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社会貢献でメシを食う。

 NPOで働くことをもっと当たり前にしたい。
 
 どうも、ふじみスポーツクラブの上杉健太(@kenta_u2)です。埼玉県富士見市で、誰もがいつまでも、自分に合ったスポーツを続けられる地域社会の実現を目指して、総合型地域スポーツクラブの運営をしています。

 今日は『社会貢献でメシを食う。』というテーマでお話したいと思います。教科書はこちら!

 もうタイトルを見た瞬間に、「これは読まなければ!」と思いました。サブタイトルも素晴らしいです。『だから、僕らはプロフェッショナルをめざす』ですよ。いいですよね~。


 この本ではしきりに、「社会貢献したい若者が世界的に増えている」と主張しています。日本で暮らしているとそのような変化を実感することはあまりないようにも感じられますが、アメリカなどでは世界的な大企業よりもNPOに就職したい学生の方が多いらしいんです。

 物質的に満たされ、経済的な豊かさを追い求めるよりも、自己実現や世界平和を求める人が増えてくるというのは、理屈としては理解できるので、そういう時代になっているのかもしれません。
(※でもまだまだ日本では、自分の将来が不安だからと、一生懸命お金を貯め込む人が大半・・・)

 社会貢献といえばNPO。NPO法人や社団法人、財団法人など、色々なNPOがありますが、この本では、どうやってNPOで食っていけばを教えてくれています。非常に面白かったです。今日はその気づきをいくつか共有させていただきます。


利益とはお金のことだけではない

 私はよく、『利益』という言葉を使うのですが、その度に「あ、利益というのはお金のことだけではありませんからね」というフォローをするようにしています。利益という言葉を使って怒られた経験から、それ以降フォローをするようにしているんです。利益というと人は、すぐに『剰余金』のことを思い浮かべます。会計的な利益のことですね。支出よりも収入が上回った時の剰余金のことを利益と呼ぶので、一般的にはこれが『利益』として認識されています。

 しかし利益とは本来、お金のことを指す言葉ではないんです。辞書的な意味は、

りえき【利益】
ためになること。「社会の―」。もうけ。とく。

Oxford Languages

です。
 つまり、「会員の利益」と言うと、それは会員のためになること、という意味ですし、社会の利益と言うと、社会の為になること、という意味です。

 NPOも利益を追求します。それは、会計的な利益もそうですが、社会的な利益もそうです。社会のためになることをやる。

 総合型地域スポーツクラブでは、クラブの利益・会員の利益・スタッフの利益・地域の利益を追求することになります。
 クラブの利益とは、会計的な剰余金のことであり、掲げる理念の実現に近づく成果のこと。
 会員の利益とは、負担するコスト(会費)を上回る満足度や効果のこと。具体的には、仲間や健康・体力、競技成績、自己実現などを得ることですね。
 スタッフの利益とは、負担するコスト(時間・パワーなど)を上回る満足度や収入を得ること。具体的には、金銭的報酬や周囲からの評価、自己実現などです。

 こういった色々な立場の利益を追求しているという意識が大事です。利益=お金儲け、と捉えている人の中には、急に「お金儲けのことばかり考えているのか!」と怒り出す人がいるので、利益についての正しい理解が社会的に広まるといいなと思います。


欠乏こそが問題

 非常に面白い一文がありました。社会貢献の中には、貧困層への支援というものがあるかと思いますが、それに対しこの本では、「低所得なのが問題なのではない。『欠乏』が問題なのだ」と言っています。例えばとある人の年収は200万円しかないとします。お金をたくさん持っている人はその人を見て、「かわいそう」と思うかもしれないし、助けたいと思うかもしれないけど、実はその人は農家で、食べ物は自分で作っているし、周囲には助け合える仲間がたくさんいる。困っていることがないとしたら、この人は貧困と言えるでしょうか?かわいそうな人なのでしょうか?そういうことです。この人が、「お金がなくて病院にも行けない」「子どもを学校に行かせてあげられない」という状態なら、貧困といえます。やりたいことができないという、欠乏の状態にあるからですね。
 このように、注目すべきは欠乏しているかどうか。所得が低いことが問題なのではなく、何かができない状態であることが問題なんですね。つまり、大事なのは当事者のニーズということです。一般的な収入額とかではなく、その人は何がしたくて、何ができていないか、が問題ということです。

 これを読んだ時に、すぐに私には『スポーツの二極化』というワードが頭に浮かびました。スポーツをたくさんする人と、全然やらない人に分かれてきているという状態のことです。これを社会問題として捉えている人は多いです。
 でも実は、私はこの状態を問題だと認識したことがありません。むしろ、人々が自分の思いを正直に表現できる時代になっているという、とても自然な状態だと捉えています。

 スポーツの二極化を問題だと主張する人はおそらく、『スポーツはやらなければならないもの』という風にスポーツを捉えているのだと思います。だから、「全然やらない」という人を問題視してしまうんですね。これがカラオケだったらどうでしょう?カラオケにたくさん行く人と全然行かない人がいる状態を、社会問題と捉えますか?捉えませんよね。むしろ、カラオケにたくさん行く人とカラオケに全然行かない人がいる状態は、極めて普通な気がします。好きなものはたくさんやるし、好きでもないものはやらない。当たり前ですよね。

 もちろん、スポーツの場合はカラオケとは少し性格が違います。スポーツは、運動という側面からの効果を期待される存在だからです。つまり、運動をやらない人が増えると健康被害が大きくなり、医療費の増加などの社会的コストが大きくなってしまうということですね。つまり、スポーツの二極化とは、行政課題というわけです。医療費の削減のために解決すべき課題という。

 とはいえ、総合型地域スポーツクラブとしても、「全然やらない」という人が多い状況は課題として捉えます。でもそれは、社会問題としては捉えません。あくまでも、当事者のニーズに寄り添います。そこに、やりたくてもやれない状態があるかどうかを重視するんです。例えば、「本当はスポーツをやりたいけど、近くのチームは練習が怖くて入れない」という状態にいないか。例えば、「やりたいスポーツができる環境がない」という状態にないか。そういうことに目を向けます。同時に、「スポーツ?別にうちの学校は部活やらなくてもいいから、何もやっていません」という人のことも認めるんです。
 問題は二極化していることではなく、スポーツをやりたいけどやれていないという”欠乏”があるかどうか。そういうことです。当事者のニーズが大事なんです。


スピードが大事

 社会貢献はスピードが大事といいます。確かに、目の前にお腹を空かせている人に対して、「僕が将来お金持ちになったらたくさん寄付するからね」と言っても、何も嬉しくありません。目の前の困っている人は、”今”困っているからですね。数年後には自力で貧困から抜け出しているかもしれないし、あるいは死んでしまっているかもしれない。社会貢献は、今ある問題を今すぐ解決することが重要です。

 しかし同時に、「魚を与えるのではなく、魚の獲り方・売り方を教えるのが重要」ということもよく言われます。魚を与えるだけでは、いつまでも自力で食っていけるようになれないということですよね。

 つまり、社会貢献はスピードが大事で、目の前で困っている人をすぐに助ける必要があるわけですが、同時にそれをビジネスとして継続的にやっていくことが重要ということだと思います。

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

総合型地域スポーツのマネジメントを仕事としています。定期購読マガジンでは、総合型地域スポーツのマネジメントに関して突っ込んだ内容を毎日配信しています。ぜひご覧ください!https://note.com/kenta_manager/m/mf43d909efdb5