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スキルは金で買う時代である

スキルは価値そのもの

本記事ではスキルとはtechnical skillのことを指しています。

一度自転車に乗れるようになったら、ずっと乗れるのと同様
一度身についたスキルは個人に属し、永続的で、他人に奪われることなく
金や価値を生み出し続けることができるものです。

一方、医療の世界では原則としてスキルはただで与えられることはありません。

金を払って、その対価として受け取るものです。

金を持たない研修医は、過去には、捧げた労働時間と等価交換し
"スキル"を得てきたのです。

しかし、スキルの高度化、習得機会の奪い合い、働き方改革による労働時間制限などなど、我々を取り巻く環境は急速に変化してきています。

本記事では、これからの医師のキャリア形成における
スキル習得の位置付け、今後の見通しについて触れてみたいと思います。


臨床研修黄金時代のお話です

研修医は労働力として時間を差し出す代わりに
その報酬としてスキルを受け取ってきました。

給料は今でこそ月30万円以上が保証されていますが
当時は数万円、なんてこともありました。

生活のために野戦病院で当直バイトするしかありません。
当然そこで事故りますw

それでも研修をする意味とは、他でもないスキルを得ることができたからです。その経験は実地でしか得られず替えが効きません。

つらい下積み時代です。まぁ、古いですねw

しかし時代は移ろい、必ずしもtechnical skillだけが医師に求められる社会的ニーズとは言えなくなりました。分業、専門分化の影響でもあります。

むしろ精神科などで必要とされるnon technical skill、
チーム医療では他職種間でのコミュニケーション能力、マネージメント能力など、その重要性は増す一方です。

対して、technical skillについてもVRなどテクノロジーの発達もあり
一子相伝の秘技、みたいなものもどんどん共有されやすくなっています。

昔、ホリエモンの発言が波紋を呼びましたね。
「寿司職人になるのに何年も下積みをするなんてバカだ、技術だけなら1ヶ月で十分だろう」、と。

technical skillに限れば、至極その通りだと思います。


指導医にとってスキル教育はメリットなし。。

初学者である研修医が不慣れな手技を行うことで
・患者が合併症リスクにさらされる
・指導医が責任を負う
・手技に時間がかかるため、他の通常業務を圧迫する
・手技は奥深く上級医になっても実施したいことも
・指導医にインセンティブはゼロ
・日本は「教育への評価」が重視されない
・挙句の果てに、研修医によっては迷惑そうにする(需給の不一致)

実は指導医にとって、スキル教育はほぼメリットがなく、
「教えない方がラク」なのが現状です。

「できる人を増やした方が楽になるでしょう」という意見も聞こえてきそうですが、気管挿管だとかCVC挿入のような基本手技に関してはその通りです。

しかし手術のような得難いスキルほど独占した方が都合が良いことは明白ですよね。
代えが効かない人材であり続ければ、ポストも名誉も金銭も、仕事の選り好みも思いのままです。
なぜならそれを評価できる人すら育たないですし、外部評価機関についても元来閉鎖的な医療機関内には出入りしづらいですからね。

日本の心臓外科領域でも「40歳で開心術初執刀」なんて話もよく聞きましたw

教えない方がラクだし既得権益も守られる、という訳です。。。


外科手術は小学生でもできます

外科手術にしても技術的には小学生でもできることしかやっていません。

ただ実際は病態生理や臓器連関などを考慮して繰り出すtechnicを選択する必要があり、言語化できない領域も存在するため、一定の経験は必要ではあります。

ただ、やはりtechnicは金で買えます。

技術習得のステップとして別ノートに記しましたが
見る、方法を学ぶ、体験する、ところまではVRなど利用すれば机上で可能です。
外科手術で言えば助手としての経験は十分に積める訳です。

そうすれば”イキナリ術者!”が可能となりますよね。
しかもエキスパートを模倣したイキナリ術者は強いと思います。


VRを利用した成長加速!


たとえば実際、当院はVRを利用して技術習得ステップをショートカットする試みを始めようとしています。

研修医教育、外科系専攻医教育、看護師、CE、介護士まで
各種コンテンツを利用して、成長を加速させる「実証試験」です。

働き方改革で労働時間が絶対的に短縮せざるを得ない時代ですから
technical skillを得るために貴重な時間を費やすのは個人にとっても社会にとっても損失が大きいと言えます。


外科人気の復活!?

外科研修を思い出すと何がつらかったかって
見えない術野をひたすら立位で痒いところをかくこともできず
不用意な発言も許されずトイレも行けない、と身体拘束感が強かったところですよね。

一般的に裁量がない仕事ってつらいです。。

そこ(見学と体験のphase)をすっ飛ばすことができるなら、、
あるいは外科人気が復活する可能性、結構あると思っています。

術野が必ずみんなに見えてビデオを見返せる腹腔鏡の手術なんかでは
すでにそんなようなことが起きていてセンスのいい若手の成長は光の速さです。

専門性の高い技術、希少性のある人材、高い社会的ニーズ、、、

もしかすると働き方改革に代表される医師のキャリア変革に伴って
いわゆるハイパー科のQOLは急上昇し、需給の面でも人気逆転するかもですね。


スキルは金で買うの本意は、、


「スキルは金で買う時代」 が本記事の主題でした。

これ、金で買える、すなわちアクセスが良くなるという意味と同時にその逆の意味も含んでいます。
つまり、金を出さないと手に入らなくなるかもしれない。。

というのは、結局スキル獲得の要というかボトルネックとなるのは実践なので、実践にまで至れるかどうかは別問題になってくるのです。

実践一歩手前まではアクセス改善により多くの人が至れる、しかしそれを実践し、自動化し、言語化し、教育する域に達する道筋は依然として限られるのではないでしょうか。

相手が生身の人間であり、適応症例に限りがある以上当たり前ですよね。

すると実践に足るところまでショートカットしてきて
実践機会を求める医師は増えるのに本番は限られる、
供給過多になるので今以上に競争激化する。

という具合です。


いかがでしょうか。

働き方改革の件とも関係するのですが、
近い将来訪れる現実としてあながち外れていないと思います。

今こそ参入障壁の高いスキルのある診療科に逆張りするのはいかがでしょうか!?

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