僕にとって総合型地域スポーツクラブは適職か?

 2023年もあと2日!

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市で総合型地域スポーツクラブの代表やスポーツ推進審議会委員をやったり、長野県のクラブのアドバイザーをやったりして、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。

 今日は、『総合型地域スポーツクラブの仕事を診断してみる』というテーマでお話したいと思います。

 僕が総合型地域スポーツクラブの仕事を始めて10年が経とうとしています。今のところ、この仕事をやめようと思うことはありません。主観的には総合型地域スポーツクラブのマネジメントという仕事は、適職(天職)のように思えるわけですが、ここをもう少し詳しく考察してみようという回です。


適職とは

 人にとって適職とは何でしょう?きっと多くの人が、自分の仕事に対して違和感や嫌悪感を持ちながらやっていたりすると思うのですが、それはつまり、それだけ自分の適職を見つけるのが難しいということを意味していると思うんですね。

 適職とはつまり、自分の幸福度が最大化される仕事のことです。そしてそれは、ライフステージによって変わっても全くおかしくないものだと僕は思います。それこそ時代の流れを見れば、終身雇用時代が終わり、転職や起業・副業などが気軽になってきているので、まさにライフステージで適職が変わるというのは、もう既に僕たちは体現しているようにも思えます。

 例えば僕のキャリアで言えば、学生時代はファミレスやコンビニ、塾講師として労働者をやったり、個人事業的に家庭教師をやったりしました。大学卒業後は大手企業で商品開発やマーケティングの仕事をしました。そして30代は経営者的に総合型地域スポーツクラブの仕事をして、そこからさらに独立してゼロからクラブを立ち上げて(創業)、総合型地域スポーツクラブの仕事を続けています。きっと、この創業というものを大学生の頃にやっても、きっと僕は幸せになれなかったと思うと、やっぱりライフステージによって適職はあるのだと思います。

幻想に注意

 幸福度を最大化するという時に、気を付けなければならない幻想があります。例えば、「好きなことを仕事にするのが幸せ」というもの。好きなことを仕事にすれば幸せというのなら、みんなもっと幼い頃に自分の好きな領域で起業すればいいことになります。でも実際には、社会から求められなければ仕事として成立はしないし、社会から求められるものと自分が好きなものが一致するとは限らないし、仮に一致したとしても、そこには競合との競争があり、競争に勝てるくらいの能力が必要になります。
 僕は、大学生時代にフットサルクラブを小さく運営したり、社会人になって生活をする中で総合型地域スポーツクラブの必要性を感じたり、実際にビジネススキルを身に付けたりした上で、総合型地域スポーツクラブの仕事を始めているわけです。そこまでやってはじめて、『適職』にできたと思います。「好き」だけではダメなんですね。それでは全然足りていないんです。

 では、どこまで能力を高めてからやればいいか。僕は実はそこに明確な答えは持っていないのですが、いずれにしても大事なのは成長意欲だと思っています。例え素人で始めたとして、そこで学び続けてスキルを身に付けていけばいいわけです。ただ、本当に何もない状態では話にならないから、せめて一つくらいは武器を持ってからじゃないと、マネジャーみたいなことはできないということです。いずれにしても成長意欲はめちゃくちゃ大事だと思います。

