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部活動の地域移行を整理してみるpart2「地域移行したくない理由」

 どうも!上杉健太です。
 埼玉県富士見市の総合型地域スポーツクラブの代表をやったり、スポーツ推進審議会委員をやったりしながら、生涯スポーツ社会の実現を目指して活動しています。最近のChatGPTのレベルアップ感が凄い。
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 さて今日は、『部活動を地域移行したくない理由』というテーマでお話します。予告通り、昨日の”地域移行したい理由”に続いての部活動地域移行シリーズ第2弾となります。部活動の地域移行が難航していることの正体を明らかにすべく、昨日は学校運営者・教師・行政(自治体)・地域スポーツ団体・生徒の5者それぞれにある「地域移行したい理由」を書いたので、今日は逆に、「地域移行をしたくない理由」について書きます。


地域移行をしたくない理由

 そもそも、僕たち人間には安定をしようとする習性があるとかないとか言いますし、部活動は日本の文化として確固たる地位を築いていますから、「地域移行をしたくない」となるのが”普通”だと思います。なので、基本的にはこの問題について、理由を持っているのは”地域移行をしたい人”にあるわけですが、現時点では政府の方針などが地域移行を進める方向にあるため、「地域移行をしたくない」という人も主張をしなければいけなくなっています。なので、そちらも考えてみることが重要だと思うわけです。

「地域移行をしたい理由」については昨日の記事をご参照ください↓


学校運営者(校長・教育委員会など)

 学校運営者の”したくない理由”として真っ先に考えられるのが、学校の価値の低下だと思います。部活動は教育的な価値が高いと考えられていて、だからこそこれまで学校内で教育的な要素を強くして行われてきたわけです。それが学校外に出されれば、学校が持つ教育的価値が減ると考えるのは当然です。きっとここに反対する人はそれほど多くはないでしょう。(※それでも優先順位を考えて部活動を地域移行すると、”移行したい人”は考えている)

 次に、部活動を地域移行した場合の手間などが逆に増えるリスクみたいなものを挙げておきたいと思います。例えば、部活動を地域移行した際にかなり高い確率で生じるのが、学校の地域開放です。これまでも、部活動移行の時間については地域に体育館とグラウンドのみ開放する仕組みがありましたが、これをもっと拡大しなければ地域移行は実現されないでしょう。そうなった場合に、形式的には学校に管理責任はないとはいえ、実質的に学校や教師が何らかの手間をとられることが生じる可能性は十分に考えられます。”部活動を手放した”といった無責任なクレームが学校に入って来る可能性も否定できません。これらは必ずそうなるわけではないので、あくまでも”リスク”という形の理由です。

教師(部活動の指導者・顧問)

 教師については、生徒との関係性構築や”生徒指導”の難易度が上がる可能性があることが理由として挙げられます。聞こえてきた声としては、授業中や教室では輝けない生徒が、部活動では輝くことがある。そのような生徒の指導においては部活動という場が重要。というようなことでした。この場合、部活動がなくなると教師が生徒を教育する場が減ることになりますので、教師としてはクラス運営や教育的目標の達成が困難になる可能性があります。

 ただ、実は最も強いと思われているのが、「部活動指導がしたくて教師になった」という教師の声、です。なかなか本人が明言をしにくいので、表にはあまり出てきませんが、部活動の顧問をできればやりたくないと考えている教師の方が数としては多いのに、なかなか部活動の地域移行が歓迎されない背景には、”少数だけど強い声”があるのではないかと想像されるわけです。確かに、部活動になるともの凄くイキイキする先生は昔もいた気はします(笑) そのような教師にとって、部活動は絶対に学校にあって欲しいものなのだと思います。これも想像の域を出ませんが、あくまでも学校内で、部活としてやる、というところを大事にされているような気がするのです。

行政(自治体・スポーツ振興課など)

