ルールとマナーの違い

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をしたり、スポーツ推進審議会委員をしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。総合型地域スポーツクラブの運営を仕事にして11年目!

 さて今日は、『ルールとマナーの違い』というテーマでお話しようと思います。

 先日、バドミントンの小学生クラスでマナーについて気になってしまい、子ども達と話をしました。バドミントンには、ネットに掛けるミスをしたら相手に点数が入るので、次は相手からのサーブでゲームを再開するわけですが、その時のマナーとして、「ミスをした人がシャトルを拾い、相手に渡す」というものがあります。これは、ミスをした人が相手に労力を割かせてはならないという配慮のものに出来上がったマナーだと思います。子ども達に限らず初心者の人がよくやりがちなマナー違反としては、「相手に拾わせる」と、「ラケットをほうきのように扱って、シャトルを相手に滑らせて渡す(=結局相手に拾わせる)」の2つです。この際、初心者の人たちには恐らくなんの悪気もありません。シンプルにそういったマナーがあることを知らないということと、そこまで相手への配慮が至らないということです。決して、このマナー違反を持って、”嫌な奴”みたいな評価をする必要はありません(笑) が、マナー違反というのは相手に悪い印象を与えるのは間違いないので、マナーは知っていることが大事ですよね。
 なのでその時に僕は子ども達に、「マナーって知ってる?」と話し掛けたわけです。その時に、比較対象としてルールを持ち出しました。ルールとマナーの違いは?と。その時のお話がとても面白かったので、今日はテーマにさせていただきます。


 まず、「ルールとマナーの違いは?」の問いに答えてくれた子の考えが非常に面白かったので先に紹介しますね。その子はルールを、「考えて作るもの」という風に表現しました。(※マナーについては何と答えたか忘れました笑) 僕は子どもならてっきり「守らなければいけないもの」とか「決まっているもの」のように答えると思っていたんですね。それを、「考えて作るもの」とは何とも素晴らしい発想だなと思いました。彼のその発想がどこから生まれたものかは分かりませんが、もしかしたらルールを固定化していない日常の活動も少しは貢献しているのかもしれません。
 そのクラスでは、必ず最後に試合をやるようにしているのですが、週に1回1時間の練習しかやらないので、まだまだ初心者の域を出ないような競技レベルです。サーブが入らなかったり、同じ子ばかりが勝ったりと、色々な問題があります。なのでルールは、その時の練習をしたことや参加人数、実力差などを考慮して毎回子ども達と一緒に設定をするようにしているんですね。何点取ったら勝ちとか、サーブミスはおまけありにするかどうかとか、コートの広さとか。まさに自分たちでルールを考えて設定しています。

 大人になると、多くの人はルールを作ることはほとんどなくなり、法律を始めとした社会でのルールに従って生きることになります。でも実際には社会の中にはルールを作る人がいるわけで、分かりやすい例は政治家なわけですが、他にも、新しい技術を開発したり、ビジネスモデルを作ったりすると、それに伴ってルールができたりするわけなんですよね。そういう人たちは既存のルールに縛られず、『ルールチェンジ』をしているわけです。自分で作ったルールで勝負したら強いのは当たり前ですから、「ルールに従おう」という人と、「ルールを作ろう」という人の間には、大きな差が生まれることになるとよく言われますね。だから子どものうちからルールを作る経験を続けていくのは僕はとても大事なことだと思っています。だから彼の答えには感動しました。


 さて、僕がこの時に子ども達に話したルールとマナーの違いについてですが、色々な考え方があると思うと前置きをした上で、このような比較をしてお話しました。「ルールは破ると罰がある。だから自分が損をしない為にも守るべきもの。マナーは別に違反しても罰はない。でも相手から嫌われる。そうしたらお互い気持ちよくプレーできない。だから守った方がいいもの」こんな感じで説明しました。もちろん、これだけでルールとマナーの全てを説明できたわけではありません。限られた時間で、子ども達が聞いてくれる範囲でお話したものです。

 これを話した上で、先ほどのシャトルの渡し方についてのマナーについて教えました。するとまた違う子が非常に素直な感想を言ってくれました。「でも、こうした(シャトルを滑らせて渡した)方が楽だよ?」と。これは完全にその通りですよね。その時に僕が答えたのは、「楽なのは自分だけでしょ?マナーは相手の為にやることだ」ということです。これは自分でも言っててなかなか的を射ているのではないかと思いましたね(笑) ルールを破ると罰がある。だからルールを守ることは自分の為になる。マナーは破っても罰はない。表面的には、マナーを破っても自分は傷つかない。でも相手が嫌な気分になる。だから相手の為にやる。それが長期的には自分の為にもなる。そういうことなのでしょうね。ルールとマナーの考え方、このように捉えると結構分かりやすいなと思いました。もちろん、ルールを『罰が伴うもの』と理解するだけでは絶対的に足りないわけですが(;^_^A


