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総合型地域スポーツクラブでのコーチキャリアの積み方

 多種目・多志向・多世代という環境は、総合型地域スポーツクラブで働くコーチにとって最高のチャンスです。

 どうも、ふじみスポーツクラブの上杉健太(@kenta_u2)です。埼玉県富士見市で、誰もがいつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる地域社会の実現を目指して、総合型地域スポーツクラブの運営をしています。

 今日は、コーチとしての私のキャリアを少し振り返ってみたいと思います。ふと思い返してみると、整理して言語化しておくと面白いことが分かりそうな予感がしたので。

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 総合型地域スポーツクラブにジョインした私は、2か月後には自らテニスのコーチとなってテニス部門を立ち上げたのですが、それまでの期間に何をしていたかというと、『クラブの全ての活動に参加する』だったんです。

 実はこれは、コーチのキャリアのファーストステップになっていたなと思うんですね。コーチになる前に、『良い生徒になる』というプロセスです。『良い』というところがポイントです。コーチの一挙手一投足を見て、コーチの言葉を一言一句漏らさず聞き、忠実に動く。そんな良い生徒になるんです。

 当時の私は、良いコーチになるためにそうしていたわけではなく、マネジャーの立場で自分のクラブのコンテンツを理解する為に良い生徒になっていたのですが、実はこれがコーチのことをよく観察することに繋がっていたのではないかと思います。

 太極拳、陸上、ヨガ、フットサル、健康体操・・・。当時のクラブにあった活動全てに良い生徒として参加しましたから、本当に色々な指導や現場のマネジメント(時間の使い方や練習の回し方、人の動かし方など)を経験しました。これは凄い財産になっていると思います。総合型地域スポーツクラブだからこそできる経験の積み方ですよね。

 総合型地域スポーツクラブでコーチをやろうとする人は、まずはファーストステップとして『全ての活動に良い生徒として参加する』をやってみるといいと思います。

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 次に私がやったことは、『アシスタントコーチになる』です。なかなか大人向けの教室でアシスタントになる必要性がなかったので、子供向けの教室限定になりましたが、陸上(かけっこ)とフットサル、ニュースポーツの3つの子供向け教室でアシスタントを務めさせていただきました。

 私はマネジャーに軸足を置いている人間ですから、よくコーチのアシスタントをしています。その時に大事にしていることは、『メインコーチを立てる』です。メインコーチと対立する考えは発信せず、技術的な指導などはメインコーチが言ったことなどを繰り返すようにしています。

 そのように振舞うと、自然とメインコーチと同じような行動をとることになります。これは私のコーチキャリアにおいて、『良いコーチの真似をする』というステップになっていたなと思います。

 実はアシスタントになる機会は今でもたくさんあるので、私はずっと色々なコーチの真似をしながら色々な指導方法などの吸収させてもらい続けてきていることになります。

 さらに面白いのが、ある程度コーチとしてスキルと経験を持った状態でアシスタントをやっていると、「自分ならこうするな」「これはもっとこうしたらいい練習になるな」とか、アイデアがすごい出てくるんですね。そして、自分がメインコーチの現場でそれを試してみる。さらにその結果をまたアシスタントの現場にフィードバックして、メインコーチの狙いがもっとよく出るように補助する。そういう好循環が生まれていくんです。

 アシスタントコーチのように、現場で『良いコーチの真似をする』というのは、コーチとして成長し続けられる最も効率的な方法かもしれません。少なくとも、コーチとして自立する前に必ず踏んだ方がいいステップだと思います。

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 『全ての活動に良い生徒として参加する』、『良いコーチの真似をする』の次に私がやったことは、『自分がメインコーチの現場を作る』でした。いよいよテニス部門の立ち上げです。自分がメインコーチとして立ち上げ、小学生と初心者の大人の指導をしました。ここからが本番と言ってもいいでしょう。生徒の立場から見るコーチ、アシスタントの立場から見るメインコーチと、実際にやるメインコーチは全然違うものだと気が付きます。仕切りをしながら、アシスタントコーチも動かさなければなりませんし、常に生徒の動きや表情も観察しなければなりません。そしてトラブルがあれば全て自分の責任で対処をします。正直、どのような現場でもメインコーチはとてつもなく疲れます(;^_^A

 完璧なコーチなどいないように、現場では常に反省点が見つかります。「あそこはこうやって回せばよかったな」「あの声掛けはいらなかったな」「もっとあの子の名前を呼んであげなきゃいけなかったな」。反省点は毎回嫌というほど出てきます。これこそがメインコーチの財産です。責任感が薄れてしまうアシスタントコーチの立場では感じにくい改善の必要性を、メインコーチは感じることができるんです。そこを改善しないと自分がいつまでも大変だし(笑)

(※もちろん、アシスタントコーチにしか気づけない改善ポイントもたくさんある)

