いま、新規事業担当者は「メタバース」にどう向き合えば扱えば良いのか?
メタバースは下火に…?
ここ最近、メタバースに対する悲観的なニュースや、各社とも投資や事業を手仕舞いする話が増えているように感じます。
一方、Meta社(Facebook)は気を吐いていますね。
古くは「ユビキタス」や、最近では「ブロックチェーン」等もそうですが、新しい技術に対する期待値には、流行り廃りがつきものです。
「メタバース」の下火化それ自体は、ハイプサイクルとして語られている通り、なるようになったな、という感想ではあります。
一方で、メタバースの可能性は何ら否定されたものではなく、大きなビジネスチャンスとなることは確かです。
ChatGPT(AI)など、新たな技術・テクノロジーも日進月歩で出現する中で、「メタバース」にはどう取り組めばいいのでしょうか。
「メタバース」に取り組むと直面する課題感
私は、市場の期待値が膨らみ、そして萎えつつあるこの1~2年で、複数のクライアントと、メタバースのリサーチや、メタバースを絡めた新規事業の企画を支援させていただきました。
検討・実行にあたり、各社がぶつかる課題感は多岐に渡ります。いささか乱暴にまとめると以下の二つに集約されました。
① ユーザーが活性化しづらい
メタバースは、そのビジネスチャンスや将来の市場規模の大きさから、企業から大きな注目を集め、各社が様々な取り組みを行いました。
その一方で、ユーザー目線では、まだまだメタバースと呼ばれる空間での体験であまり優れたものはなく、正直「微妙」と言わざるを得ないものがほとんどでした。それゆえ、リピーターは殆どおらず、単発単発のイベントでの来訪に留まるケースが多かったです。
国内事例で言えば、cluster 上で行われたバーチャル渋谷のハロウィンフェスなどは、象徴的な事例かもしれません。これまで延べ100万人以上の参加者がいるそうですが、4/7現在で、clusterアプリのトップに表示される空間には十数名のみがアクセスしている、という状況です。
(KDDIはその状況を打破するため、新サービス「αU metaverse」をリリースしました。)
その中で、一部のサービスでは盛り上がりを見せるものもあります。そのパターンは大別すると以下です。
ゲームは言わずもがなですね。「メタバース」として捉えられる以前から、仮想空間における対戦やRPG、生活(あつ森 等)を行うゲームは人気を博していました。
パターン1:仮想通貨・NFTでインセンティブ強化
メタバース空間に、そこでしか使えない仮想通貨やアイテム(NFT)を組み合わせ、来訪意欲を高めることに成功したサービスが幾つかありました。代表的なものはSANDBOXでしょう。
私もゲームをプレイしましたが、ゲームそのものの体験は、clusterなどの日本で提供される他メタバース空間と大差なく、あまり面白味を感じられるものではなかったのが個人的な感想です。
その割には、SANDBOXでは仮想空間上の土地が数百万円で取引される等、その熱量は一時的にとても高くなりました。
但し、ゲーム性やコミュニケーション自体が優れたものではないためか、相場は急落しています。新技術に興奮した投資家が駆けつけてバブルを作り出した、と言えそうです。
パターン2:コミュニケーション特化
広い空間を自由に行き来できる、という、一見メタバースでこそできる体験を放棄して、ユーザー同士のコミュニケーションに特化したアプリケーションが、一定の盛り上がりを見せています。
アバターを用いたライブ配信アプリ「REALITY」での配信も経験してみましたが、なるほど、アバターを用いて配信の恥ずかしさがなくなり、配信自体の醍醐味(リスナーの反応など)は感じられ、とても面白い体験でした。
将来的には、自身の分身がバーチャル世界で生活する「マトリックス」のような世界がメタバースの一つの将来像と考えていますが、REALITYはその世界に近づいていることを感じさせました。現在の技術で、ユーザー体験が面白いと感じられる内容まで必要な要素が磨き込まれた・絞り込まれたサービスともいえそうです。
