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DAOの社会実装手順を考えてみた

どうも、最近DAOに熱心な男、田村です。
株式会社アンドゲートというIT推進の会社の代表をやっています。

「DAO」自体は数年前から知っていたものの、なかなか自分事にならず時が過ぎてしまいました。
最近は「DAOでコミュニティを作ろう!」と意気込んでいるので、今のうちに思考を深めています。
今回はDAOの考え方と考察の過程、具体的な検討ポイントをお伝えしていきます。

DAOとは何か?

Decentralized = 非中央的
Autonomous = 自立
Organization = 組織
の頭文字を取ったもので、日本語では「分散型自立組織」と言われています。
読み方は「ダオ」です。

背景にはWebの技術があり、下記のような特徴があります。
Web1.0: 情報の流れが発信者から受信者へ一方通行
Web2.0: 情報の流れが双方向
Web3.0: 情報の所在が分散

noteはWeb1.0、SNSはWeb2.0ですが、情報自体を(GAFAMなどの)企業が保持していることからセキュリティ上のリスクがあると言われています。
情報を特定の企業に集約せず、ブロックチェーンなどのWeb3.0技術によって分散することによって、中央集権的な仕組みから脱することができます。
このWeb3.0の技術を組織に応用してできた、非中央的で・自立した・組織のことをDAOと呼びます。

株式会社は管理者(経営者)が意思決定を行いますが、DAOは特定の管理者がおらず、参加者の投票によって意思決定が行われます。
投票によって意思決定が行われるため、従来の組織よりも「透明性」が高く、また、様々な議論が行われることにより「民主的」であると言えます。
デメリットは、意思決定に時間がかかることです。

Web3.0技術がないとDAOは作れないのか?

と、ここまでDAOについて説明してきましたが、私はずっと疑問に思っていることがあります。
それは「目的と手段が入れ替わっていないか?」です。

目的は「透明性」が高く「民主的」な組織を作ること。
そのための手段として「Web3.0技術」がある。
という順番であるはずが、どのDAOの説明を見てもWeb3.0技術の導入に留まっているように見えます。

もちろん、Web3.0技術を取り入れたほうが、スマートコントラクトな仕組みを取り入れることができるので望ましいと思います。
しかし、実際の人と人の活動は…オフラインじゃないですか…。

そして、DAOに必要とされるMetamask・Aragon・Discordを用意しようにも
一般の人はMetamaskの時点で挫折しますよね!?!?!?
IDの概念からガラッと変わるんですよ!?!?!?

Web3.0を理解できる人しかDAOに参加できないことに私は疑問を感じています。

DAOの組織運営にも疑問

技術のお話しだけではありません。
組織運営を考えた時、DAOで素晴らしいプロジェクトが完遂できるイメージが沸かないのが正直なところです。

アサイン調整の難易度

DAOでは基本的に、貢献した人がその分のインセンティブ(報酬)を得られる仕組みです。
この仕組みは価値提供における原理原則ではありますが、組織運営の難易度は上がるように思えます。

例えば、誰もやりたくない仕事があった場合、それは誰がやることになるのでしょうか?
管理者がいれば、責任を持って自分でやるか、適任を探すか、時には交渉をしてやってもらうこともあるでしょう。
また、メンバーからしても「インセンティブはいらないから、やらない」といった選択肢が生まれます。
「金もらってるから、しょうがない、やるか」という心情のとき、ありませんか!?

意思決定の質

意思決定の質に関しても、疑問があります。

私は「みんなで考えたアイデア」ほど、つまらないものはないと考えています。
みんなで考えたら、角が削れて、形もよくわからない、味がしなくなったガムのようなアイデアにしかなりません。
魂が込められていない、誰でも考えられるようなアイデアになります。
一定のガバナンス(統治・牽制)を持ちつつも、アイデアはたった一人の狂った人から生まれ、それをチームで育てていく方がイノベーティブです。

DAOを社会実装するためには

上記のような疑問を持ちつつも、一縷の望みを持ってしまうのがDAOの魅力。
社会実装するために現実との折衷案を考えていきましょう。

DAOの立ち上げ

これは既にDAO界隈で提唱されていることですが、DAOの立ち上げは誰かの意思決定から始まります。
形成はトップダウンで行われ、ミッション・ビジョン等のコンセプトが策定され、そのコンセプトに共感するメンバーが集まりコミュニティを形成します。
この時点では従来の組織とDAOの違いはありません。
(株式会社ではコンセプトに共感していなくても参画できますが、共感していないと結局長続きしませんしね)