 では辞書的な意味も確認しておきたいと思います。僕の解釈が大きくずれていたらよくないですからね(笑)

 まずは『ルール』ですが、ネット上にある辞書によると「規則」とシンプルに解説しているものがほとんどなのですが、面白い説明をしているのがweblio。

「rule」とは、規則・習慣・支配・支配するという意味を持つ英語表現である。

https://www.weblio.jp/content/%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB

 支配という意味が『ルール』にはあるんですね。ルールを作っている人が世の中を”支配”していると考えると、「まさに!」という感じですね。

 ちなみに、『規則』は辞書的にはどういう意味かというと、

それに基づいて行為・手続き・操作が行われるように定めた規準。きまり。おきて。

Oxford Languagesより

 ・・・まぁこのあたりになるともう言葉遊びの領域になってしまうので、もう「ルールはルール!」という捉え方で問題ない気がします(笑)

 では『マナー』はどうでしょう?これはなかなか一般的な説明(定義)が難しいもののような気がしますよね。

態度。礼儀。礼儀作法。「マナーのいい人」「テーブルマナー」

コトバンクより

【人に対する配慮や思いやりを 言葉と態度で示すこと】をマナーと言います。

https://wellvy-support.jp/manners-3/

 なるほど。この2つの説明に共通するのは、『態度』ですね。マナーとは態度。『行動』と何が違うのかと考えてみると、恐らく行動はその結果が見えるもの。しかし態度は、その結果が極めて曖昧。例えばバドミントンの場合、「サーブは床から115cm以内で打たなければならない」というルールを違反してサーブを打てば相手に点数が入るという結果が起こりますが、「ミスをした時にシャトルを相手に滑らせて渡した」というマナー違反については、相手が不快な思いをするという以外には、特段これといった”結果”は起こりません。むしろ、「相手にシャトルが渡る」という結果は変わりません。『態度』というのはそういう類のものだと言えるでしょう。


 ちなみに僕たちが絶対に気を付けなければいけないことは、ルールやマナーは不変ではないということです。変わり続けるもの。それこそ、年代や地域によって、設定されているルールや、暗黙知的に存在しているマナーは大きく異なります。有名なところでは、僕たち日本人は、いつでもニコニコ笑顔でいると相手に対してマナーがいいと思っていますが、欧米などではそれはむしろ「相手を馬鹿にしている」と捉えられると言います。これがマナーの難しいところです。だからルールやマナーというのは、知ることが極めて重要なんですね。考えれば分かるルールやマナーもありますが、考えても全く分からないマナーもあるんです。これはもう、知るしかありません。知った上で、守るのか、変えるのか。それは判断していいでしょうが、知らないでマナー違反を続けるのはもう損でしかないと思うので、まずは知ることでしょう。


 最後にまた子ども達のバドミントンマナーの話をして終わります。子ども達が相手にシャトルを渡す時に、床を滑らせて渡すことをマナー違反の事例として取り上げましたが、実はこれは、彼らにとっては極めて合理的な判断に基づいた行動です。なぜなら彼らは、ラケットで打って渡すのも、投げて渡すのも、それをキャッチするのも、まだ正確にできない確率が高いので、むしろ滑らせて渡した方が両者にとって”楽”ということが十分に考えられるんですね。だから僕が教えたことは、基本的には先回りです。コーチよりいうとは、”先生”的に教えた感じです。彼らの一部がそのマナーの必然性を感じていないことは承知のうえで、「その行動が相手を不快にすることがある」ということを教えたに過ぎません。なので、きっと彼らはまたシャトルを滑らせて渡すことを繰り返すでしょうが、まだそれほどうるさく言わないつもりです。彼ら同士が合理的な判断に基づいて行っていることであれば、他人がとやかく言うことではない。これもまた正しい選択なのだと思います。ただし、僕に対してやった場合は、”不快”をアピールしようと思っています(笑) それが現実社会ですからね。


 というわけで今日は、『ルールとマナーの違い』というテーマでお話しました。大人がルールとマナーの違いについてちゃんと考えていないと、「どちらもとにかく守れ!」みたな乱暴なコミュニケーションになってしまい、『ルールチェンジ』のマインドがまったく育たなくなってしまい、大きく言えば”イノベーションを起こせない日本”みたいなものがずっと続いてしまうと思うので、まずは大人がしっかり自分の意見・考えをもって、共に考えていくのがいいのかなと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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