 行政からすると、これまで学校領域にあったものが地域に移行されてくると、自分の管轄になる、ということになる可能性があります。つまり、移行される部活動を運営するだけの予算を、自治体が用意しなければならない可能性があるということです。もちろん、これは受益者負担と公費負担の割合などで大きく変わって来るところだとは思いますが、さすがに完全に受益者負担で地域移行をする勇気は誰にもなさそうなので、少なくない予算を行政として作らなければならなくなるでしょう。これはとても面倒な仕事だと思います。
 また、お金の話だけでなく、担当者を付けたり、コーディネーターを配置したり、行政の持つマンパワーを割く必要が出てくる可能性も高いですし、責任も生じます。このあたりは行政が地域移行をネガティブに捉える理由になり得るでしょう。

地域スポーツ団体(地域スポーツクラブ・民間スクールなど)

 中学生や高校生が学校でスポーツを行っている現状でさえ、地域のスポーツ指導者は十分に足りているとは言えない状況だったりします。そのような中で半数以上の教師が顧問をやめ、地域の人材がスポーツ指導や現場マネジメントにあたろうとした時に、人材が足りなくなる可能性は十分に考えられます。また、そのせいで既存の活動に支障が出る可能性もあるでしょう。人数が増えるなどのメリットが期待される一方で、受入れきれずに全てが崩壊するリスクはあるのだと思います。

 また、もしも地域移行に対して学校開放が十分に行われない場合、学校内で行っていた活動が地域で行われるようになり、地域の活動場所がさらに混雑する可能性があります。そうなった場合には、部活動の受け皿にならない団体などの活動場所が奪われることにも繋がってしまいます。

生徒(中学生や保護者)

 生徒の”移行したくない”理由の王道は、費用負担の発生でしょう。これまでは、用具代や遠征費に関わる実費負担はあったにせよ、月謝や会費のような費用負担はなく部活動ができていたところが、地域移行になると自分たちである程度の費用を負担するようになる可能性があることは、どうしても”したくない理由”となります。個人の利益を追求するなら当然のことです。
 これもお金の話だけでなく、地域移行した後に学校で活動ができなくなった場合には、生徒には移動の必要性が出てきますし、場合によっては保護者の送迎などが必要になることも考えられます。これは大きな時間・マンパワーというコストになります。

 また、部活動こそが学校へ行く理由になっている生徒にとっては、部活動が学校内になくなれば、学校へ行く理由がなくなることになり、学びの場を失うことにもなるかもしれません。もちろんこれは選択の問題なので、生徒のデメリットとしてカウントするのは妥当ではないのですが、保護者からしたらデメリットに見えるでしょう。
 さらに、部活動を進学・就職のの為に有益なツールとして期待している生徒にとっては、その期待が小さくなってしまう可能性があり、これもやはり”したくない理由”となり得ると思います。


まとめ

 部活動の地域移行に対する抵抗感の主な要因をまとめてみると、以下のようになります。

  • 学校(教師・運営者): 教育的役割・価値の低下、生徒との関係の希薄化

  • 行政: 財政負担の増加、行政職員の手間などの負担増加

  • 地域スポーツ団体: 指導者不足、施設確保が困難になるリスク

  • 生徒: 費用負担の増加、移動の手間、教育機会の減少リスク


 というわけで今日は、『部活動を地域移行したくない理由』というテーマでお話しました。昨日の記事と合わせて、「地域移行をしたい理由」「地域移行をしたくない理由」を考えてみましたが、明日はこれらをさらに整理しながら、「部活動の地域移行はこれなんじゃないか?」という提言まで試みたいと思います。(※何の立場もないので、ただ無責任に言うだけの提言となりますが笑)

今回もお読みいただきありがとうございました!
ではまた!

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総合型地域スポーツクラブや筆者の挑戦のリアルな実態を曝け出しています。自ら体を張って行ってきた挑戦のプロセスや結果です! 総合型地域スポーツクラブをはじめ、地域スポーツクラブの運営や指導をしているかた、これからクラブを設立しようとしているかた、特に、スポーツをより多くの人に楽しんでもらいたいと思っているかたにぜひお読みいただきたいです!

総合型地域スポーツクラブのマネジメントをしている著者が、東京から長野県喬木村(人口6000人)へ移住して悪戦苦闘した軌跡や、総合型地域スポ…

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