 この時、反省点がたくさんあるということをネガティブに捉えてしまうと大変です。「自分はコーチとしてまだまだだ・・・」とか、「コーチ失格」などと思ってしまうことにも繋がってしまう。反省点があるのは当たり前で、それを改善に繋げていく。その姿勢こそがメインコーチとして現場に立つ際に必要なことだと思います。この姿勢さえあれば、現場に立つことは永遠の学びの場を得たと言っても過言ではありません。

 個人的には、あらゆるステップをすっ飛ばしてでも、現場に立てるのであれば立ってしまった方がいいと思っています。どうせいくら学んでも、経験を積んでも、反省なんて尽きないのですから、さっさと現場に飛び込んでしまった方がいいんです。できれば、自分に責任がある状態で。そこで実践と学びを繰り返していく。メインコーチになってからが本当のスタートですね。

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 何も学びは現場だけでするものではありません。時には一般化された方法論を学ぶことも大事ですし、全く違う環境に行くことも大事だと思います。それができるのが、講習会とか勉強会とかですね。資格を取るのもいいと思います。私も1年目には色々な指導者資格を取りました。コオーディネーショントレーニング、子どもの発達段階に応じた指導の資格、高齢者の運動指導の資格、マネジャーの資格(一応これも指導者資格として認められていたりします)など。正直に言って、あまり意味がないような講習会もありますが、現場を持っている状態で受けると色々な講義が実際の現場を想定しながら聞けるので、学びの効果を高めることができます。

 実はここは大事な部分かもしれません。現場を持ってから講習を受けるか、現場を持つ前に講習を受けるか。どちらにもメリット・デメリットがあるのだと思いますが、私は現場を持ってから受けるべきだと思います。やはり、学びの必然性が段違いだと思うからです。現場を持っていない状態で学ぶと、どこかちょっと上滑り感があるんですよね。「勉強になりました。でもこれをどう使おう・・・」という感じ。「あ、これはあの場面で使えるな」とすぐに思えるのとは、やっぱりちょっと学びに差があるなと思うんですね。

 そういう意味でも、講習会などで学ぶことよりも現場に出ることの方が優先順位は高いと思います。でも、現場での学びがある程度落ち着いてきたら、講習会に出ることはおススメです。

(※中には、資格を取ってからでないと指導できない現場もあると思うので、その場合は講習会が先ですね)

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 ここから先は、『とにかく学び続ける』という段階に入ると思います(笑) それがコーチというものですね。指導対象が変わればまた違う学びが必要になりますし、嫌でも現場には学びが落ちまくっていますから。

 講習会などの勉強機会も持ち続けるといいと思いますが、なかなか現場が忙しいと行けなくなってきたりもします。そんな時におススメの学び方法が、『SNSでの交流』です。特にTwitterがおススメですが、Twitterでは色々な種目のコーチが自論を発信されていて非常に面白いです。匿名アカウントのかたも多いので、そこには飾らない本音があったりもします。学びに向かう姿勢として大事なことは、『とにかく新しい情報をインプットする』だと思っているので、そういう意味では雑多な情報で溢れているTwitterは最高です。正解を探そうとするのではなく、情報のシャワーを浴びに行く感覚ですね(笑) そこから自分もやってみようと思うメニューや、取り入れたい考え方などを得て、自分の現場で試してみるんです。常に実験思考を持ち続けることができ、成長に繋がっていくと思います。

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 最後にまとめると、私が総合型地域スポーツクラブでコーチになったプロセスは以下のようになります。

①全ての活動に良い生徒として参加する。
②アシスタントコーチとして現場に立ち、良いコーチの真似をする。
③自分がメインコーチとなり現場に立つ。
④講習会などに参加する。
⑤SNSで他の指導者と交流する。

 このプロセスは、順番が大切なわけではないです。むしろ、全部やり続けるくらいがいいんです。人間、固定化すると学びが少なくなるものです。立場を変え、環境を変え、ツールを変えることで得られる学びは確実にあります。時には自分が生徒になる。時にはアシスタントとしてやってみる。時には違う現場へ行く。時には全く知らない人と話してみる。そういうことで得られる学びがあるし、学び続ける為には全部やらないと停滞すると思います。

(※学ばなくなったコーチは、固定化された自分の枠組みに生徒をはめ込むことしかできなくなる)

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 ということで今回は、総合型地域スポーツクラブでコーチになるプロセスを実体験からお話してみました。やっぱり総合型地域スポーツクラブはコーチとして成長するのに非常にいい環境だと思います。もしここに総合型地域スポーツクラブで指導をされているコーチがいるなら、他の種目の活動に生徒もしくはアシスタントコーチとして参加してみると面白い学びがあると思います。一度メインコーチになってしまうと、アシスタントコーチになるのが嫌に感じるかもしれませんが、大きな学びは確実に得られると思います。よかったら試してみてください。総合型地域スポーツクラブという仕組みを活かす一つの方法だと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5