心理学×サッカー
こんにちは。
戸次健太です。@kenta_bcn
今回はサッカーと心理学(モチベーション)の関係性について書きたいと思います。
はじめに
バルセロナのコーチングスクールでは一般共通科目と専門科目に分かれています。
一般共通科目とはサッカー指導者のみではなく、フットサル、ハンドボール、バスケットボールといったような様々なスポーツを学んだり、指導を勉強する人達全てが学ぶ科目のことです。
例えば、解剖学や栄養学、スポーツの成り立ち等を学びます。その中の1つに『心理学』の科目がありスポーツ心理、年齢ごとの心理的変化、リーダーシップ、モチベーション等の項目があります。
今回はコーチングスクールで習った内容や貰った資料、先生の話などを元にnoteを書いていこうと思います。
モチベーションとは?
モチベーションと私達はよく言いますが、そもそもモチベーションとは何なのか?そこが理解出来ていないとそれから先の話をするのは難しいでしょう、ネットで検索してみると多くの方が様々な定義づけをしていますがここではコーチングスクールでの資料を日本語訳したものと、私が1番しっくりきたモチベーションの定義を書きたいと思います。
モチベーション=動機付け である。動機付けとは行動を始発させ目標に向かって維持・調整する過程・機能。 動機づけは人間を含めた動物の行動の原因であら、動物が行動を起こしている場合、その動物には何らかの動機づけが作用していることが考えられる。またその動物の行動の程度が高いかどうかによってその動機づけの強さの違いが考えられる。 ※Wikipedia参照
モチベーションとはあらゆる種類の活動を実行するように導く衝動
モチベーションの決定には『成功』と『失敗』が大きく関与している
モチベーションの決定や感じ方は個人差が大きい
モチベーションとは行動を『始発』させるもの。
つまり私たちが何か行動する時は大小はあるにしろ必ずモチベーションが生まれているということなのです。
今回はサッカーに関してのモチベーションなのでサッカーの話もしますがチーム作りの上で1番土台に来るのがモチベーションなのです。
メッシを獲得しても、どんだけお金があっても、すんごい戦術を駆使してもモチベーションがなければ何も成し得る事は出来ません。
数値化出来るものでは無いので何が最高点なのかは分かりませんが、少なくともチームに関わる全ての人のモチベーションを高め同じ方向を向けてそれぞれの仕事に100%で向き合わせる事が監督としての大切なチームマネジメントの第1歩になります。
モチベーションの2つの種類
皆さんはモチベーションには2つの種類があることをご存知でしょうか?
スペインのコーチングスクールでも、日本の様々な資料にも同じような内容が書いてあるので心理学の世界では一般的に知られている内容だと思います。
まず1つは内発的動機付けです。
内発的動機付けとは物事に関する興味や関心、探究心など人間の内面的な要因によって生まれ、そこから生まれるやりがいや達成感など自分自身の内側からなる動機付けです。
サッカーに興味がありサッカーが好きだらかサッカーをプレーする‼️ というのは内発的動機付けからくるモチベーションですね。
そしてもう1つが外発的動機付けです。
外発的動機付けとはお金や名声、評価などといった外的要因から生まれる動機付けです。
練習はやりたくないけど、好きな女の子にカッコイイ所見せる為に必死にプレーする‼️ というのは外発的動機付けから来るモチベーションですね。
では、内発的動機付けと外発的動機付けのどちらが大切なんでしょうか?
答えは両方大切で両方にメリットがあると私は考えます。
ただ、その両方を上手く使い分ける必要があるとも考えています。
簡単な言葉でまとめると『自主的にやる』か『外的要因によってやらされるか』です。
内発的動機付け=継続的なモチベーション
外発的動機付け=瞬間的なモチベーション
例えば、選手のフィジカルを強化したい時に『筋トレしろ!!』『走り込め!!』と喝を入れて外的要因から刺激してモチベーションを上げトレーニングしたとしてもそれは選手の意思ではなく外発的動機付け来るモチベーションなので瞬発的なモチベーションにしか過ぎず、フィジカル改善やスタミナを付けるなど時間を要して行う行動に対しては適当とは言えないでしょう。
シーズンを通してのモチベーション、選手のサッカー人生に対してのモチベーションなど一貫性のある行動に対して刺激したい時は内発的動機付けから来るモチベーションが大切になります。
選手それぞれ性格も人生も環境も違うのでここで答えを書くことは不可能ですが、しっかりと選手を観察し知ることそして寄り添ってアプローチすることが大切です。
逆に、練習でもう少しインシティを高めたい時、試合中の失点直後やここ大1番の時に瞬発的にモチベーションを高めたい時は外発的動機付けから来るモチベーションが有効的だと考えます。
ちょっとした賞品を賭けてトレーニングをする、家族や彼女からのメッセージビデオを見せて試合に挑む、その他外的から来る要因で選手を刺激してモチベーションを高めるのです。
マズローの5段階欲求説
先程も言ったように、この世に同じ人間など存在しません。
先頭に立つものは、チームや組織全ての人間を洞察・観察し知ることが大切です。
そして、内発的動機付けによって来るモチベーションを刺激したい場合はその人が今どの段階にいるのかを知りアプローチ方法を変える必要があります。
その評価の1つの基準となるのがマズローの5段階欲求説です。
マズローの法則によれば、人間の欲求には「生理的欲求」「安全の欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現の欲求」の5段階があります。そして、これら5つの欲求にはピラミッド状の序列があり、下から順にの欲求が満たされるごとに、もう1つ上の欲求をもつようになると言われています。
