりやすいからです。
「エンジニア」という職種で働いていると、会社やプロジェクトによると思いますが、どうしてもプロジェクトのオーナーやディレクターがいて「考える人」「作る人」と線を引かれがちな気もしています。
- この機能作りたいんだけどすぐできる?工数は?
- 進捗どう?いつリリースできる?
エンジニアですから当然、実装リソースとして見られるので作ることを優先しがちです。そのため、企画段階でなく設計から携わることも多いですし、実装仕事だけを長く続けていくと、余計に分業の線を越えられない状況が生まれてきてしまいます。
前の職場を退職する時に近くで働いていた方々に、UXエンジニアにチャレンジしますと話した時に、「デザインとかやられるんですね」「リサーチとかできるんですね」と言われた時に、目の前の仕事だけでなくちゃんとアピールしないといけないなと思いました。(これは異動を数度して採用した人たちと離れて仕事をすることになったりしたことも要因なのですが)
なので「UXエンジニア職」は「実装だけじゃないぞ」「体験設計もやるぞ」という決意表明でもあり、チーム的にも理解してもらいやすい、交渉コストが下がるというのも自分がこの職種を選んでいる理由でもあります。
本当は「UXデザイナー兼エンジニア」とかなのかもしれないですが、世間で考えられるUXエンジニア像が固まってきたらその時に考えることとします。
入社後のお仕事
入社して4ヶ月。
最初はデザイン戦略部という全社横断の組織に2ヶ月在籍しました。そちらではUXデザイナーとして、スマートキッチン事業部の調味料サーバー「OiCy Taste」のプロジェクトのお手伝いをしました。
その後クリエイション開発部というクックパッドのレシピやつくれぽ投稿を促進する組織に異動してデータ分析や、ユーザリサーチの仕事をしています。
その中のお仕事をいくつかご紹介します。
1. データを集めて、ユーザー行動を可視化する
課題
クリエイション開発部が新規で立ち上がった部署だったため、ユーザー行動やKPIをウォッチするものが存在していない状況でした。DWHにあるトランザクションデータやログデータを基にTableau上に可視化してチームや事業部でチェックできる状況を作る必要がありました。
やったこと
業務仕様や当時のログ設計などを掘り起こしながら可視化を行いました。
直近行ったiOSの大規模リニューアルのアップデート前後での数値変化のトラッキングや、先日開放した人気順検索関連のメディア取材やプレスリリースなどに必要な数値集計なども一部担当させていただきました。
2. ペルソナを見直して想定ユーザーに対する目線を揃える
課題
OiCy Tasteチーム内での意思決定において想定しているユーザー像がメンバー間でズレていると感じたのですり合わせする必要があると感じました。既存のペルソナがあるものの、スマートキッチン事業部の他のプロダクトでのインタビュー内容を組み合わせたもので整理する必要がありました。
やったこと
すでに作成中のプロトタイプでプロジェクトが進行していたので、通常のフローとは逆の形でユーザ像を正しく整理して落とし込むことをやりました。プロダクトがどういったユーザの課題を解決するためのものなのか、プロダクトを利用するための制約条件を参加者で出し合い定めていきました。
例えばインターネットリテラシーの部分は気になっていました。スマートキッチンデバイスなので本体を自宅のWi-fiに接続できないと利用できないのですが、インターネットの設定できないユーザーは利用者ではない定義がされていました。制約としては「接続できないと利用できない」ということなのですが、ステークホルダーである同居人の誰かが設定できれば必須条件からは外せるのではないかということを整理していきました。
また、スマートキッチンデバイスを置く環境などに着目してキッチンの広さや世帯年収感もイメージしました。
想定している利用シーンや機能に合わせてシナリオを作ってユーザビリティテストで利用できるようにディレクターの方に準備していただいています。
イメージ
開発中の機能が含まれるので検討時に議論した内容の一部を紹介します。
3. 見つけた課題や仮説に対して解決策を提案する
課題
つくれぽ投稿が活性化するような仮説がいくつか見つかったので、解決案をいくつか出して実装方針を決めていく必要がありました。
やったこと
いくつかの施策案のブロックの中でそれぞれが課題に対するソリューションスケッチを持ち寄って議論して実装したりプロトタイプを作る施策を決めています。
本当に簡単にA4の紙にラフに書きこんで持ち寄ります。チームの中にはiPadでスケッチしたものを持ってこられる方もいます。
このスケッチを書く前に施策の課題や現状調査や把握が入るので、大きくズレたアイデアを議論することは少なく進められています。
イメージ
こちらは雑に提案した自分のソリューションスケッチの一つです。このようなアイデアを3-4案ほどメンバーで持ち寄り投票して方向性を定めていきます。
4. プロトタイピングを作って仕様やユーザー体験を見える化して改善する
課題
OiCy Tasteの新しいプロトタイプの機能を画面に落とし込めていないので画面設計する必要がありました。
やったこと
figmaを利用してスマートキッチンデバイスの操作アプリの画面を検討しました。デザイナー、アプリエンジニア、バックエンドのエンジニアがいましたので、ビジュアルデザインの手前まで作りました。
仕様が決まっていない点があったので、プロダクトオーナーやデザイナー、エンジニアと作成した動くプロトタイプの画面を見せながらディスカッションを行いました。
イメージ
こちらは採用しなかった画面ですが、いくつかパターンだったりを作成しました。
UXエンジニアとして感じた組織の課題
少ないですが、いくつかのプロジェクトに入ってみて、料理というプロダクトの性質上、やはり自分の価値観とユーザの価値観を重ねがちになってしまっていると感じることが多いです。利用ユーザーも一般的なサービスよりも多いですし、利用シーンやITリテラシーの部分も多様であると考えます。
定性的なデータ、定量的なデータを見て正しく現状を捉えられるように取り組むことが今は大事だと感じます。
例えば自分が携わっているつくれぽですが、その料理を作った人でないと書けない、投稿対象者ではないわけですから、その人達へのメッセージングと利用者全体へのメッセージングは意識しなければいけなくて、そういった対象ユーザやコンテキストの違いに関することをMTGではよく発言しています。
おわりに
今まではリサーチからデザインまでの業務を多くこなしてきました。今後はiOSアプリの実装も行ってく予定です。
また、会社のUXエンジニアのキャリアについても考えて作っていかなければなりません。もう一方のUXエンジニアの重田は新規事業のチームにいます。自分はレシピ事業のチームにいて社内の関わるメンバーが非常に多いので、違いを生み出して認知してもらえるように取り組まなければいけないと感じています。
重田の考えるUXエンジニアと自分がここに書いた考えも違うことも重なっていることもあると思います。
自分自身はUXエンジニアとはデザインもやりたいエンジニアとかではなく、チームやプロジェクトが提供するサービスの価値やスピードを高めるために、ユーザーやユーザー周辺の人々の視点を持ってリサーチ/デザイン/エンジニアリングに横断的に取り組む仕事だと考えています。
これってUXエンジニアじゃないよねと思ったら、その時に考えることにします。
UXエンジニア職に興味を持ったり話を聞いてみたい方いらっしゃいましたら、ぜひご応募、お問い合わせください。