 もう一つの幻想。それは、ネームバリューやお金で仕事の価値を決めることです。僕は大学卒業後に大手企業に入社して7年間ほど働いたわけですが、そこはネームバリューもあり、そこで働いていることを自慢できるほどで、さらにお給料も良かったわけですが、僕はだんだんとそこに価値を感じなくなっていきました。だからこそそこを出て、総合型地域スポーツクラブの世界に飛び込んだわけです。ネームバリューやお金(報酬)は、一時的な価値に留まることが多いのかもしれません。実際に僕が価値を感じなくなっていったのは、『一生』とか『死』といったものを考えた時でした。死ぬまでこの仕事を続けるか?と自問した時に、「NO」だったんですね。
 報酬と幸福度の話で言うと、年収500万からの幸福度アップは難しいと言われています。そこまでは年収が増えると幸福度も増えるらしいのですが、そこからは年収が上がっても幸福度はそれほど上がらなくなるそうなんです。また、年収800万円以上はもう年収が増えてもほぼ幸福度は変わらないそうです。実際に僕が大企業をやめた時の年収はそれくらいでした。もうあそこであれ以上お金を稼いでも、僕の幸福度は増えなかったというわけです。無意識的に僕はそれを感じ取っていたのかもしれません。(※エスパー) ネームバリューやお金で仕事を適職かどうかを判断しない方がいいということです。

 それと幻想でもう一つ。それは、楽かどうか。何となく、楽を求める人は多いと思いますし、僕も楽するのは好きです。でも、楽な仕事が幸福かどうか。思い返してみてください。仕事でも何でもいいです。何かを”待つ”時間。あの何もできない時間。言い方次第ではめちゃくちゃ楽な時間なわけですが、あれが幸せに思えたことありますか?少なくとも僕は全然幸せではありませんでした。僕は何かをすることで幸福は得られると思っていて、誰かに与えられるものも本当の幸福ではないと思っています。確かに行動をするとそれなりのストレスは避けられません。疲れますしね。でも、適度なストレスは幸福に不可欠という話もあります。大事なのは、自分の能力と仕事が合っていることなんです。楽すぎてもダメだし、きつすぎてもダメ。バランスが大事なんです。楽だからいいわけではないんです。


7つの項目診断

 ちょっと前段が長くなってしまいました。じゃあ適職ってどうやって判断するんだって話なのですが、今日は以下の7つの項目で考えていきます。

  1. 裁量権はあるか

  2. 進歩している感覚はあるか

  3. 攻撃型or防御型タイプは合っているか

  4. 内容と報酬は明確か

  5. 業務内容はバラエティに富んでいるか

  6. 自分と似た人が多いか

  7. 他人の生活に影響を与えるか

 このあたりが「YES」と答えられれば、それは自分にとって適職であると言えるということです。

1.裁量権はあるか

 1つ目の、「裁量権はあるか」。これは、総合型地域スポーツクラブのマネジャーは、一般的に言って裁量権はめちゃくちゃ多いと思います。少なくとも僕は裁量権しかありません。今は代表の立場だから当然ですが、長野県のクラブにいた時には、ただのクラブマネジャーのポジションだった時期もありましたが、それでも裁量権しかありませんでした。総合型地域スポーツクラブの多くは本当に小さな小さな組織です。会員数が多くても、それをマネジメントしている組織はかなり小さいです。そこには上下関係などほとんどなく、それぞれが独立してやりたいことをやるしかないというのが大前提です。(※メンバーが2~3人しかいない組織で”指示待ち”の人間がいたら、もうその組織はヤバいです。) 恐らくほとんどのクラブで、クラブマネジャーは大きな裁量権を持っていると思います。ここは◎です。

2.進歩している感覚はあるか。

 2つ目は、「進歩している感覚はあるか」です。当マガジンの読者の方ならご存じだと思いますが、僕はここをもはやコントロールしにいっています。つまり、常にこの『進歩』の状態を維持できるように、あえて急激な進歩を避けてゆっくりゆっくり進歩・成長するようにマネジメントしているんです。だから僕がマネジメントしているクラブは、常に進歩・成長しています。
 また、僕個人についても、常に新しいことにチャレンジして、できることを増やしていくことで進歩を感じられるようにしています。最近だと、ふじみスポーツクラブでバドミントンのコーチにチャレンジしていることです。3年前、富士見市に移住してきた時にはバドミントンのバの字も知らないような状態でした。クラブのコンテンツとして扱ったことはあるし、ちょっと現場サポートに入ったことはあったものの、完全なる素人。それでも、地域のニーズがあり、それに応えるリソースが地域に不足していることを感じ取ると、すぐに勉強を始め、練習を始め、資格を取り、コーチとしてコンテンツを作りました。非常に分かりやすい進歩です。総合型地域スポーツクラブのクラブマネジャーをしていると、こういうことが普通にできます。やろうとすれば。なぜならコンテンツが多様だからです。進歩のチャンスしかありません。だからここも◎です。ただ、クラブマネジャーの裁量権が大きいからこそ、自分から進歩を作りにいかないと、停滞することも簡単にできてしまいます。だからハッキリ言って、”自分次第”です。

