『しっかりした１つの案』と、『選べる2つの案』、納得度が高そうなのはどっち？

　総合型地域スポーツクラブ研究所、所長の上杉健太（@kenta_u2）です。総合型地域スポーツクラブのマネジメントやアドバイザー、講演・執筆活動、エンジョイスポーツコーチなどをしています。

　私が2020年12月いっぱいで一般社団法人たかぎスポーツクラブを退職する時、最後の仕事は総会でした。会費の改訂が議題の一つでしたので、揉めました。クラブとのお別れがあの総会だったと思うと少し切なくなるくらい、品のない発言も飛び出していました(笑)

　その総会からずっと「どうするべきだったか」を考えて、一つの仮説というか答えみたいなものが出たと思うので、ここで共有させていただきます。あの時の問題点は、『選択肢がなかったこと』だと思いました。だから過剰なまでに反対行動を起こした会員がいたのだと思います。行き場を失ったエネルギーは爆発するというのは法律で決まっていますから。
　ということで今回のテーマは、『しっかりした1つの案と、選べる2つの案、納得度が高そうなのはどっち？』です。

一つの案を一生懸命説明して賛否を問うこと

　たかぎスポーツクラブの総会は値上げが議題でしたが、どんなテーマを議論する場合でも、総会や会議などの目的は、『どうするか決めること』ですよね。

　ゼロベースで話し合いが行われる場合もありますが、総会などの意思決定機関においてゼロベースの話し合いが行われることはありません。提案があり、それを承認する形です。

　ただこの場合、恐らく提案は1つのことが多いと思います。「この案でいきたいと思いますが、よろしいでしょうか」という投げかけをして、それに対して賛成か反対かを問うという形ですね。

　当然提案者は、その案に賛成して欲しいわけですから、その案を一生懸命説明します。根拠、メリット、デメリット、リスク、方法論などなど。
　これは一つのやり方だし、多くの意思決定機関で行われていることではないでしょうか。

　もちろん、どんな案も１００％賛成ということはほとんどありませんが、要件を満たす賛成が得られれば可決されます。

　ただ、可決されればいいということではありませんよね。大事なのはその時の参加者の心理かなと思います。「これは自分たちの決めたことだ」と思えているかどうか。組織運営の議決権を持っているということは、少なからず組織運営に責任を負っているということなので、「自分で決めたこと」と思えないとよくありません。
　でも実際は、「提案者の案を承認した」というレベルに留まっていることが多いと思います。「自分が決めた」まではなかなかいかない。もしかしたら「賛成したくないけど、反対しても代案がないし・・・」というモヤモヤを抱えて賛成する人も多いかもしれませんよね。

二つの案を並べて投票してもらうこと

　では「自分が決めた」と思える決定の仕方は何か。これはすごく難しい課題だとは思うのですが、一つの答えとして、『選択する』があると思います。

　これは、「賛成か反対か」の選択ではありません。「賛成か反対か」で選べるのは結局A案という１つでしかないんです。選んでないんです。
　大事なのは、B案の存在。「A案とB案、どちらがいいと思いますか？」という聞き方をすることで、会議の参加者は両者のメリットとデメリットを積極的に比較しますから、そこに自分の意思を乗っけやすいと思います。

　ここで仮に、自分が選んだ案が否決されて、もう一方の案が可決されたとしても、それを「自分が決めた案」とは思えなくても、「他のみんなが決めた案」とは思えるでしょう。

　ただこのやり方は、リスクも大きいです。それは、『票が割れていつまでも決まらない』というリスクです。もしかしたら対立構造を作り上げることにもつながるかもしれません。

　ではそのリスク回避のためにマネジメントができることは何でしょう。