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部活動の地域移行を整理してみるpart1「地域移行したい理由」
どうも!上杉健太です。
埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をやったり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。ガンプラが完成しそうです。
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さて今日は、『部活動を地域移行したい理由』というテーマでお話したいと思います。最初に断っておきますが、僕は部活動の地域移行について詳しいわけでもなく、具体的なアクションをとっているわけでもなく、ただただ一総合型地域スポーツクラブの運営者として少し気にしているレベルの人間です。そんな僕の目にも、部活動の地域移行に関する情報がどんどん入って来るのが近年のSNSで、色々な立場のかたが実に色々な意見を発信しています。これは立場やその人の経験によってだいぶ意見が変わるなと思うことが多々あるので、今日はちょっと勝手に整理してみようと思ったわけです。
まず、部活動の地域移行のステークホルダーを、以下の5者にしてみます。
学校運営者(校長・教育委員会など)
教師(部活動の指導者)
行政(自治体・スポーツ振興課など)
地域スポーツ団体(総合型地域スポーツクラブ・民間クラブなど)
生徒(生徒自身・保護者など)
その上で、それぞれの立場にとって部活動の地域移行とは何なのか、順番に考えていきたいと思います。あえて学校運営者と教師を分けたのは、明らかに違う理由がありそうだからです。特に、部活動を学校内で行いたい教師は一定数いて、強い熱量を持っていそうだから、”学校”と一括りにしない方が分かりやすくなるだろうなという読みです。
地域移行の必然性や理由
部活動の地域移行にはそれぞれの事情があり、それが上手く嚙み合っていないところがあるように感じています。そこで、まずはステークホルダーごとの”部活動を地域移行する必然や、地域移行したい理由(メリット)”で整理してみたいと思います。
学校運営者(校長・教育委員会など)
まず学校運営者としては、業務が多くなり過ぎていて、従業員である教師に過重労働を課してしまっているという課題があると思います。これは少し前にSNSで『#教師のバトン』という投稿がブームになったことなどで顕在化しました。これによって教師になりたい人材が不足しているという問題も出てきていて、学校運営者としては看過できない状態でしょう。つまり、学校が抱えている業務を整理=減らす必要があり、部活動がその一つとして考えられているということです。
さらに少子化も無関係ではいられません。地域移行するかどうかの前に、部活動を1校で成立させていくのに十分な生徒数が確保できない状況にある学校も多くなってきていて、そのような学校は今後ますます増えていきます。色々な学校の生徒を集めることができる”地域”へ移行しようという理由がここにもあるのでしょう。
お金の問題も考えられます。部活動の顧問を半ば強制的なボランティアレベルで教師に押し付けていたという見方がされてしまうほど、部活動に関する業務にはわずかな手当しか出ていなかったと言います。それ以前に、教師には残業代も出ないようです。このあたりの問題をここで深掘りするのは避けますが、もしも一般企業のように労働基準法に則るような形に教師の報酬が支払われるようになるとしたら、部活動の運営には大きなコストがかかることになり、それを学校が抱えることは学校経営に大きな影響を与えることになります。政府や自治体からそれだけのお金(予算)が下りて来ればいいのでしょうが、部活動以外の予算を調整する必要性が生じたりすることだって当然あるでしょう。このあたりも、学校運営者が部活動を地域移行する理由の一つには十分なり得ると思います。
生徒への公平性の観点もありそうです。これまでの部活動は、その学校にあるものを選んで入部するというのが当たり前で、そこにあるかないかは、ある意味では運でした。越境して市内の別の学校へ行くこともできるようですが、その選択をする生徒は稀でしょう。部活動を地域に出すことによって、より広い選択肢から生徒は選ぶことができるようになる可能性が期待できますから、このあたりも学校運営者が部活動を地域移行したい理由になり得ます。
教師(部活動の指導者・顧問)
教師にある”地域移行したい理由”としては、まずは長時間労働の改善を挙げておきましょう。これは先ほど述べたので割愛します。
