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脱毛クリニックの闇を語る① 「熱破壊式 vs. 蓄熱式」論争の真実とは?


近年、脱毛業界では競争が激化し、大手クリニックでも経営が厳しくなるケースが増えています。

競合の増加、脱毛価格の低下など理由はいろいろありますが、その一因として過剰なマーケティング費用も挙げられます。
新規患者獲得のため、マーケティングに寄りすぎた自由診療の世界で、一部のクリニックでは、マーケティングの影響で情報が偏ることがあります。
それは「本当に正しい情報なのか?」と疑問を抱くことも少なくありません。

特に、脱毛を考えている人が最初に悩むポイントが、**「熱破壊式と蓄熱式、どちらが良いのか?」**という問題です。

ネットを見れば、

「熱破壊式は圧倒的に効果が高い!」
「蓄熱式なら痛みゼロで安全!」

といった主張が入り乱れ、どれを信じればいいのかわからない状態になっています。

しかし、実際の医療データを見ても、どちらの方式も脱毛効果には大きな差がないことがわかっています(※1,2)。

それなのに、「蓄熱式は毛が抜けない」「熱破壊式は痛すぎて無理」といった極端な意見が蔓延しているのは、一部のクリニックが自院の優位性を出すために医学的根拠を軽視したマーケティング施策をおこなうことが一因であることは間違いありません。

本記事では、熱破壊式と蓄熱式の違いを整理しつつ、脱毛業界の広告戦略の問題点について掘り下げていきます。


1. 「熱破壊式 vs. 蓄熱式」 本当の違いとは?

まず、医療レーザー脱毛には、大きく分けて**「熱破壊式」と「蓄熱式」**の2つの方式があります。それぞれの特徴を整理すると、以下のようになります。

脱毛方式の比較

結論:どちらも適切に使用すれば、最終的な脱毛効果に大きな差はない(※1,2)。


2. なぜ「熱破壊式 vs. 蓄熱式」の論争が起こるのか?

本来なら、「毛質や肌質、痛みへの耐性に合わせて最適な方式を選べばOK」という話なのに、なぜこのような論争が生まれるのでしょうか?

その理由は、クリニックのマーケティング戦略にあります。

多くのクリニックは、特定のレーザー機器を導入しているため、自分たちの機器をより魅力的に見せるために、一方を持ち上げ、もう一方をけなすという手法を取ることがあります。

特定のレーザー機器に絞ることで、スタッフのトレーニングが楽になる、複数台購入による納入価格の低下やメンテンナンスコストの低下など、運営上のメリットがあるのは事実ですが、それはあくまでクリニック側の都合であり、事実を捻じ曲げる理由にはなりません。

例えば、以下のような主張がよく見られます。

熱破壊式をメインにしているクリニックの主張

  • 「蓄熱式では効果が出るまでに時間がかかるため、結局は回数が増える」

  • 「濃い毛に効果が弱く、しっかり抜けない」

蓄熱式をメインにしているクリニックの主張

  • 「熱破壊式は痛みが強すぎて続けられない」

  • 「肌へのダメージが大きく、リスクが高い」

このように、どちらの方式にもメリット・デメリットがあるにもかかわらず、誇張した宣伝がなされていることがあります。

さらに、脱毛機器メーカーも自社製品を売るために「この方式が最も優れている!」というマーケティングを行うため、混乱が生じてしまいます。

現実はと言えば、蓄熱式でも熱破壊式でもしっかり毛は抜けます。
そして、痛みについては蓄熱式のジワーっとした痛み(熱さ)より熱破壊式の一瞬の痛みのほうがマシと感じる患者さんもいます。
蓄熱式で冷却装置の併用をおこなえば、毛が薄い部分ならだいぶ痛みは抑えられますが、熱破壊式でも冷却装置の性能向上などにより痛みを感じにくくなっています。
全身麻酔での脱毛を選択しない限り、どちらの方式でも痛みはゼロにはならないですし、痛みをコントロールするのは最終的には麻酔の問題になってきます。

結局、一長一短でどっちが向いているかはケースバイケースであり、どちらかに圧倒的な優位性はないことを知っていただきたいです。


3. 質の高い脱毛を受けるには「両方の方式に対応しているクリニック」を選ぶべき

「熱破壊式 vs. 蓄熱式」の論争に惑わされず、本当に質の高い脱毛を受けたいなら、両方の方式に対応しているクリニックを選ぶのがベストです。

✅ 両方の方式に対応しているメリット

  • 毛質や肌質に応じて最適な方式を選べる

  • 痛みに敏感な人でも調整しやすい
    (毛が濃い初期は蓄熱式で減毛して、仕上げに熱破壊式を使用するなど)

  • 最新の機器を導入しているクリニックが多い

どちらか一方の方式しか扱っていないクリニックでは、患者の肌質や毛質に合っていなくても「この方式が一番だから!」と押しつけられる可能性があります。

また、別の記事でも書くつもりですが、蓄熱式、熱破壊式の両方を導入しているクリニックは結果として最低2種類、もしくは3種類のレーザーをすべて使用できるケースが多くなります。
一定の割合で生じる合併症である増毛化・硬毛化対策を考えると、Yag、アレキサンドライト、ダイオードの3種類のレーザーを全て使用できるというのは脱毛クリニック選びにおいてはマストです。

したがって、本当に患者目線で脱毛を考えるなら、両方のレーザー機器を備え、適切な提案をしてくれるクリニックを選ぶのが最も合理的な選択と言えるでしょう。
さらに針脱毛まで対応していれば理想的といえます。


まとめ:マーケティングに惑わされず、本当に良いクリニックを選ぼう

美容・脱毛クリニックの世界では、マーケティングのために事実が歪められることが少なくありません。

マーケティング戦略によって、必要以上に対立構造が生まれているが、「熱破壊式 vs. 蓄熱式」の論争に一方的な勝者は存在しません。
どちらも正しく使えば十分な効果が得られることが医学的にも示されています(※1,2)。

失敗しない脱毛クリニック選びのポイントは以下の3つです。

熱破壊・蓄熱、どちらの方式にも対応しているか
自分の毛質・肌質に合った施術を提案してくれるか
一方を過剰に批判するようなクリニックではないか

広告のキャッチコピーに惑わされず、本当に信頼できるクリニックを選びましょう!


出典

(※1)Braun, M. (2011). "Comparison of high-fluence, single-pass diode laser to low-fluence, multiple-pass diode laser for laser hair reduction with 18 months of follow up." Journal of Drugs in Dermatology, 10(1), 62-65.
(※2)Koo, B., et al. (2014). "A comparison of two 810 diode lasers for hair removal: low fluence, multiple pass versus a high fluence, single pass technique." Lasers in Surgery and Medicine, 46(4), 270-274.
(※1,2)の研究では、低フルエンスの蓄熱式と高フルエンスの熱破壊式の最終的な脱毛効果に大きな差がないことが示されている

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