リポソーム:ナノキャリアによる腫瘍局所送達システム
投与方法と臨床応用:全身投与でどのようにして毒性副作用を抑えるか?EPR効果への過信は禁物
腫瘍組織に免疫チェックポイント阻害薬を届けるのは大変である。
腫瘍局所投与は投与が煩雑な上、場所によってはアクセス困難なことも多い。静脈内投与であれば簡便に安全に投与が可能というメリットがあるが、薬物は全身に流れるため予期せぬ副作用のリスクを負うこととなる。
リポソームアンカー薬物送達システムは、全身投与においても低毒性でありながら抗腫瘍効果を発揮する方法として報告されている。
https://twitter.com/kensho_2021pham/status/1327234761350410240?s=20
リポソームなどのナノキャリア送達は、素早い腫瘍組織内蓄積がみられるため、マウスのガンモデルに対しては有効であるように思える。ナノキャリアが腫瘍組織に蓄積するのはEPR効果によるものと提唱されているが、その一方で数年という年月をかけて発達していくヒト腫瘍においてEPR効果は有効なのか?と疑問視されている事実もある。高い血管透過性を示さない可能性もある。
抗がん剤を含む化学療法でナノキャリアを用いる場合は、ベネフィットを産みだすために腫瘍組織内のガン細胞に薬物送達しなければならないことに注意が必要である。その一方で、免疫チェックポイント阻害薬をナノキャリアでわずかでも多く腫瘍組織に運ぶことができれば、大きなベネフィット、つまり抗腫瘍効果を発揮しうる。これは免疫システムが相互補完によって増殖と拡充を行うためである。この免疫固有のシグナル増幅機構のおかげで、それほどEPR効果を必要とすることもなく、免疫エンジニアリングによって効率性を高めることができるかもしれない。
しかし、以前として腫瘍組織以外に移行したナノキャリアが全身毒性を招く可能性には警戒する必要があり、マウスに比べてヒトにおいては全身毒性がかなり起こりやすいということを忘れてはならない。