ただ、問題は時間だけではなさそうです。経験のない種目の顧問をすることで、プレッシャーに感じたり、保護者からクレームが入ったりと、精神的な負担も大きそうです。部活動を地域移行してそこから開放されるという理由は、一部の教師にとってはとても大きい期待かもしれません。
これと関連して、生徒に専門的な指導を受けさせてあげたいと考える教師も一定数いて、部活動の地域移行はそれを叶える可能性を含んでいます。
行政(自治体・スポーツ振興課など)
市区町村などのスポーツ行政としては、市民(中学生)のスポーツ活動の場をこれからも確保し続けるという義務感・使命感が最大の必然性でしょう。その上で、部活動が地域移行されると地域スポーツの活性化に繋がりますから、このあたりも”地域移行したい理由”にはなってくるかなと思います。ただ、本当に市民の生涯スポーツなどを積極的にデザインしていこうという自治体でない限り、部活動の地域移行は本当はやりたくないことなのではないかなと想像します(;^_^A 逆に、生涯スポーツ社会の実現を目指すなら、部活動の地域移行はスポーツキャリアの繋がりを作るチャンスとなります。部活動は地域によっては”義務的に”生徒に課せられている場合もあり、そこで辛い経験をした生徒は将来スポーツから離れてしまうことがあるからです。もちろん、部活動のおかげでスポーツの面白さに気が付いて生涯にわたってスポーツをやるようになる人もいるでしょうから、一概には言えません。
地域スポーツ団体(地域スポーツクラブ・民間スクールなど)
地域スポーツ団体からすると、部活動の地域移行は参加者・参加世代の拡大などのチャンスとなるでしょう。総合型地域スポーツクラブや少年団は、これまで中学・高校生年代を会員にすることが難しかったわけですが、その要因はもちろん部活動です。そこが地域移行されれば、地域クラブの拡大が期待されます。特に総合型地域スポーツクラブについては、その施策が始まった背景に、学校や企業から地域へスポーツを移行させるという考え方があったはずなので、まさに地域移行は望むところだ、といったところでしょう。
生徒(中学生や保護者)
生徒側の”地域移行したい理由”に関しては、「専門的な指導を」という声がよく聞こえてくるものかなと思います。地域移行したからと言って専門的な指導があるかどうかは確定していないとは思いますが、少なくとも学校の中だけで適任者を見つけるよりは可能性が高まるのかもしれません。
また、中には学校から外に出て活動をすることを歓迎する生徒もいるでしょう。例えば学校でいじめられている子、そこまでいかなくても、あまり学校が好きではない子などは、好きなスポーツを学校とは関係のない場所でできることに喜びを得るでしょう。もちろん、逆もあります。学校が好きで、学校の仲間が好きな子は、むしろ学校の仲間で固まりたいはずです。しかし地域移行されても、その願いはきっとかなえられるでしょうから、このあたりはWIN-WINになるかもしれません。
部活動は人によっては社会的な評価を得る為に行っている人もいます。学校の教師が顧問や指導者を担っているのですから、評価が付き纏ってしまうのは仕方がない部分です。人によっては、そこから開放された場でスポーツをしたいと思うでしょうから、そのあたりも生徒側の理由になるかもしれません。多種目に取り組めるようになるということも起きるでしょう。
それぞれの立場の”地域移行したい理由”まとめ
ここまでの話を半ば無理矢理にまとめてみると、地域移行をしたい理由としては、以下のようになるかなと思います。
学校(教師)の負担軽減と教育の質の向上
地域のスポーツ環境の整備と持続可能性の確保(生涯スポーツ社会の実現)
生徒がより良いスポーツ環境で活動できる機会の創出
本当は次にそれぞれの立場の”地域移行したくない理由”を考えていきたいところなのですが、今日はもう長くなってしまったので明日の回に送りたいと思います。ぜひ続き物としてお読みください。どの立場にも、したい理由としたくない理由があるので、この問題はなかなか進まないと思うので・・・(;^_^A
というわけで今日は、『部活動を地域移行したい理由』というテーマでお話しました。実に色々な理由がありそうだということが分かりましたね。
今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!
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総合型地域スポーツクラブ研究所
総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…
総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5