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部活動の『地域展開』という言葉が意味するもの。

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をやったり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。クラブは体験参加が増えてくる時期に入っております!

 さて今日は、『部活動の”地域展開”』というテーマでお話したいと思います。最近部活動の地域移行関連の記事を多く書いていて、僕は頑なに『地域移行』と表現していました。しかし実は、最近のスポーツ庁は『地域展開』という風に表現するように方針転換をしています。さすがに僕も、意図的とはいえ、これを知りながら触れずに『地域移行』と言い続けるのは誰かを騙しているようで気持ちが悪くなってきたので、テーマとして扱ってみたいと思います。

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『地域移行』から『地域展開』への変更

 まず、地域移行から地域展開という風に表現が変わったことをご存じないかたの為に、簡単に経緯をおさらいしておきましょう。

 令和6年12月10日に開催されたスポーツ庁と文化庁の有識者会議『地域スポーツ・文化芸術創造と部活動改革に関する実行会議(第2回)』において、部活動の地域移行を「地域展開」と表現することが議論されました。この変更は、学校と地域を対立的に捉えるのではなく、学校内で行われてきた活動を地域全体で支え、活動自体をより豊かで幅広いものにするという理念をより的確に表現するためです。
 具体的には、従来の「地域移行」という表現では、学校の部活動を単に地域に移すだけと受け取られる可能性があるため、地域全体で連携し、生徒たちの活動を支えるというコンセプトを強調するために「地域展開」という名称に変更することが検討されています。
 この名称変更により、部活動改革の理念を関係者間で共有しやすくし、生徒のスポーツや文化芸術活動の場を学校から地域へ広げ、地域全体で支える取り組みを推進することが期待されています。

 ちなみに、『地域移行』という言葉が使われ始めたのは2021年頃ですから、3年半ほど経って変更されたということになります。実はここが重要なポイントかもしれません。

”地域展開”の裏メッセージ

 最初の頃は、部活動の地域移行というのは、学校側はあまり相手にしていなかったような印象がありました。少なくとも僕には。しかし、なかなか「地域移行」という言葉がなくならず、地域によっては着々と進められているものですから、段々と「これは本当に地域移行しなければいけない流れになってきているぞ?」と意識を変える学校や部活動指導に熱心な教師が増えてきたのではないでしょうか?

 ご存じの通り、今の部活動の地域移行・展開の流れは、教師の働き方改革が大きなきっかけとなって生まれました。つまり部活動の地域”移行”は、半強制的に部活動指導をやらされていた教師にとっては最初から歓迎すべきものだったはずです。一方で、部活動指導にやり甲斐を感じていた教師には歓迎されませんでした。それこそ、”移行”はあり得ないと考えたことでしょう。生徒の指導や実際のマンパワーなどを考えても、学校や教師が完全に関わらなくなるよりは、関わる余地を残しておきたい。仕方なく地域移行を考え始めた学校や教師のそのような願いや思惑が『展開』には込められているように僕には思えます。

 実は僕は、さらにうがった見方をしてしまっています。「地域展開」という言葉を考えた時に、”展開”の中心にあるものは学校でしかあり得ません。学校が中心であり、地域はそれをサポートしたり、学校ではできなくなったものをやるようなイメージになる気がするんですね。ということは、学校はあくまでも学校として、教師はあくまでも教師として、地域移行・展開した後の活動に関わろうとしているように思えてきます。もしも見た目上は地域に展開されるようになったとしても、実は裏では学校や教師がこれまで通りまたはこれまで以上にコストを負担して支えるようになってしまったとしたら・・・。(※ゾっ)

果たして”展開”でいいのか

 正直、中学生の課外活動の担保という観点だけなら、それでいいと思います。しかしその形だと結局のところ、学校は下手に部活動を手放せないし、教師は半強制的に部活動指導を任されたりしそうな予感がします。それでは重要な課題だった教師の働き方改革は果たせず、教師のなり手も増えず、教育の質が下がり、やがては日本の国力が下がるという負の連鎖に陥ってしまうかもしれません。僕たち社会はそれを回避しようと、今の内に部活動を学校から剝がそうとしているわけですよね?この問題についてよく、「子どもの為」とか、「子どもが主役」のような言葉を使うかたをお見掛けするのですが、ちょっとピントがずれているように感じます。今の子ども達の利益はもちろん大事ですが、これはどちらかというと、国や社会の問題として捉えるべきでしょう。

 そもそも、部活動の問題を横に置いておいたとしても、学校は学校外の問題を一手に引き受け過ぎているという問題が存在しているはずです。放課後の児童や生徒の問題行動が学校に通報され、教師が対応に追われるなんて話はドラマの中だけの話ではないはずです。そもそも家庭や地域の問題のはずなのに、なぜか学校が対応をする。そのような”業務”も、教師の働き方改革では、なくしていくべきものでしょう。”地域展開”では、下手をすれば教師が教師のまま地域で活動することになりますから、ますます意見・要望・通報が教師や学校に集まることになるでしょう。むしろ教師の働き方が悪化する可能性すらあるお話だと僕には思えます。地域展開という言葉には、そういうリスクが潜んでいると思います。

 一人一人の教師の思い入れなどがあるのは重々承知していますが、ここはスパッと一度学校から部活動を切り離すという打ち手が妥当なのではないでしょうか?でなければ、本当に重要な課題は解決されないと思います。僕は部活動は大事で、教育的な観点からも必要なものだとは思いますが、残念ながら”最も重要なもの”ではないのです。それはあくまでも部活動が課題活動に位置付けられていることからも明らかです。


部活は地域へ移行。学校は教育に専念。

 僕の中の結論としては、やはり部活動は地域へ完全移行です。学校外へ出すべきで、基本的にはそこには学校や教師は関わらない。関わる時は、地域の人として関わらなければいけません。

 その上で、僕は部活動的なものを新たに学校に設けるべきだと思っています。しかしそれは、あくまでも教育課程の中に組み込まれたものとして。つまり、正式な授業時数にカウントされるものとして設けるべきだと思っています。それがつい先日から急に僕が言い出した、『プロジェクト活動』ですね。国語や数学などのこれまでの基礎科目の授業時数を減らしてでも、スポーツや芸術に留まらず、ビジネスや科学、ITなどあらゆる分野のプロジェクト活動を子ども達にやらせるといいと思うのです。これをやる為にも、教師たちには手を空けておいて、現代社会について知見を深めておいて欲しいと僕は思います。教師にはそっちで活躍して欲しい。だから部活動は地域移行。それ以外あり得ない。と、僕は今のところ思っています。


 なんだかちょっと過激な意見になってきてしまったので、今日はこのあたりで終わりたいと思います。今日は、『部活動の”地域展開”』というテーマでお話しました。今日はあえて「移行」と「展開」を併記するような書き方をしましたが、次回からはまた「移行」と敢えて表現していきたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

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