(注)上記では、メタバースの定義を広く捉え、C向けサービスについて論じました。産業用などB2B向けサービスでは、その限りではありません。
一部サービスでは盛り上がりを見せるメタバースも、ユーザーの習熟度、サービスの洗練度共に足りず、なかなか人が集まらず、定着化しないというのが現状です。
テクノロジーの活用自体が目的になってしまうのは本末転倒でしょう。それが自社のエンドユーザーにとっての価値向上につながるか。この視点を常に意識することが、メタバースを自社の発展に結びつけるカギとなりそうです。
そこを乗り越える技術の活用や、サービスコンセプトの設計と実現が重要ということですが、それを阻むのが2点目の課題です。
② 盛り上げるためのカネ・ヒトなどのリソースが調達できない
良いアイデアが浮かんでも、実現にかかるコストが大きくかかってしまうのが、いまのメタバースでしょう。
メタバース空間のプラットフォーム構築に関わるビジネスは、日本を含む世界の大企業がしのぎを削っている領域であるため、リソース面から太刀打ちできるのは一部の企業に限定されると思われます。
日本では、通信会社を中心に数十億~数百億規模の投資が続いています。
リソースの問題はカネだけではありません。会社として多額の投資ができない企業において、この領域で新規事業を構築する際にアサインされる人材リソースも、不足しがちです。
各社がサービスとして成功・マネタイズに苦慮するなか、本来は新技術を用いて事業を拡大、或いは既存事業を壊すほどのインパクトを構想し、リードする人材が必要ですが、そのような人材をアサインする決断は下しにくい、というのが現状でしょう(あるいは、そのような人材を育成することも各企業の課題の一つかもしれません)。
また、どこかのプラットフォーム上でサービスを展開するとしても、そのための優れた体験を構築するエンジニアは売り手市場が続いており、採用も困難な状況が続きます。
いま、どう向き合うべきなのか
では、各社の新規事業者は、上記状況も踏まえて、どのようにメタバースに向き合っておくことがベターでしょうか。
① アンテナは張っておく
これまた新技術により、自分で英語圏の情報も取りやすくなりました。以下のようなアクションを取り、常に最新情報が収集される状態を作っておくことが重要です。
一番簡単でおススメな方法は、Twitterで識者をフォローしておくことでしょうか。その他、日米の専門誌や、Youtubeでメタバースの実況や分析をしている英語圏の動画を閲覧するのも良い方法です(ChatGPT&DeepLの組み合わせで、あっという間にサマリを作ってくれます。)。
② 実際に遊ぶ
メタバースが自社事業・サービスに活用できる品質となるか、或いは活用の仕方のアイディエーションを良いものにするためには、自身でそのサービスを一通り触ってみることが効果的です。
上記では、私も「REALITYでの配信を行った」と述べました。自身より10歳以上も若いユーザーが中心のプラットフォームを使うことには気恥ずかしさもありますが、百聞は一見に如かず、です。
直近では、以下のようなサービスが流行っているとのこと。
ぜひ触ってみてください。
③ プラットフォームに乗る
企業として何かしらのアクションが求められる場合には、スモールサクセスの一方向性として、既存のプラットフォームを活用することが良いのではないでしょうか。
ただし、既存事業や既存顧客の特色により、適切なプラットフォームやサービス内容は異なります。このあたりの事前討議はしっかりと行っておくべきでしょう。
冒頭で挙げたMetaのCEO、ザッカーバーグはこう言っています。
メタバースも、もう2~3年したら見える景色がまた変わってくるかもしれません。その時乗り遅れることがないよう、組織・個人としての経験値を貯めていくことが重要かもしれません。
弊社は、新規事業立案に向けたリサーチ、計画づくりを中心とした所謂コンサルティングのみに留まらず、最新動向を踏まえた、少し未来を見据えたアイディエーションも行います。
まずは気軽な壁打ちからでも構いません。気になる方は是非お問い合わせください。
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