3つのDAO

小澤隆博氏は3つのDAOを提唱しています。

Autonomous DAO: 自律的DAO
Autonomousは「自律的」という意味であり、上記で説明してきた本来のDAOのことを指します。
DAOの最終形態としてAutonomous DAOを目指して運営していきます。

Bureaucratic DAO: 官僚主義的DAO
Bureaucraticは「官僚的」という意味です。
官僚的ポジションの複数名を選任して意思決定者を行い、DAO的に運営していきます。
一定のガバナンスがあるため、少しは民主的です。

CEO DAO: 最高責任者存在型DAO
CEOは「最高経営責任者」という意味です。
社長のポジションである1人が旗振り役となり、DAO的に運営していきます。
もはや株式会社では?と思いますが、DAOです。

DAOの立ち上げ段階では官僚主義的DAOやCEO DAOのような意思決定を行う人が存在します。
徐々にメンバーの主体性を引き出し、本来のDAOであるAutonomous DAOに移行していきます。

ステアリングコミッティの設置

ここからは私の意見です。

DAOもコミュニティの1つ、人と人が集まる場なので、どうしてもトラブルが起こることが予想できます。
本来のDAOでは収集がつかなくなるため、上記の官僚主義的DAOに似た構造にした方が良いと考えています。
ステコミはDAO全体の組織運営を維持するための意思決定を行い、メンバーはDAO内で発足されたプロジェクトに参画する形です。

ステコミの人もプロジェクトに参画できますが、その時はあくまでもメンバーの1人としての権利を持ちます。
メンバーは複数のプロジェクトに参画する事ができ、貢献に応じたインセンティブが分配されます。

報酬の設定

本来のDAOでは独自トークンやNFTが報酬となりますが、一般の人にとっては何も嬉しくありません。
やはり、日本円が報酬でしょうか。

日本円とした場合、元となる資金が必要です。
プロジェクトの収益に応じて分配されるとしても、後述するインセンティブ設計がキモになりそうです。
経験上、大抵の場合、レベニューシェアはうまくいきません。

ボランティアです!と言い切ったほうが潔い気もします。

報酬が何なのか?は重要な検討材料なので、予め決めておいた方が良さそうです。

インセンティブ設計

株式会社のSO(ストックオプション)にも似ていますが、難しいんですよね。

プロジェクトを企画した人が、貢献したのか?
企画の99%は失敗するので、企画しただけでは貢献と言えませんが、その人がいなければプロジェクトが始まらなかったのも、また事実です。

成長させた人が、貢献したのか?
著しく成長させたとしても、最後まで見てみないことには成長度合いがわかりません。
その後、更に成長させる人が現れるかも知れません。

最後まで完遂した人が、貢献したのか?
プロジェクトの中間で抜けた人はどのように評価すべきでしょうか?
たまたま最後の方にいた、何もしていないけど最後までいた恐れもあります。

SOの場合は「おまけ程度」ということで説明責任が果たせても、DAOの場合はより深刻です。

プロジェクトを短く切って、そのフェーズ内で貢献度を割り振る。
後から貢献度の価値が変動しても文句を言わない。
もしくは、決議によって調整を行う。
(後から変えるほうが公平性が失われる気がしますが)
などの決め事が必要そうです。

プロジェクト終結の条件

プロジェクトが上手くいっている間は良いですが、問題は回っていない時です。
管理者がいない場合はプロジェクトの停滞、もっと言えば自然消滅することが想像できます。
予めプロジェクトが終わる条件を決めておくと良いでしょう。

例えば下記です。

  • 活動が3ヶ月間行われなかった場合

  • アクティブなメンバーが3人未満になった場合

  • 予算がなくなった場合

プロジェクトは立ち上げるよりも終わらせるほうが大変ですから、終わることを考えて設計すると円滑な運営ができそうです。

本当はWeb3.0で実装したい

DAOをコミュニティ運営の側面から述べて来ましたが、やはりDAOはWeb3.0技術があってこそ真価を発揮するものだと考えています。
しかし、技術的な参入障壁が高く、一般の人が扱うには難しい代物です。

DAOの概念が社会実装された後の未来、もしくは同時進行的にWeb3.0技術が正しく実装されると、本当の「分散型自立組織」が実現できると考えています。

「よりユーザーフレンドリーなインターフェースでDAOを実現できませんかね?」とMr.DAOに話したところ「作りましょう!」と心強い言葉を頂きましたw
こちらも、別プロジェクトで進めていくかも?という匂わせをしておきます。

まだまだ検討の余地が多いDAOの世界ですが、社会実装に向けて頑張っていきたいと思います。

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