3.攻撃型or防御型タイプは合っているか

 3つ目は、「攻撃型or防御型タイプは合っているか」です。これはちょっと分かりにくいですね。
 攻撃型というのは、変化が多い業界などで、どんどん新しいサービスや商品をリリースしていくようなことが求められることです。空振りを恐れずにどんどん攻撃するイメージ。
 一方の防御型は、ミスをしないことが大事で、新しいことをやるよりも、続けることが求められることです。税理士とか弁護士とかがこのイメージです。

 では、総合型地域スポーツクラブのマネジメントは? ちょっとここは意見が分かれるところだと思うのですが、僕は総合型地域スポーツクラブのマネジメントはどちらかというと防御型だと思うんですね。なぜなら僕にとっての総合型地域スポーツクラブのミッションは、「生涯スポーツ社会の実現」だからです。これは、長く続けないと実現できないことなんですね。リスクをとって新しいことをやり続けて、失敗したらやめればいいという攻撃型とはイメージが違います。むしろ、大きな成功はなくてもいいから、とにかく人の生涯に寄り添い続けられるように長期運営ができなければならない。それはイメージとしては防御型だと僕は思っています。

 じゃあ上杉は?攻撃型なの?防御型なの?そう言われると、正直自分でもよく分かりません。いや、正直に言うと、僕にはどちらの側面もあって、それがあまりどちらかに偏っていない。それが正直な判断です。そう思うと、総合型地域スポーツクラブのマネジメントは、”攻撃”もできます。コンテンツ自体は社会的に別に新しいものではなくても、新事業としてどんどん仕掛けていくことはできますから、防御的でありながら攻撃的であることができるんです。これは実は、僕にめちゃくちゃ向いている特性なんじゃないかと思います。僕はアイデアマンではありませんから、社会を驚かせるようなものを生み出すことはできません。でも、スポーツという素材を活かして普通で当たり前のことをどんどん仕掛けていくのは好きです。そう思うと、攻撃型と防御型のバランス感が、僕にとっては◎と言えるかもしれません。

4.内容と報酬は明確か

 4つ目、「内容と報酬は明確か」です。これは今のところ○くらいの感じです。というのも、僕は雇われのクラブマネジャーの頃から、単年契約で報酬額は自分で決めて自分でクラブと形式的な交渉をして契約をしていました。また、今は代表で役員報酬で仕事をしていますが、もちろんクラブ全体の利益を考えた上で報酬額の決定をしています。そう、僕のクラブマネジャーとしての報酬は、常に業績次第なんです。これはもう10年間ずっとそうです。赤字なのに報酬を上げることは基本的にはありません。ただ幸いなことに、これまでずっとクラブは成長を続けて来て、黒字経営ができていたので、僕の報酬は上がり続けてきました。(※ゆっくりだし、低空飛行だけども) なのでここは、業績が良ければ上がるし、悪ければ下がる。売上・利益が高ければ高くなるし、低ければ低くなる。それが明確という意味では◎なんです。
 ただ、内容と報酬が一致しているかと言えば、そこは△なんですね。というのも、僕はマネジメントに軸足を置きながらも、それだけでクラブを支えられることは無理だから、自らもコーチとなって収益を作りに行く働き方をしてきました。半分はコーチとしての仕事なんです。そう考えると、正直、コーチとしての報酬として見た場合には、他のコーチよりも低く設定しているんですね。ここが内容と報酬が一致していないとも言えるんですね。なので、これらを総合的に考えると、◎ではなく〇かなと。

