柘榴 2
突如響く、破裂音。
噴き出した紅。今まで嗅いだことのないような匂い。目を横に移す。彼女が隣で倒れていく。どうしたの?そう声をかける。でも、頭の隅ではわかっている。しかし、それを感情が否定する。理性と感情が僕の頭を埋め尽くす。
もう、わかっているんだろ?
違う、彼女じゃない…。
いや、彼女だ…認めろよ……。
嫌だ!認めたくない!
仕方ないな…。そこで見てろよ。彼女が今、この世から消えたという事実を認められないまま……。起きたら、終わってるだろうよ。
思考が反転した。世界が紅に染まった。
俺は徐に木に近づき触れる。木の脈動が手のひらに伝わる。
「根を広げて…。」
一言、告げる。
広がった根が地上の様子を克明に伝える。声が根を、幹を通し、俺に届く。
「どうだ…?」
「思ったより動揺は見られない…。」
「外れたのか?」
「いや、コレは、あの少年をマークしている。彼が適合者だ。」
「では…」
「あぁ、やはり、あの程度の餌では覚醒しないのだろうな…。」
あの程度?餌?彼女を、今、そう、言ったのか?
そうか、お前らか…。お前らがやったんだな……。
「跳ね上げろ!!!」
俺の合図に柘榴の根が地面を突き破りゴミを襲う。
「な、なんだコレは!?」
「木の根!?」
滑稽だ…。
「せめて、死ぬ前に悔いろ…。」
隠れていたのか思ったより近くにいたゴミどものもとに、駆ける。手には柘榴の実が一つ。
「まさか!能力はすでに…?」
言い訳なんて聞く気はない。
「死ね」
上に放り投げられた柘榴の実は、突如として弾ける。中に詰まった紅い散弾がゴミを打ち抜く。
勝負にすらならない、蹂躙だった。
目を開けた僕は、状況を確認する。そして、思い出す。彼女がいないことを…。僕の中に芽生えた、もう一人の僕を…。
「ははっ…。あっははははは……。もう、なんなんだよ…。」
幼い心で理解するには一度にいろいろなことが起こりすぎた。キャパシティーを超えた心は頬を伝い流れ落ち、乾いた音を喉からこぼれさせた。
「帰ろう…。」
分からないけど、伝えるんだ。そうすれば、母さんが、父さんが、何とかしてくれる。そうだ、そうしよう。
少年は帰途に着いた。さらに残酷な、事実を聞くとも思わず。