生理的欲求とは生命活動の維持に最低限必要な欲求です。
『睡眠欲』『食欲』『排泄欲』などなどが上げられます。このレベルに留まることはほとんど無いと言ってもいいでしょう。
次に来るのが安全欲求です。
安全の欲求とは、身体的に安全で、かつ経済的にも安定した環境で暮らしたいという欲求を指します。
世界的に見ればこの段階にいる人はたくさん居ると思いますがサッカーでの話にフォーカスした際にこの段階の選手を指導するケースは稀だと思います。
その次に来るのが、社会的欲求です。
社会的欲求とは、家族や組織など、何らかの社会集団に所属して安心感を得たいという欲求を指します。
この段階にいる選手を指導するケースは十分に考えられます。
サッカーチームという組織には名前上所属していますがコミュニケーションを取ることが苦手だったり、何かしらの要因でチームメイトの和に入れなかったりとする選手は居ると思います。
そういった選手を知り、寄り添いその選手の内側から生まれるモチベーションを刺激して自主性を生み出す事も大切になります。
次に来るのが、承認欲求です。
この段階に居る選手は多くいるでしょう。
特に育成年代の選手はこの部分に居る選手かほとんどだと思います。
承認欲求とは所属する集団の中で高く評価されたい、自分の能力を認められたい、という欲求です。
SNSに自分の写真や動画を投稿しイイネをもらいたい!という欲はここに当てはまります。
私のチームにも自分の得点シーンをTwitterやInstagramに上げる選手は沢山います。
イイネの数や、賞賛を得ることで次の行動のモチベーションになり、もっと褒められたい、もっと有名になりたい等の欲が出てきます。
この欲もどこまで認められたいのか、褒められたいのかは個人差がありますが、この欲が満たされると次に出てくる欲が、自己実現欲求です。
これは安全も、名声も、金も、賞賛も得た選手がワールドカップに出たい、バロンドールを獲得したいというような『夢』と『現実』のギャップに生まれる欲です。
少し長くなりましたが何が言いたいかと言うと選手のモチベーションを刺激するにはその人を知る事が何よりも大切だということです。
VIPとは?
スペインのコーチングスクールではモチベーションを刺激する為に3つのことが大切になると学びました。
VARIAR-変化を付ける
IMPLICAR-帰属意識・巻き込む
PREMIAR-賞賛する
これらの頭文字を取ってVIPとなります。
まずはVARIAR (変化を付ける)
勉強や仕事も同じと思いますが、何の変化もなく同じことの繰り返しではモチベーションは上がりませんし楽しくないですよね。
トレーニングやミーティング内容も含め変化を付けることで選手に新たな刺激を与えます。
IMPLICAR (含める)
サッカーで言うならばベンチの選手のマネジメントやスタッフのマネジメントが例として上げれますね。
選手自身がチームから必要とされている事を感じることがモチベーションを保つ1つの要因になります。
コーチングスクールの先生が実際に行ったマネジメントの例としてこんな話がありました、後半ロスタイム1-0でリードしている場面にFWの選手を投入したそうです、その選手はレギュラーでは無くその投入も『時間稼ぎ』の意味合いもある交代でした。そしてチームは残りのロスタイムをみんなで耐え凌ぎ何とか勝利‼️
そして、その監督が1番に駆けつけ抱き締め賞賛したのはゴールを決めた選手でも、1点を守りきった守護神でも、誰よりも走った中盤の選手でもなく時間稼ぎで投入した彼だったのです。
なぜか?
そうです彼に『君はチームにとって必要な存在』だと感じて欲しかったからです。
抱き締め彼には『お前の前線からのプレッシャーが無かったらやられてた、ありがとう』と伝えたそうです。
PREMIAR (賞賛する)
ただ褒めるだけでなく、改善点も伝えながら自信を与えるコミュニケーションが求められます。
また自尊心の強化も必要になります。
自分はオンリーワンである、自分ならやれると選手の内側から出てくる自信を与える事が大切です。
日本の指導現場で選手を罵倒しいかにも自分が王様のような立ち居振る舞いをしている指導者を見たことがあります。
独裁者になっても周りのモチベーションが上がるはずほありません、特に育成年代の指導をしている方であれば選手の悪いとこ見つけをするのではなく、良いとこ見つけが出来る指導者になって欲しいと思います。
指導者や両親からの『すごいね』『いいよ』は何よりも嬉しいものです。
まとめ
全ての出発点となる『モチベーション』をマネジメントする事はチームが良い方向に行くかどうかを決める最初の要因になります。
今回ご紹介したようにモチベーションには、内発的動機付けと外発的動機付けが存在します。
スペインでもMotivador (モチベーター)と呼ばれるシメオネ監督、逆にあまり感情をメディアの前では表さない監督もいますが間違いなく言えることは、その両者とも2つのモチベーションを上手く使い分けているということです。
ただ叱咤激励する訳でもなく、ただそっと寄り添うだけでもなく。。そのバランスですね。
ただ怒鳴るだけではアトレティコの選手があんなに団結する訳もありませんし、慕われないでしょう。
チームマネジメントとはピッチ外での振る舞い、人対人のコミュニケーションで築き上げていくものです。
サッカーは『人』がプレーします。ロボットではありません。
心·技·体という言葉が日本にもあるように心のマネジメントはこれからサッカー界でも重要視されていくことは間違いありません。
まだまだ勉強段階で今回は浅い情報しかお届け出来ませんでしたが少しでもお役に立てたら幸いです。
それでは今回はこのへんでっ!!
また次回もよろしくお願いします。