5.業務内容はバラエティに富んでいるか

 5つ目は、「業務内容はバラエティに富んでいるか」ですが、これはもう完全に◎です。もう、総合型地域スポーツクラブのマネジメントは何でもできますし、やらなければならないことも多岐に渡ります。事業計画や予算を立てて、その進捗管理もすれば、日々の会計処理もするし、申し込みを受け付ける窓口もやります。コーチや会員との連絡・調整役もやるし、自分がコーチになることもあります。もう本当にバラエティに富んでいます。
 また、領域もどこまでも広げられます。スポーツ種目なら何でもできるし、僕なんか学習コンテンツを作ったり、芸術系コンテンツを作ったり、ICTコンテンツを作ったりもしてきました。やりたい放題です。そしてこれは、ある程度一般的な総合型地域スポーツクラブのマネジャーに言えることだと思います。やろうとすれば何でもできます。それが総合型地域スポーツクラブです。◎です。

6.自分と似た人が多いか

 6つ目。「自分と似た人が多いか」。どうやら、職場に友達が3人いる人は、幸福度が高くなるらしいのですが、要するにそれが自分と似た人、ということなのでしょう。僕の場合、ここは×かもしれません。あまり、自分と似た人が多いと思ったことはありません。むしろ、そういう仲間と出会えた時の喜びが非常に大きい。ということは稀だということです。だから×かなと。
 じゃあなんで自分と似た人が少ないのかというと、総合型地域スポーツクラブを本業としてやっている人がほとんどいないからなのだと思います。実際に、クラブで働く人のほとんどがパートタイマーだったり、クラブから委託されて指導する個人事業者だったりします。それぞれの価値観がある中で、お互いの利益を確保した上でビジネスパートナーとしてやるって感じが多いです。そんな中だからこそ、たまに1~2人、理念を共にできて、何となく”感じ”も合う人と出会えて仲間になれると、僕は非常に嬉しいですね。

7.他人の生活に影響を与えるか

 最後は、「他人の生活に影響を与えるか」です。これは答えが難しいですね~。今はまだ、△と言わざるを得ないかもしれません。長野県のクラブのマネジャーだった時は、「このクラブがなくなれば困る人がたくさんいる」と思っていた気がします。というのも、周辺に多くのクラブがあるわけではないから、クラブがなくなればスポーツの場を失う人はそれなりの数に及んだでしょう。正規職員も何人かいましたし、そういう意味でも他人の生活に与える影響はそれなりにあった気がします。でも今は、クラブで食っている人間は僕だけだし、仮にクラブがなくなっても会員のみんなは他のどこかを頑張って探せば全くやる場所がないということはない気がします。もちろん、だからなくなってもいいというわけではなく、そもそも社会として多くの選択肢がある状態は大事ですから、そういう意味では他人の生活に影響は与えています。ただそのインパクトはまだまだ小さい。だから△。もっと頑張りたいポイントです。これは業界として考えた時にも伸ばさないといけないところです。もっとインパクトの大きいクラブになっていかないといけない。


 さて、7つの項目で見てきましたが、総合的に考えて総合型地域スポーツクラブのマネジメントという仕事は、今の僕にとって適職だと言っていいのかなと思いました。総合型地域スポーツクラブを仕事として考えたい人は、よろしければ参考にしてください。また、ご自身のお仕事についても各項目で捉え直してみると、また違った適職が見つかったり、今の仕事に確信が持てたりしていいかもしれません。


 ということで今日は、『総合型地域スポーツクラブの仕事を診断してみる』というテーマでお話しました。

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

ここから先は

0字
総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5