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4月8日、田んぼに落ちた鬼ころしのパック酒
4月になり、日が落ちるのも少し遅くなってきた。仕事が早く終わった日には、なるべく歩いて近所のスーパーへ買い物に行くようにしている。往復2キロもない距離だから、大した運動にならないかもしれないが、今日はnoteに何を書こうとか、今日はどんな1日だったか、なんて振り返りながら、帰り道にはレモンサワー片手にぶらぶらしながら、田んぼ道を歩いて、日が沈んでいくのをなんとなく眺める日々が、心を落ち着かせる…
なんて書いているが、どうにも、心をざわつかせる出来事が起きている。
毎年毎年この時期に、同じ田んぼの同じところに鬼ころしのパック酒のゴミが落ちている。
これに気付いたのは去年だったか。ふと目にした鬼ころしに、「パック酒!鬼ころし!ストローで飲むやつ!しかもポイ捨て!鬼畜の所業!」なんてことを思っていたのだが、よくよく考えると、うん?そういえば春先から夏にかけて、あそこであの鬼ころし、よく見るな…?と思うようになったのだ。
時は過ぎ、寒い冬を越え、春が来る。
今日も僕は、歩いて買い物へと向かう。もはやスーパーで買うものなど、なんだって良い。
僕は、今日も田んぼに鬼ころしが落ちているかだけを知りたい。
焦る気持ちを抑えながらも早足で歩く。つい最近、親父と少し歩く機会があった。親父、こんなに歩くの遅かったかな?歳を取ったもんな…
息子、鬼ころしのパック酒のゴミ見たさに加速にブーストかかってます。
期待に応えるように、今日も発見。今日は1パック。
記念に写真を撮ろうと、どこの誰が飲んだか分からない鬼ころしのパッケージを正面に向ける。
胸元のライターをドブに落とす。
これもまた試練…!俺は…俺は…!
鬼ころしをポイ捨てする、ならず者のあなたと友達になりたい…!
声も、顔も、不器用なとこも、全部、全部、嫌いじゃないの。ポイ捨ても良くないの。でも、俺はそんな野暮なことは言いたくないの。
あなたが鬼ころしを飲み干して田んぼに投げ捨てるその瞬間を見届けたいの!
きっと、仲良くなれる気がする。あなたは多分、強がりだから、ビールやチューハイで慣らすことをせず、ストローで鬼ころしを吸いあげて、脳のギアを一気に上げるのよね。
僕は、いきなりは追い付けないから、自分のペースで、あなたに寄り添います。大丈夫。行き着く先は、同じだから。
堕落という名の快楽の沼に。
そんなことを考えながら、僕はちゃんとレモンサワーの空き缶を持ち帰り、きちんと処分する。
その後、100メートル離れた川で、さらに鬼ころしのゴミを2パック発見するのは、少し先の話だ。
いつか出会えるその日まで、待っていてね、ブラザー。